ISO9001キーワード「組織の知識」AI_10 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年10月7日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol. 576 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「組織の知識」AI_10 ***
     AIは前の答えをコピーできない
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生成AIは質問された都度答えを作っています。全く同じ質問をされたら前の答えをコピー
すればいいような気がしますが、生成AIの仕組みからコピーは出来ないのです。AIも基
本的にはコンピュータと同じで0か1かの識別の上で動いています。しかし、我々が日常
使っているコンピュータとは同じ種類ではあっても仕組みは全く違います。

■□■ なぜAIの答えは毎回同じでないのか ■□■
電卓に、「125×48」と入力したとします。何回計算しても、答えは同じになります。
コンピュータとは「同じものを入力すれば、同じ結果を返すもの」だと思っている人も多
いと思います。仕組みを理解していただくため、計算とは違いますが、文書の例で説明し
ます。生成AIに全く同じ質問をしても、少し違った文章が返ってきます。時には同じ文章
が返ってくることもあります。
例えば、
「退職する人への挨拶文を書いてください」
と3回頼めば、
一回目は「長年のご尽力に感謝します」、
二回目は「これまでのご貢献に心より感謝申し上げます」、
三回目は「新しい門出を心からお祝いします」、
というように、少しずつ違った文章になります。なぜでしょうか。ここに、生成AIの大き
な特徴があります。AIは、文章全体を一度に取り出しているわけではありません。大ざっ
ぱに言えば、「ここまでの文章の次に、どの言葉を続けるのがよさそうか」を計算しなが
ら、文章を少しずつ作っています。
例えば、
「今日はとても天気が……」
まで来たとします。
次には、
「良い」
「悪い」
「不安定だ」
「穏やかだ」
など、いくつもの候補があります。

■□■ AIは確率を計算している ■□■
AIは、それぞれについて「この言葉が続きそうだ」という度合い(確率)を計算します。
例えば、上の例で、
「良い」50%
「穏やかだ」25%
「悪い」15%
その他10%
のように言葉の候補について度合いを計算するのです。実際の仕組みはもっと複雑です
が、イメージとしてはこのようなものです。必ず一番確率の高いものだけを選ぶようにす
れば、毎回かなり似た文章になります。しかし、それでは文章がいつも同じようになり、
発想の幅も狭くなりますので、複数の有力な候補の中から一定の幅を持たせて選択する方
法が使われています。
AI開発で使われる「temperature(一般用語では温度ですが、AIではバラツキ程度の意
味)」という設定もその一つで、値を高くすると一般に出力のランダムさ(バラツキ)が
増します。(OpenAI「Delete an eval | OpenAI API Reference」)

 ■□■ AIは富士山森林樹海の探索みたい ■□■
ここで重要なのは、一つの言葉が変わると、その後も変わっていくことです。
例えば旅行の相談で、「新幹線を使う案」を最初に選べば、その後は新幹線の時間や料金
を中心に説明します。
一方、「飛行機を使う案」から始めれば、空港への移動などを考える方向へ進みます。最初
の小さな違いが、その後の文章や推論の道筋を変えていくのです。
これは、森の中の分かれ道に少し似ています。出発地点は同じでも、最初の分岐で右へ行
くか左へ行くかによって、最後に到着する場所が違ってくることがあります。生成AIで
は、このような選択が文章の途中で何度も行われます。だから、同じ質問でも表現が変わ
るのです。そして、これは単なる欠点ではありません。むしろ生成AIの魅力でもありま
す。小説の題名を10個考えてもらったり、新商品のアイデアを出してもらったりすると
き、毎回まったく同じ答えしか出なければあまり役に立ちません。ある程度のバラツキが
あるからこそ、新しい案を何種類も出すことができます。

 ■□■ 困ることは? ■□■
しかし、数学や会計、法律上の事実などでは事情が違います。こちらは、「今回はA、次回
はB」では困ります。そこでAIを使うユーザ側も、アイデアが欲しい仕事なのか、それと
も一つの正しい答えが必要な仕事なのか、を区別する必要があります。前者なら、ある程
度のバラツキは歓迎できます。後者なら、「もう一度確認してください」、「計算を検算して
ください」、「根拠となる資料を確認してください」といった使い方が必要となります。
そして、ここからさらに問題が出てきます。「答えがバラツクという違い」だけならまだ分
かります。ところがAIは、ときどき事実ではないことを、とても自然な文章で説明するこ
とがあります。しかも、「本当ですか?」と聞くと、「はい、その通りです」などと自信
満々に答える場合さえあります。

(つづく)