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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol. 571 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「組織の知識」AI_5 ***
なぜ人間と自然に話せる
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私たちがこれまで「考える」と呼んできた仕事のかなりの部分を、AIが行えるようになっ
てきました。最近では「AIエージェント」というような呼び方が業界の中では頻繁に使わ
れています。エージェントとは「代理人」という意味です。AIエージェントとは、人間か
ら与えられた目標を達成するために、必要な作業を計画し、AIが人に代わって実行する仕
組みのことです。つまり、AIが「考える」だけでなく、「行う」こともできるようになっ
てきたということです。前回お話ししたように、人間と同じように考えているわけではな
いAIが、なぜこんなに自然に話すことができるのでしょうか。
■□■ AIは、なぜ人間とこんなに自然に話せる ■□■
AIは、なぜ人間とこんなに自然に話せるのでしょうか。初めてChatGPTを使った人が驚
くことの一つは、会話があまりにも自然なことです。「おはよう」と入力すれば、「おはよ
うございます」と返ってきます。毎日決まりきったような挨拶でもありません。時には
「おはよう」と少しくだけた返事が来ます。
「今日は仕事に行きたくないなあ」と言えば、「少し疲れているのでしょうか」と、人間
のような返事をすることもあります。
さらに、「もっと簡単に説明してください」と言えば、それなりに言い換えた返事が来ま
す。「小学生にも分かるようにしてください」と言えば、語彙を易しいものに変えた解説を
してくれます。
複雑な返事もしてくれます。例えば、「反対の立場から考えてください」などと頼むと、先
の返事とは反対の答え方をしてきたりします。
■□■ どうしてそんなことができるのか ■□■
不思議に思いませんか。どうしてそんなことができるのでしょうか。この秘密の大きな鍵
が、言葉同士の関係を大量に学習していることです。日本の国会図書館には約4,700万冊
の蔵書があると言われていますが、最新の生成AIは約13,000万冊(1.3億冊)の学習を
していると言われます。
例えば、
「春になると桜の花が……」という文章があったとします。この後には「咲きます」が来
そうです。
「冷蔵庫から冷たい……」なら、「水」「ジュース」「ビール」などが続きそうです。
人間も、ある程度は次に来る言葉を予想しながら文章を読んでいます。現在の文章生成AI
も、大ざっぱに言えば、これに似たことを非常に高度な形で行っています。
AIは学習の段階で膨大な文章に接し、「このような言葉の後には、どのような言葉が現れ
やすいか」という関係を学んでいます。ただし、「次の単語を当てているだけ」と理解する
と、少し単純化しすぎです。特に2017年にTransformerという技術が登場してから、文章
中の離れた言葉同士の関係や文脈を捉える能力が大きく発展しました。現在のAIは、一
つ前の言葉だけを見るのではなく、それまでの文章に含まれるさまざまな言葉の関係や文
脈を考慮しながら、次に現れる言葉を予測しています
例えば、
「太郎は冷蔵庫から牛乳を取り出しました。それをコップに入れて飲みました」
という文章では、「それ」が何を指しているのかを考える必要があります。「冷蔵庫」では
なく「牛乳」だと判断しなければ文章は理解できません。
■□■ Attention:注意機構 ■□■
こうしたときに大きな役割を果たしている仕組みの一つが、Attention:注意機構です。
Attentionとは、簡単に言えば、文章の中で「今の言葉を考えるとき、ほかのどの言葉に注
目すればよいか」を計算する仕組みです。
2017年に発表された「Attention Is All You Need」という論文から発展したTransformer
という仕組みが、現在の多くの生成AIの基礎になっています(本稿vol.568、569で詳し
く説明しています)。
例えば、
「昨日、私は京都で清水寺を見ました。とても美しい建物でした」とあれば、「建物」と
いう言葉と「清水寺」との関係に注目します。このような関係を一つ二つではなく、大量
の文章の中から学習します。
その結果、AIの内部では、
「医者」と「病院」
「教師」と「学校」
「雨」と「傘」
のような単純な関係だけでなく、「謝罪するときの文章」「相手に反論するときの言い方」
「難しい内容を簡単に説明するときの表現」といった複雑な関係まで扱えるようになりま
した。ここに、現在のAIの会話の自然さがあります。
■□■ 文章全体の関係性を捉える ■□■
私たちがAIに、「この説明、ちょっと難しいですね」と言うとします。人間なら、「もっと
簡単にしてほしいのだな」と察します。AIも、それまでの会話や言葉の関係から、「説明
の難易度を下げることが求められている」と判断し、それに合いそうな文章を生成します。
そのため、私たちには「こちらの気持ちを理解してくれた」ように見えるのです。
しかし、ここでは注意が必要です。
自然に話せることと、人間と同じように理解していることは同じではありません。
非常に自然な日本語で、間違ったことを説明する場合があります(ハルシネーション)。
人間は「こんなに自信たっぷりに説明するのだから正しいだろう」と思いがちですが、文
章の上手さと内容の正確さは別の問題なのです。
では、そもそもAIはどうやって、医学、歴史、法律、文学、プログラミングなど、これほ
ど幅広いことについて話せるようになったのでしょうか。それには、AIが行う「事前学習」
を知る必要があります。
(つづく)
