ISO 9004:2018の概要8 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.160 ■□■
*** ISO9004:2018の概要8 ***
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ISO9004:2018 の概要についての説明の8回目です。
ISO9004は2018年4月に改定版が発行されました。
今回は箇条10「の分析及び評価」(その2)
について説明いたします。

■□■ 10.4.3 ベンチマークとの比較 ■□■

この箇条では、「組織のパフォーマンスを,確立されたベンチ
マークと比較する」ことを推奨しています。
ベンチマーキングとは,組織が,そのパフォーマンスの改善
及び革新的実践を目的として,組織内外のベストプラクティス
を利用する測定及び分析の手法です。

ベンチマーキングは,方針,戦略及び目標,プロセス及びその
運用,製品及びサービス,又は組織構造に適用することができ
ます。

次のような事項に関してベンチマーキングの実施方法を確立する
ことがよいでしょう。

1.ベンチマーキングの適用範囲の決定

2.ベンチマーク先の選定並びに必要なコミュニケーション及び
 機密保持に関するプロセス

3.比較する特性に対する指標の収集

4.データの収集及び分析

5.パフォーマンスのギャップの特定及び改善の可能性

6.対応する改善計画の策定

7.組織の知識基盤及び学習プロセスへの取込み

■□■ 10.4.5 ベンチマークの実践 ■□■

次のようなベンチマーキングの実践を推奨しています。

1.組織内での活動及びプロセスの内部ベンチマーキング

2.競合他者とのパフォーマンス又はプロセスの競争的ベンチ
 マーキング

3.第3者組織との戦略,運用又はプロセスの比較による,汎用的な
 ベンチマーキング

ベンチマーキングプロセスを確立する場合,組織は,ベンチ
マーキングの成功が次のような要因に依存している点を考慮
することが望ましいでしょう。

1.トップマネジメントからの支援
 (組織とそのベンチマーク先との交流を伴うため)

2.ベンチマーキングの利用先

3.便益対コストの見積もり

4.調査対象の特性(パフォーマンス)の理解

5.ギャップを埋めるための教訓の実施

■□■ 10.5 内部監査 ■□■

内部監査は,組織のマネジメントシステムの適合レベルを
明確にする効果的なツールです。組織のパフォーマンスを
理解し,分析し,改善するのに貴重な情報が得られます。

内部監査は,複数のマネジメントシステム規格に対する
利害関係者,製品,サービス,プロセス又は特定の課題を
取り扱うことができます。

内部監査は、力量がありかつ評価の対象となっている活動から
独立している人々によって、一貫性のある方法で実施すること
が望ましいことです。

内部監査は,問題,不適合,リスク及び機会を特定し,以前に
特定された問題及び不適合の解決に関する進捗状況を監視する
ための効果的なツールです。

内部監査のアウトプットは,次の事項に役立つ情報源を提供します。

1.不適合及びリスクへの対処

2.機会の特定

3.組織内の優れた実践事例の普及

4.プロセス間の相互作用に関する理解の向上

トップマネジメントは,組織全体にわたる是正処置及び改善の
機会を必要とするような傾向を特定するために,全ての内部監査
の結果をレビューすることが良いとしています。

■□■ 10.6 自己評価 ■□■

自己評価は,組織全体のレベル及び個々のプロセスレベルの両方に
おける組織のパフォーマンスの強み・弱み及びベストプラクティスを
明確にするために利用されます。

自己評価は,組織が改善及び革新の優先順位を付け,計画し,実施する
ことの手助けとなります。

プロセスが相互依存している場合には,マネジメントシステムの要素を
独立して評価しないほうがよいでしょう。

組織の使命,ビジョン,価値基準及び文化に対するいろいろな要素間の
影響の評価が大切です。

自己評価の結果は,次の事項を支援します。

1.組織の総合的なパフォーマンスの改善

2.組織の持続的成功の達成及び維持に向けての進展

3.組織のプロセス,製品及びサービス並びに組織構造の革新

4.ベストプラクティスの認知

5.改善のためのさらなる機会の特定

自己評価の結果は,組織及びその今後の方向性についての理解を共有
するのに利用するため,組織内の該当する人々に伝達します。

自己評価ツールは,このISO9004規格の附属書Aに記載しています。

■□■ 10.7 レビュー ■□■

パフォーマンス尺度,ベンチマーキング,分析及び評価,内部監査並びに
自己評価を,組織の適切な階層及び部門,並びにトップマネジメントが
レビューすることが必要です。

レビューは,その動向を明確にできるようにし,また,組織の方針,
戦略及び目標の達成へ向けた進捗状況を評価するために,あらかじめ
定められた定期的な間隔で実施します。

レビューは,組織の使命,ビジョン,価値基準及び文化との関連における
適応性,柔軟性及び応答性の側面を含め,それまでに実施された改善,学習,
革新活動の査定及び評価を取り扱うことができます。

組織は,その方針,戦略及び目標を適用するニーズを理解するため,レビューを
利用することが良いでしょう。また,レビューは,組織の運営管理活動の改善,
学習及び革新の機会を明確にするために利用します。

レビューによって,証拠に基づく,意思決定及び望ましい結果を達成するための
処置の確立が可能となります。