いろいろなQMS | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.47 ■□■
 
    *** いろいろなQMS***

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■□■ トップダウンとボトムアップ ■□■ 

 組織経営において、事柄をトップダウンで行っていくのか、
ボトムアップで行っていくのかについては、当然のことながらやり方に
違いが出てきます。

 これは発想の原点が変わることによってマネジメントの仕方が
変化するためですが、これらの違いがどのようなものであるのかについては
多くの人がいろいろな場面で感じているところではないでしょうか。

いろいろな世界にトップダウン思考、ボトムアップ思考があります。

 中世を支配した天動説はまさにトップダウン思考の象徴です。
ガリレオの地動説は否定されたまま100年がたちましたが、
その間トップダウンが導きだした通説(宗教界の唱える天動説)の考えが
宇宙の真理を隠蔽してきました。

 すなわち、地球が宇宙の中心であるという絶対的な思想が長い間
真実を隠してきたということです。

 組織にも似たような誤りがないでしょうか。
QMSは「こうあるべきだ」といわれ、自分たちの実態を顧みずに従順に
盲目的な規定を定めていないでしょうか。

 組織経営の世界では、欧米式の経営はトップダウン、日本式経営は
全員参加のボトムアップと言われてきましたが、トップダウンと
ボトムアップの発想というものは、品質管理や組織経営ばかりでなく
いろいろな場面で使われるのです。

 ところでQMSにおいてもトップダウンを否定しませんが、
トップダウンだけで全てを律しようとすることには無理があります。

 現場における様々な実態を知り、そこから規定を決め、規定を作成する
ボトムアップの考えで検証することが必ず必要です。

   ■□■ ドーナッツ現象化の防止 ■□■

 通常、システムをデザインする場合、経営の目的や製品・サービスの
現状や目指すべき姿を思い描き、そこから必要となる要素、たとえば
先行投資、人材育成などをトップダウンで計画します。

 しかし時間が経つといろいろな変化が出てきます。
ほころびも出てくるし、経営環境も変われば競争相手もどんどん変わります。
このような状況においては計画と事実の検証が必要になりますが、
このようなときこそトップダウン、ボトムアップ両方からの見方が必要です。

 QMSを構築することはできたが、品質が少しも良くならないと
組織の経営者が言われるのは、このギャップをそのままに放置しておくからです。

 世の中すべてが動いているのですから、ある時間が経過すれば
2つのもの(計画と実態)にギャップが出てくるのは当たりまえです。

 トップダウンとボトムアップ、2つの思考方法を組合せればヒントは
必ず見つかります。
 仕組みを作っても中味が良くならない(質がよくならない)と言われる
「ドーナッツ現象」をなくしていきたいものです。
 

計画と実態のギャップの例には次のようなものがあります。
 ― 規定類
  ― 新旧混在した帳票
   ― 古い管理図やQC工程表
    ― 要員の教育訓練
     ― 作業環境

 人が変わる、部署が変わる、製品が変わる中で
更新が欠かせないものばかりです。

 質を確保するバックグラウンドの変化に追いついてけないと
標準化は崩れ去ってしまいます。

 ■□■ コミュニケーション能力 ■□■

 最近他人と対面してうまく話が出来ない大学生が増えてきているという。

会話は専らメール、話すことが減ったからだというが
組織に入ってのコミュニケーションは大丈夫だろうか。

 組織の中では確かにメールもコミュニケーションツールですが、
それにもまして重要なものは対面しての直接コミュニケーションです。

 ISO19011でうたわれている倫理的で、心が広くて、外交的で、
観察力・知覚が鋭く、粘り強く、決断力があり、
自立しているという資質はバラバラに見えるが、
つながってコミュニケーションが上手であるということになります。

 言い放しでなく心を広くもち、観察力をもって〝聴く〟という切り口を
大切にしないとコミュニケーションは成立ません。

 最も大切なのは互いの顔を見ながらのコミュニケーションですが、
観察力があると相手の顔から情報が得られるし、
知覚が鋭いと声の調子から感情を察知できます。

 QMSの有効性を確認するために行う内部監査も
コミュニケーション次第で効果が出る、出ないが決まってきます。

 内部監査が指摘と応酬のみに終わってしまうことが少なくありません。

 人の心は見えませんが、表面的には見えない心の行間に隠れたものを
顕在化できるのはコミュニケーション次第です。