番外編_日経品質管理文献賞受賞5 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.435 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 番外編_日経品質管理文献賞受賞5 ***
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今回受賞した「JSQC-TR 01-001 テクニカルレポート 品質不正
防止」の目次に沿って、主要な部分である4章~7章を簡単に紹
介しています。今回は6章「品質不正をなくすために組織はどう
したらよいか」前半です。
組織が品質不正を防止するための精神論を説いたり、内部通報制
度活用、内部監査実施、コンプライアンス教育だけでは限界があ
ります。品質不正が発生する要因を考えると、品質不正を起こす
ことのない組織文化を醸成する必要があります。 TQM(Total
Quality Management)はその方法の一つです.

■■ TQMの原則 ■■
組織が持続的に成功し続けるためには、ニーズとシーズを結びつ
けて価値創造を行うことが重要です。 TQMとは、全部門・全階
層の参加を得て、プロセス及びシステムの維持向上、改善及び革
新を様々な手法を駆使して推進する活動のことを言います。
TQMの原則は次の3つと説明されています。
(1) 顧客指向・社会指向
顧客・社会の立場からそのニーズを把握し、これを満たす製
品・サービスを提供するという考え方です。
(2) プロセス重視
結果のみを追うのでなく、結果を生み出すプロセス(仕事の
仕組み・やり方)に着目します。
(3) 全員参加
全部門・全階層が、全員参加して品質マネジメントを行うこ
とが必要であると考えます。

■■ 経営者の役割と責任 ■■
組織の中で、異常あるいは変化をいち早く察知するのは、現場で
働いている従業員です。こうした変化を社長も含めて組織内で共
有できれば、品質不正など起こさずに的確な対応を組織全体で展
開できるはずです。そのためには、社長は常に現場に関心を示し、
現場で起こっている変化の把握に努めることが望まれます。近年、
社長自らが現場に足を運んで、現場と直接交流する機会が少なく
なったようです。どんなに多忙でも、現場訪問は品質不正の発生
防止のために極めて有効な手段であり、計画的な現場訪問の徹底
が求められます。

■■ 組織文化の醸成 ■■
現場の変化、特に現場に起きている不都合な事実は、トップであ
る社長に伝わらないことが多いようです。組織は人の集まりです
ので、人同士の意思疎通が重要ですが、トップが現場に関心を示
さない組織の現場には「コミュニケーションのよいオープンな組
織文化」は醸成されないと思います。
管理者は現場から不都合な事実の報告があった場合、決して頭ご
なしに叱ってはいけないでしょう。先ずは話を聞いて、よく報告
してくれたと褒めることが大事だと思います。その上で事実を確
認し、対処方法を指示することが望まれます。そのような組織に
するためには、組織文化の醸成が不可欠であり、良い組織文化の
醸成はトップの意識にかかっているといっても過言ではないと思
います。

■■ 日常管理の徹底と改善活動の促進 ■■
組織を取り巻く環境は、絶えず変化していますので、日常の業務
に取り組んでいる現場では、今までと違うことがときどき起きま
す。いつもと違うことを異常と言っていますが、現場で異常が起
きたらその都度適切な処置を行うことで、いつもの状態に戻すこ
とが大切です。この平常を監視していて、異常を察知して迅速に
いつもの状態に戻すことを日常管理と言っています。

(1)SDCAサイクル
日本品質管理学会発行の規格「日常管理の指針」には「部門の日
常管理の進め方」が示されています。そこでは、日常管理の流れ
をSDCA(Standardize-Do-Check-Act)サイクルで説明していま
す。PDCAサイクルと似ていますが、起点が「P:Plan」ではな
く「S:標準化」となっているところが異なっています。Sは「い
つもの状態」であり、すなわち日常行うべき標準化された業務を
意味し、標準から逸脱しない仕事の管理を重要視しています。
あらゆる職種のすべての職場には、必ず日常業務があり、この日
常業務の中で発生する異常をいち早く発見して元に戻したり、そ
の機会を活用してより効率的なやり方へ変えたりする活動が日常
管理であり、この基本になっている方法がSDCAサイクルです。
業務における異常を見つけるための管理方法として、「管理項目・
管理水準」を定めておくという方法があります。日常管理の骨格
を形作る重要な「管理項目・管理水準」については、階層間・職
場間ですりあわせを行い、体系化を図ることが重要です。

(2)日常管理の留意点
異常は文字通り「常と異なる」ことですから、異常に気づくため
には、いつもの状態を認識しておくことが必要です。現場では日
常的にさまざまな異常が発生しており、「いつもと違う音(異音)
がする」、「お客様がいつもより不満そうだ」など、まさに千差万
別ないつもと違うことが起きます。こうした異常を放置しておく
と、やがて大きな問題を引き起こすことになります。このような
ことにならないように日頃からに日常を大切にする組織文化の醸
成が望まれます。