JIS法改正に向けて― 標準化戦略 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.199 ■□■    
*** JIS法改正に向けて ― 標準化戦略 ***
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工業標準化法(JIS法)が7月1日に全面施行され、産業標準化法と
なります。
昨年2018年5月30日に公布され、11月29日には準備行為が施行されて
きました。それに伴い、日本工業規格(JIS)は日本産業規格(JIS)に
名称が変わりますが、JISという表記は変わりません。

準備行為では、公布された認定機関制度に基づき、JSA(日本規格協会)が
認定機関の申請を行い認定作業がすすんでいます。
ここでいう、認定機関は、マネジメントシステム認証における認定機関(JAB)
とは異なり、JSA規格(日本規格協会規格)を制定することができる
機関を意味します。

■□■ 工業標準化法とJIS改正 ■□■

1949年に定められた法律(工業標準化法)に基づき、日本工業規格
(JIS:Japanese Industrial Standard)制度が創設されました。

その前1946年には日本工業標準調査会(JISC:Japanese Industrial
Standards Committee)が発足し、ISO加盟への準備をして1952年に
ISO加盟が認められました。

工業標準化法は鉱工業製品の品質の改善、生産、流通、使用又は消費の
合理化のため、JIS制度とJISマークの運用を定めた法律です。
JISは政府主導の標準化活動であり、戦後の日本の製造業の発展に
大いに寄与し、生産性の向上と国民生活の改善がはかられました。

■□■ 工業標準化法改正 ■□■

戦前は軍事における標準化が盛んに行われました。
第二次世界大戦後は、国土が荒廃した中で,産業の復興,生産力、
技術力の増強を進めることは日本の最優先課題でしたが、戦前に作った
多くの規格を整理することが国としての標準化に関する最初の仕事でした。

1950年代に入りますと、工業化に向けて多くの企業が立ち上がり、
大量生産の時代に入っていきます。
JISはその後順調に運用され、2016年には10,000件を超える規格が制定
されるに至りました。

しかし、このころ一つの問題が起こりました。それはJISにおいては
「サービス」を規格にすることができないという問題です。

■□■ サービスを標準化できない? ■□■

宅配事業を運営しているヤマト運輸は、30年前からクール宅急便を
B to Bにおける事業として行ってきました。その事業は消費者の
生活レベルの向上からか、10年前ころから個人のクール宅急便利用が
急増し始め、それに伴い地方の中小事業者による冷凍品輸送も増え、
業界として小口保冷配送サービスを標準化したいというニーズが
生まれましたが、JISでは対象外であるということになってしまい
ました。

やむをえなく、ヤマト運輸はイギリスのBSIにその規格化を依頼する
ことになり、ヤマトホールディングス(株)とBSIの連携で英国規格
(BSI-PAS)が出来上がりました。
その後、BSI-PASはJSA規格となり、現在7月の産業標準化法の施行に
合わせて「小口保冷配送サービス」をJISにするべく作業が進められて
います。

■□■ ISOはJISの倍の規格数 ■□■

BSIがサービス標準化を運用してきた裏には、欧州の長い標準化の
歴史があります。欧州における標準化の動きの早さは、第一次世界大戦前の
1906年には、早くもIEC(国際電気標準会議)、そして大戦後の1926年には
ISA(万国規格統一委員会:ISOの前身)が創設されたことから理解できます。

ISOの規格数は2016年には約20,000件、JISの約2倍の数に上っていますが、
それは「サービス」も対象にしてきたからだと言われています。

■□■ 改正のポイント ■□■

工業標準化法の改正のポイントは、ずばり「データ、サービスも標準化の対象にする」
ことにあります。

長い間、JISはもっぱら鉱工業製品の標準化に限りその運用がされてきましたが、
本年7月に産業標準化法となり全面施行されると、データ、サービスの標準化も
JISの対象となります。