品質不祥事に思う ― 品質管理教育4 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.193 ■□■    
*** 品質不祥事に思う ― 品質管理教育4 ***
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品質管理教育は、昨今の品質不祥事に対する短期特効薬にはなりませんが、
今後の日本国としての地歩を国際的に固めるためには非常に重要なもので
あると思います。

いま国会では、2015年に官邸が毎月勤労調査統計の信頼性に関して、
何らかの事実を知っていたのではないかと議論されていますが、その議論よりも、
早く実施すべき行動は何かを議論し、実施すべき一手に着手し、日本国再生への
軌道に入るべきだと思います。

■□■ 一人ひとり違う教育 ■□■

品質管理教育は、本来、一人ひとりの能力に基づいて能力向上計画を作成して
運用することが望ましいものです。
一人ひとりの能力について現状を評価し、今後必要とされる能力を付与する
にはどんな教育訓練が必要であるかを計画し、それに沿って強化していくことが
組織の能力を高めることになります。

中長期にわたって、教育訓練計画の実施について、必要な能力をもった人材が
計画どおり育成出来ているか、そしてその人材をうまく活用できているかを
継続的にチェックしていくことが大切です。

■□■ 中長期事業戦略に基づいた人材育成 ■□■

組織の人々が持っていなければならない能力は、階層と分野によって異なり、
一人ひとりが効果的に業務を遂行していく上で必要な固有技術と管理技術を
会得することは、組織能力の最大発揮の観点から大変重要なことです。

組織は中長期事業戦略に基づいた人材育成の全体像を持っていなければ
なりません。
その計画はすべての従業員に明確にされ、従業員から見て自分が今後
どんな力量を持っているべきかが分かるようにすることが必要です。

■□■階層別、分野別の教育■□■

階層別、分野別の品質管理教育とは、中長期事業戦略に基づいた人材
育成の全体像を展開したもので、品質管理の能力を高めるための教育
カリキュラムが明確になっており、部門ごとに運用管理することが
できるレベルにまで具体化されているものをいいます。

役員、管理者、従業員、そして協力会社などに品質管理教育をすることを
考えると、階層別にカリキュラムを考えなければなりません。
また、事務、設計、技術、製造、営繕、ITなどの品質管理教育をすることを
考えると、分野別にカリキュラムを考えなければなりません。

さらに、教育訓練の方法についても、集合教育、個別教育、派遣教育、
職場OJT教青、自己啓発、e-ラーニングなどによって、必要となるカリキュラムを
考えなければなりません。

階層が上になるにつれて、品質マネジメントシステムにかかわる能力を
備えること及びリーダーシップに関するテーマが高まります。
それに対して、現場第一線では、品質問題への対応、改善にかかわるプロセス分析、
プロセスアプローチの実践的な知識と活用へのテーマが増します。

■□■具体的カリキュラム例■□■

組織の品質管理教育の具体的なカリキュラム例について述べてみたいと思います。
まず階層別のテーマ(カリキュラム)例です。

役員に対しては、
・取締役、執行役などによるグループディスカッション
・TQM 推進の重要課題への取り組み
・方針管理
・新製品・新サービス開発
・プロセス保証
・品質ステアリングコミッティのリーダーシップ
・小集団改善発表会への参画とコミットメント
・品質管理教育のリーダーシップ
など。

管理者層対しては,
・TQM のフレームワーク
・管理者による診断
・方針管理の実践
・日常管理の運用
・従業員との面談
・小集団改善活動の指導と場つくり
・担当する機能別管理や部門別管理
など。

従業員に対しては、
・品質管理教育で学んだ改善の実施
・標準書の理解
・プロセス分析とプロセスアプローチ
・管理項目と管理水準
・通常と異常
・手法の職場での実践
・応急処置と是正処置
・成果発表
・協力会社(下請負会社)に対する改善活動の指導
など。

つぎは、分野別のテーマ(カリキュラム)例です。
習得して活用すべき手法は、所属する分野によって変わります。

企画、設計、技術部門に対しては、
・多変量解析、質機能展開、故障解析、 FMEAなどの信頼性に関する手法など

研究開部門に対しては
・タグチメソッド、実験計画法などの統計的手法など

工場、営業部門、購買部門、事務系部門にたいしては
・QC七つ道具、新QC 七つ道具など