特別採用(トクサイ)を考える7 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.455 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
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*** 特別採用(トクサイ)を考える7 ***
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最近特別採用という制度がほとんど使われなくなっていると聞き
ます。使われても正しく使われなくなっており、場合によっては
品質不正の代名詞のように言われるようになっています。「特採」
と漢字で表現するときは正しい使い方、「トクサイ」とカタカナ
で表現するときは不正な使い方を示すとまである会社の第三者委
員会報告書には書かれています。特別採用は「買い手と売り手の
合意」がなければ成り立ちません。

■■ 特採を成立させる4つの条件 ■■
前号で特採を成り立たせるための要素には次の4つがあると述べ
ました。
1.取り決められた規格から外れた寸法/幾何学的形状/他の特性
2.買い手側の規格外れの検証
3.買い手側の環境保護の考え
4.売り手側の値引き
今回は2について述べたいと思いましたが、これには交差設計、
工程能力という設計本来の話が付いてまわりますので、まずは簡
単である3、4を先に述べたいと思います。

■■ 3.買い手側の環境保護の考え方 ■■
「環境保護」という言葉を使いましたが、日本で長らく大事にさ
れてきた「もったいない」という精神のことを言っています。
「大量に廃棄される部品がもし使用できるとしたら」資源の有効
利用の観点から積極的に活用しようという気持ちが買い手側にあ
るかどうかということを言っています。
昔イギリスに駐在していたころ、ウエッジウッドという有名な陶
器がカタログの値段よりも安く売られていてびっくりしたことが
あります。今では日本でもセカンドショップという店が当たり前
になっていますが、40年前は日本にはまだそのような概念の店は
ありませんでした。その陶器はいわゆる傷物で、絵の色が褪せて
いるとか、形がくずれている(ごくわずか)とかで、人によって
はそのくらいの傷ものならば使おうという気持ちになるのです。
自分もその部類の人間だったと昔を振り返って思い出します。

■■ 4.売り手側の値引き ■■
買い手と売り手が特採について合意するもう一つの条件が「値引
き」です。日常製品と工業製品とでは話が違うとおっしゃる方も
いると思いますが、ここでは原理原則のお話しをしているという
ことでお許しください。
工業製品であってもウエッジウッドと同様に「傷ものを買う」と
いう話になると、値段を下げて取引するということがビジネスの
上では常識になります。どのくらいの値引きをするのかは、特別
採用に至るいろいろな状況、それに続く買い手と売り手の交渉に
よりますので、それぞれの個別案件ということで、ここでー般的
なお話しはできません。さらに、買い手側にも自分たちの顧客と
約束した納期がありますので、一概に特採を断るということも得
策ではありません。

■■ 2.買い手側の規格外れの検証 ■■
さて、4つの条件の説明で残ってるのが「2.買い手側の規格外
れの検証」です。売り手から「〇〇規格が〇〇外れていますが使
用できませんか」と依頼されたとき、使用できるかどうかを検証
するには「規格がどのような条件で決められたか」を知らなくて
はなりません。最近の「特別採用制度がほとんど使われていない」
という背景には4条件のうちの2番目がネックになっていること
はほとんどの特採ケースで聞く話です。規格が標準に基づいて決
められている場合は、買い手も根拠がはっきりとしていることか
ら検証も比較的容易にできますが、設計には標準が無く組織自身
が決めなければならない特性が多くあります。買い手の特性を実
現するうえで設計が決めなければならない規格に関する技術上の
要素が「公差設計」、「工程能力」の2つです。次回はこの2つに
ついて話を進めることにしたいと思います。
(つづく)