組織の能力 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.122 ■□■   
     *** 組織の能力 ***
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■□■ 11か所に「(組織の)能力」 ■□■

前回、ISO9001:2015 には11か所に「(組織の)能力」という用語
が出てくるとして、それらが繋がっているというお話しをしました
。また、「組織の能力」については、具体的なものに置き換える
というお話しもしました。

■□■ 4.1の注釈の意味 ■□■

4.1には注記が3つあります。今回はその内から、注記1につい
てお話ししたいと思います。
「注記1 課題には,検討の対象となる,好ましい要因又は状態,
及び好ましくない要因又は状態が含まれ得る。」

注記1は「組織の能力に影響を及ぼす、外部・内部の課題」につ
いて参考になることを述べています。普通、課題と言えば「好ま
しくない要因又は状態」を考えると思います。しかし、この注記1
では「好ましい要因又は状態も含まれ得る」と書かれています。
なぜでしょうか?
 
■□■ 組織の能力とは ■□■

現在組織が存在し得ているのはどうしてなのか、組織の中にい
る方はあまり考えたことがないと思います。

しかし、誰かが創業し長年にわたって市場に存在しているという
ことは、何か優れていること、魅力のあること、他社にはないも
のが存在しているからではないでしょうか。

誰しもそのような疑問を漠然とは考えたことはあったと思います
が、まじめに?きちんと考えたことはないのではないでしょうか。

例えば、

・NO.1の製品を持っている
・トップシェアである
・古い歴史がある
・社会に名が知れている
・有為な人材がいる
・国際的に活躍している
・卓越した技術がある
・豊富な資金を有している  など

■□■ 後に続く要求事項 ■□■

箇条4.1で決定したことは、その後の箇条の要求事項に繋がり
影響を与えますので、ここは組織内で一度ブレーンストーミング
などをして適切な答えを得ておくと成果に結び付くと思います。

ちなみに、「組織の能力に影響を与える外部・内部の課題」は、
箇条4.3、箇条6.1.1要求事項における考慮事項になっています。
また、箇条9.3.2マネジメントレビューにおけるインプット事項にも
なっています。

■□■ 好ましい要因又は状態 ■□■

組織が今市場シェアでトップに立っているということは好ましい
状態です。この好ましい状態を続けていくということはこの組織
にとって一つの課題になり得るのです。

なぜ組織は市場シェアでトップに立っているのでしょうか?それ
は、競争相手に対して何かで差別化していることの結果にほか
なりません。それは何でしょうか?その答えが「組織の能力」で
す。

先に上げた;

・有為な人材がいる
・卓越した技術がある

等でしょうが、本当は他にもその答えがあるかもしれません。

例えば;

 ・引き渡し後のサービスが優れている
 ・困ったことに相談に乗ってくれる
 ・スピードが速い

などかもしれません。

■□■ 把握できないと維持できない■□■

市場シェアNo.1の理由、即ち本当の組織の能力を把握できない
と、その能力は意識されず、当然のこととして忘れ去られている
ことになり、現在のレベルを維持できなくなるでしょう。すなわち
、将来市場シェアNo.1の座を明け渡す可能性が高まることに
なります。

ここに本当の組織の能力を把握する意味があるのです。好まし
い現在の状況、なぜそうであるのかの要因が外部・内部の課題
の対象になり得ることはお分りになったことと思います。