ISO9001キーワード「組織の知識」AI_4 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年8月19日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol. 570 ■□■
*** ISO9001キーワード「組織の知識」AI_4 ***
      AIは考えているのか?
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前回、AIは考えることができる?答えはNOです、と答えましたが、いくつか質問が来ま
したので、もう少し正確に説明したいと思います。現在のAIはコンピュータ上で動いてい
ますから、最も基本的なところでは0と1の電気信号で処理されています。しかし、AIそ
のものは0と1を見分けているだけではありません。大量の数値を使って複雑な計算を繰
り返しています。

■□■ AIは本当に「考えて」いるのでしょうか ■□■
ChatGPTなどのAIと話していると、ときどき不思議な気持ちになります。「この文章につ
いてどう思いますか」と聞けば、良いところと悪いところを分けて答えてくれます。「別の
考え方はありませんか」と聞けば、先ほどとは違う立場から意見を述べます。こちらが間
違いを指摘すると、「確かにその通りです」と答えて、考え直したような文章を返してきま
す。
これを見ていると、「AIは本当に考えているのではないか」と思えてきます。では、AIは
考えているのでしょうか。前回はNOと答えましたが、実は、この質問に単純にYES、
NOで答えるのは正確な答えではありませんでした。なぜなら、そもそも「考えるとは何
か」が簡単には決められないからです。
人間の場合、私たちは問題を解くだけでなく、「どうしようかな」と迷ったり、「これはお
かしい」と感じたり、「昨日の失敗は悔しかった」と思ったりします。そこには記憶、感
情、意識、欲求など、いろいろなものが関係しています。一方、現在のAIが行っているこ
とは、それとはかなり違います。
例えば私たちが、「日本で一番高い山は?」と質問したとします。
AIの内部には、人間が読むような百科事典が置いてあって、そこから「富士山」というペ
ージを探しているわけではありません。

■□■ AIは膨大な計算をしている ■□■
AIは質問として入力された「言葉を数値として扱い」、それまでの学習で身につけた膨大
な関係を使って、「この質問に対して、次にはどのような言葉を続けるのが適切か」を計算
していきます。
その計算を何度も繰り返した結果、「日本で一番高い山は富士山です」という文章が出来
上がります。AI研究開発はものすごいスピードで進んでいます。現在のAIは、一つの質
問に答えるだけではありません。「東京から大阪へ行きたい。費用を抑えたいが、あまり
時間もかけたくない」と相談すると、新幹線、飛行機、夜行バスなどを比較して答えま
す。つまり、単に覚えた文章を繰り返すだけではなく、与えられた条件を整理し、比較
し、ある程度の推論を行うこともできます。
そのため、AI研究では「reasoning」、日本語では「推論」と呼ばれる能力が重要になって
います。

■□■ 推論は考えること? ■□■
では、それを「考えている」と呼んでもよいのでしょうか。ここが難しいところです。
AIは、人間が考えているような結果を出すことができます。一方で、人間と同じような意
識を持ち、「いま私は考えている」と自覚しているわけではありません。つまり例えばAI
が、「それは悲しいですね。お気持ちは分かります」と言ったとしても、人間と同じように
胸が苦しくなっているわけではありません。

ここで、自動車を思い浮かべてみましょう。自動車は人間より速く走れます。しかし、「自
動車には人間より優れた脚がある」とは言いません。人間の脚と自動車のエンジンでは、
移動するという結果は似ていても、仕組みがまったく違うからです。

AIについても同じ見方ができます。人間は考えて答えを出します。AIも、ある種の問題で
は人間以上の答えを出すことがあります。しかし、同じ答えに到達したからといって、そ
こへ至る仕組みまで人間と同じではありません。
ですから、「AIは考えるか」という問いに対して、現在のところ私は、「AIは人間と同じ
ように考えているとは言えない。しかし、私たちがこれまで「考える」と呼んできた仕事
のかなりの部分を、AIが行えるようになってきた」と理解するのが正確であると思います。

■□■ もっと面白い疑問? ■□■  
そう考えると、もう少し違う疑問が出てきます。人間と同じように考えているわけではな
いAIが、なぜ私たちとこれほど自然に話すことができるのでしょうか。次回その疑問を
考えてみたいと思います。

(つづく)