JIS法改正に向けて― 標準化戦略2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.200 ■□■
*** JIS法改正に向けて ― 標準化戦略2 ***
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今年の7月に施行となる産業標準化法により、これからはJISでも
データ、サービスを標準化の対象にすることができます。
データ、サービスの標準化に向けて、経産省がすすめる政策に
インダストリー4.0があります。

■□■ インダストリー4.0とは ■□■

経済産業省は、2016年、独ハノーバーメッセでConnected Industries
/Industry 4.0 を発表しました。
これは、21世紀のモノのインターネット化(I o T)、製造業のサービス化、
相互互換性、ネットワーク経済性などの特徴を備えた工業社会を、
「第四次産業革命」と位置付けて実現しようとするものです。

インダストリー4.0の概念を明確にして、製品開発、新サービス、
それらの社会実装などを推進する際には、標準化は避けて通れない
政策です。

インダストリー4.0は、下記産業革命に続く第四次産業革命と位置付け
られています。

1.18世紀後半から始まった産業革命
  この時代をインダストリー1.0と呼んでいる。鋳造、蒸気機関などの
発明により工業が発展し、生産効率向上のため標準の考えが導入された。

2.19世紀後半からの第二次産業革命
  この時代をインダストリー2.0と呼んでいる。電力を活用した大量生産の時代
であり、フォード自動車に代表される部品の規格化が進んだ。

3.20世紀後半の第三次産業革命
  この時代をインダストリー3.0と呼んでいる。分業による合理化が進み、
生産工程の自動化が図られた。インテルに代表されるマイコンなどの
電子部品の標準が進化した。

■□■ インダストリー4.0とは ■□■

実はインダストリー4.0の概念のオリジナルは、2011年、ドイツ工学アカデミーから
発表されたものです。その内容は、第四次産業革命というより、ドイツ政府が
推進する製造業のデジタル化・コンピューター化を目指すコンセプトであり、
国家戦略的プロジェクトのことでした。

ドイツでのこのプロジェクトは、IoTの普及について、トップダウンで
国家プロジェクトを進める世界初の事例となるものです。
「インダストリー4.0」の日本語は、経産省が用いている「第四次産業革命」の
意味合いでしょうが、ドイツでは「IoTやAIを用いた革新」という意味合いが
強いものでした。

■□■ インダストリー4.0の根幹 ■□■

日本はJMA(日本能率協会)などが推進してきたPM(予防保全)により、
機械故障を未然防止することで工場の生産性を上げてきました。
生産工程のデジタル化により、生産設備の予防保全をし、生産コストを
極小化し、さらに生産性を向上させることがインダストリー4.0の根幹です。

機器の稼働情報や設置場所の温度、湿度といった情報などをビッグデータ
として集め、パフォーマンスの低下をAIが検出する工場を「スマートファクトリー」
と呼んでいます。

PMによる生産ラインの監視は、IoT技術の導入によって更に精緻化され、
従来にないより的確な予防保全を実現しようとするものです。

■□■ ISO/IEC/JTC1/SC41 ■□■

ただし、インダストリー4.0には弱点もあります。IoTは、機械を結びつけ、
効率的な稼働条件を示し、さらに無駄を減らしていきますが、扱いを間違えると、
ネットワークに誰かが侵入するリスクに晒されています。

ISO/IEC JTC 1/SC 41では、IoT機器のセキュリティに関する規格を作っています。
JTC 1/SC 41が設立された2016年、IoTに通じたネットワークへの攻撃に
注目が集りました。その年の3月に、「ミライ(未来)ボットネット:マルウエア」
攻撃がそれで、これまでのネットワークへの攻撃の中で最大のものになり、
米国の東側のインターネットの大部分が麻痺してしまいました。

■□■ インダストリー4.0のセキュリティ ■□■

どのようにして起こったのでしょうか。専門家の分析によると、
ネットチェーン(鎖)で最も弱いリンク(環)、つまりネットワークの端にある
IoT機器からマルウエアが入り込んだことが分かっています。

JTC 1/SC 41では、このような事例を分析しながらIoTのセキュリテーに関する
標準を作成しており、対策をとりながらのインダストリー4.0の具現化を推奨
しています。
1989年に西ドイツと東ドイツがドイツ再統一を果たしましたが、当初、
東ドイツの生産性は低く「欧州の病人」と呼ばれましたが、インヅストリー4.0は
ドイツの経済発展の原動力となる成長戦略となりました。

このインヅストリー4.0には標準化の技術開拓の余地がたくさんあると
期待されています。