ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-8 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.228 ■□■
***ISO9004:2018持続的成功を達成するための指針-8***
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前回に続きISO9004 :2018「品質マネジメント-組織の品質-持続的成功を
達成するための指針」の箇条6組織のアイデンティティについて話をします。

組織は毎年事業計画を策定し、持続的に成功することを目指していますが、
それらはミッション、ビジョン、価値観、文化に基づいて継続的なものが
望ましい、とJQSC「方針管理の指針」(JIS Q 9023)では述べています。

■□■ アイデンティティと事業計画 ■□■

組織は、毎期事業計画、事業方針を策定し、これを組織全体に展開実施し、
期末にレビューを行って次期の事業計画に反映することを基本にしています。
しかし、これだけでは、経営環境の変化に応じることは難しくなります。
これ以外、技術開発、人材育成、新事業開拓など、成果が直ぐに出なくても
数年後には効果が出るような活動についても適切な方向付けをする必要が
あります。このため、組織は、 中長期経営計画を策定し、これを大元にして
期ごとの事業計画を策定することがよい、とされています。

■□■ 中長期経営計画の策定 ■□■

JQSC「方針管理の指針」では、中長期経営計画の策定について述べています。
中長期経営計画とは、組織によって正式に策定された、事業を将来的にどう
進めるかに関する計画であり、顧客に対してどのような価値を提供するのか、
それをどのような方法で実現するのかに関する戦略です。

通常、中期は3~5年、長期は5~10年を意図している場合が多いと思います。
内容としては、次の項目を含めるのがよい、とされています。

1.対象とする顧客とそのニーズ・期待
2.提供する製品・サービスと、それを通じて顧客に提供する価値
3.製品・サービスを提供する方法及びタイミング
4.競合する他の組織を凌駕する方策
5.人々、インフラストラクチャー、作業環境、情報、供給者とパートナー、
天然資源、財務資源なとの必要資源
6.バリューチェーン(顧客に価値を提供するプロセス)を構成する各機能
(技術開発、生産、物流、 販売など)に対する方向付け、また、機能の実現
において鍵となる基盤(人材育成、情報通信技術など)に対する方向付け

■□■ 中長期経営計画の策定の手順 ■□■

JSQC「方針管理の基本」(JIS Q 9023)から引用した手順を示します。

a)組織の使命・理念及びビジョンを確認する。

b)市場、顧客、社会動向など組織を取り巻く外部環境の変化を分析する。顧客視
点でニーズ期待の変化を把握するとともに、社会における関連固有技術や情報
通信技術の進展の方向を確認する。それをもとに、組織の使命・理念及びビ
ジョンを達成する上での機会及びリスクを明らかにする。

c)組織の経営資源(技術、人材、財務など)の実態、特に今までの中長期経営計
画の達成’実施状況に基づく反省点を明らかにし、競合する他の組織と比較し
て強み.弱みを把握する。

d)環境が変化する中で、不確実性の高い要因がある場合には、複数の起こり得
るシナリオを描く。

e)複数のシナリオに対し、競合分析及びリスク分析などを行い、どのシナリオ
が起こってもリスクを回避できる方向を検討する

f)資源配分を考慮して、ビジョンを達成する計画を決定する(将来のありたい姿
の実現を目指す)。

なお、組織による中長期経営計画の策定に伴い、技術開発、人材育成、新事業開拓、情報システムなどの活動を担当する部門は、さらに各部門の中期計画を立案し、トップマネジメントへ現場からの提言を行い、すり合わせを行うのがよい。

策定した中長期経営計については、時期を決めて見直しを行うのがよい。見直しの方法としては、
計画開始年度から完了年度まで計画を固定して期間計画を定める方式、長期の計画を策定した上で期ごとに見直しするローリング方式などがある。

中長期経営計画の策定を効果的かつ効率的に進めるための手法には、業界分析、
製品トポートフォリオ分析、市場分析、バランストスニアカード、ベンチマーキング、
SWOT 分析、戦略要因分析などがある。