負のスパイラル | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.21  ■□■

  *** 負のスパイラル ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

今回は「ISOの世界の、負のスパイラル」についてお話をしたい
と思います。

今回も宜しくお願いいたします。

■□■ マネジメントシステムと中身 ■□■

最近、ISOの世界では有効性審査ということがいわれています。
ISOマネジメントシステムに関して5年前に話題に上がった「負の
スパイラル」について話をしたいと思います。

これはISO9001(品質)、ISO14001(環境)の仕組み構築の実効性
を問題にした議論でした。

例えば、環境問題は地球温暖化に留まらず、今や全世界の人に
とって無視できない問題になっています。小学生も学校の授業の
中で様々なことを学んでいます。

ISO14001規格は、環境に関するマネジメントシステムを扱って
います。その根本原則は、組織の中にシステム(仕組み)を作る
ことですが、環境マネジメントシステム活動の結果、何らかの
具体的な成果が得られることを期待しています。

しかし、組織が環境マネジメントシステムを構築しISO認証を得て
いるからといって、かならずしも環境に関して良い結果を
もたらしているとは言えないことが問題視されています。

マネジメントシステムは結果を保証しているものではありませんが、
結果を得るためには必要なものです。しかし、マネジメントシステムが
「必要条件」であっても、「十分条件」ではないことは、関係者以外に
十分理解されていません。特に一般国民、消費者には理解されて
いないので、第三者認証制度のもつ意味が正しく一般に伝わって
いないと思います。

認証を取ったからOKということではなく、それを出発点として、
如何に地球環境のために活動をしていくか、中身が問われて
いますが、組織でのこの認識の甘さが問題に拍車をかけています。

■□■ 環境について学ぶには  ■□■

テクノファでは、環境について学ぶ様々なコースを取り揃えて
おります。

CERA承認 ISO14000リフレッシュコース(TE23)
http://www.technofer.co.jp/training/iso14000/te23.html

ISO14000CPDコース(TE24)
http://www.technofer.co.jp/training/iso14000/te24.html

温室効果ガス排出量算定・取引コース(TM79)
http://www.technofer.co.jp/training/management/tm78.html

他にも、多数ございます。

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■□■ QMSに係る負のスパイラル ■□■

だいぶ前(5年前)の資料ですが、
経済産業省から出た「MSS専門委員会報告書」の中に、『負の
スパイラル』とネーミングされた、ISO 認証の世界では有名な
図があります。

タイトルは「QMS(品質マネジメントシステム)に関する負の
スパイラル」となっていますが、環境マネジメントシステムなど
他のマネジメントシステム(情報セキュリティ、労働安全衛生)
に関しても共通的の話題でした。

負のスパイラルという言葉は、簡単に言えば、形ばかりで中身が
伴っていないことを、行政側からISO業界に対して痛烈に警鐘を
鳴らしたものです。

ある時期、ISO関連ビジネスは儲かるという認識が広まり、
非常に多くの方々(企業)がこの業界に参入してきました。

私たちの研修セミナーにも大勢のお客様が足を運んでください
ました。しかし、「皆様に、十分ISOの真髄をお伝えできたか」
と今、思い返してみると、反省すべきことが山ほどあります。

■□■ 山ほどある反省 ■□■

組織の方々も、ISOの認証さえ取れば受注拡大につながる、
会社の評判が上がるといった、見かけ上の効果に気を取られて、
認証取得後の会社発展のために、マネジメントシステムをどの
ように使いこなしていくか、ということにまで十分な検討を行なわ
なかったというところもあるのではないでしょうか。

残念ながら、そのような背景の下に、ISOに係るビジネスモデル
は、産業界の発展、国益向上に多くつながらず、弊害の方が
目立つようになってきてしまいました。

ISO認証を得たのに、製品の品質は向上しない、利益につながら
ない、審査のためだけにシステムがあり実際に活用されて
いない、などの声が挙がるようになりました。

時間とお金を使って、ISOの認証を取得し、維持しているにもか
かわらず、それが企業活動におけるリターン(売上、利益など)
につながっていないということなのです。

国、自治体などの強制法規にもとづく認証とどこに違いがある
のか考えさせられました。

その結論は、競争原理のコントロールに大きな違いがあると
いうものです。ISO認証制度においては、競争原理が適切にコント
ロールされていないのではないかということです。

■□■ 認証制度に競争を持ち込むと・・・ ■□■

『負のスパイラル』のポイントの一つに認証機関同士の競争が
あります。

競争に勝つには顧客を多く獲得する、すなわち市場シェアを多く
取らなければなりませんが、そのために顧客に迎合する認証が
行われる傾向が出てきます。

現在日本で活動している認証機関の数は60とも70とも言われて
います。これだけの認証機関が存在し、かつある一定以上の
認証数を確保しなければ存続が困難であるという状況下では、
負のスパイラルに陥ることは十分にありえます。

5年前に負のスパイラルの議論がされて以来、そうならないために
いろいろな対策が議論されてきました。しかし、なかなか成果に
結びつかないのが現状です。

本来認証行為の役割は、利益を度外視した社会基盤構築にある
といっていいと思います。認証機関の数の多さが負のスパイラル
の要因の一つになっていると思います。