2026年9月16日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol. 574 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「組織の知識」AI_8 ***
AIは東大医学部に合格できる?
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AIは膨大なデータから学習しており、その学習内容をもとにさまざまな質問に答えること
ができます。最新の知識には答えてくれないと思っていましたが、最近では、インターネ
ット検索機能を備え、昨日や今日起きた出来事についても最新情報を調べながら答えられ
るAIサービスが登場しています。ときどき間違えることがありますが、AIは概して優秀
な秘書であると言えます。
■□■ 最難関の「理科三類」の入試問題を解かせてみた ■□■
昨年2025年、生成AIに東京大学の入試問題を解かせる興味深い試みが行われました。
正確には「東大医学部の入試」に参加したわけではなく、東大医学部医学科への進学者が
多い最難関の東京大学「理科三類」の入試問題を解かせてみたということです。ChatGPT
o1とDeepSeek R1に問題を解かせ、東大入試に詳しい河合塾の講師が答案を採点したと
ころ、共通テストと二次試験を合わせて、両AIとも理科三類の合格最低点を上回る水準
に達しました。
(株式会社LifePrompt(2025)「東京大学に生成AIは合格できるのか?」)
これは驚くべきことです。少し前まで、AIというと「人間が事前に学習させた知識を繰り
出すコンピュータ」というイメージだったからです。ところが東大の入試問題は、覚えた
知識をそのまま答えるだけでは解けない内容になっています。文章を読み、何を聞かれて
いるか理解し、必要な知識を選び、いくつかの条件を組み合わせ、途中の考え方を組み立
て、最後に答案として表現しなければなりません。
なぜAIにそんなことができるのでしょうか。
■□■ 幾つかの理由がある ■□■
一つ目の理由は、これまでお話ししてきた膨大な学習量です。AIは学習の過程で、教科
書、論文、解説文、問題と解答など、さまざまな文章に含まれる関係を学びます。しか
し、それだけなら「非常に物知りなAI」が構築されるだけです。東大の難問を解くには、
もう一段階上のステップに上がる必要があります。それが推論する能力です。
例えば、
「AならばBである」
「今回はAといえる」
「ゆえにこれはBと考えられる」
というように、情報を何段階かにつなげて結論へ進む必要があります。最近のAIは、質問
を受けてすぐ答えを出すだけでなく、複雑な問題についてより多くの計算を行い、いくつ
かの可能性を検討しながら答えを作る「推論型」の仕組みが大きく進歩しています。
■□■ 人間に例えるならば ■□■
人間においても少し難しそうな問題になりますと、「問題を見てすぐ答える」というわけ
にはいきません。「ちょっと待ってください。順番に考えてみます。」というように思考す
ることになります。AIもその能力が強くなったと考えると分かりやすいと思います。
また、AIは一つの分野だけを勉強しているわけではありません。人間で言えば、文章を読
む能力、英語を扱う能力、数学の知識、物理や化学の法則など、多くの種類の知識を一つ
の大きなモデルの中に入れています。
そのため、
「問題文を読む」
↓
「何を求められているか整理する」
↓
「必要な知識を取り出す」
↓
「計算する」
↓
「文章で答える」
という作業を、かなり広い範囲でAIは行います。
■□■ AIは東大生と同じ能力を持った? ■□■
ただし、ここで知っておくことがあります。東大理科三類の入試で合格水準の点を取った
からといって、AIが東大生と同じ能力を持った、という意味にはなりません。
実際、2025年の検証では、AIは数学の途中説明を省略して失点したり、図表や図形の読
み取りに苦戦したりしました。河合塾講師による採点でも、「答えだけでなく、そこへ至
る道筋を書く」という入試特有の要求はAIの弱点として分析されています。
(株式会社LifePrompt(2025)「ChatGPT o1とDeepSeek R1に2025年度東大受験を解かせた結果と答案分析」)
ここが面白いところです。
私たちは人間を見るとき、「東大に合格できる人なら、中学校の問題は当然できるだろ
う」と考えます。しかしAIには、必ずしもこの常識が当てはまりません。非常に難しい問
題を解いた直後に、意外に簡単な問題で間違えることがあります。AIの能力は、人間の知
能をそのまま大きくしたものではないからです。
例えば自動車は、人間よりはるかに速く走りますが、階段を上ることはできません。
「自動車は人間より運動能力が高い」と単純には言えません。AIにも少し似たところがあ
ります。ある種類の知的作業では驚くほど高い能力を発揮する一方で、人間なら簡単にで
きることにつまずく場合があります。
ですから「AIは東大に合格した」というニュースから本当に注目すべきは、「AIが人間と
同じ頭脳を持ったのではなく、人間がこれまで高度な思考だと思っていた作業のかなりの
部分を、AIでも実行できるようになってきた」ことだと思います。
(つづく)
