番外編_日経品質管理文献賞受賞7 | 平林良人の『つなげるツボ』

—————————————————————
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.437 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 番外編_日経品質管理文献賞受賞7 ***
—————————————————————
「JSQC-TR 01-001 テクニカルレポート 品質不正防止」の目次
に沿って、今回は6章「品質不正をなくすために組織はどうし
たらよいか」の続きをお送りします。組織が品質不正を防止する
ためには精神論を説いたり、内部通報制度活用、内部監査実施、
コンプライアンス教育だけでは限界があります。品質不正が発生
する要因を考えると、品質不正を起こすことのない組織文化を醸
成する必要があります。

■■  組織文化の醸成 ■■
(1)望ましい組織文化
品質不正を起こしにくい組織のイメージは次のようなものです。
a) 正規の手順や基準、ルールを守る意識や行動様式が定着して
いる。
b) 変化や変更に敏感に反応し、対応することが出来ている。
c) 経営者、現場を含めて組織の全体で共通の価値観が形成され
ている。
d) 組織のメンバーは他者(上司や同僚、部下、他部門、他組織)
の活動に関心がある。
e) メンバーの間や階層間で活発なコミュニケーションが行われ
ている。

(2)TQMによる望ましい組織文化の形成
上記の5項目とTQM活動要素との関係を整理すると次のように
なります。
a) 正規手順・基準の遵守
-新製品・新サービス開発管理、プロセス保証による正規手順・
 基準の明確化・見える化
-日常管理による逸脱の防止・正規手順の定着
-小集団改善活動による参画意識の向上と遵守意識の定着
-品質管理教育によるプロセスや標準の大切さの認識 
b) 変化点への着目
-方針管理による経営環境における変化への対応
-日常管理による変化点への対応
c) 全社に共通する価値観
-方針管理による価値観の共有、方向づけ、全社のベクトル
 合わせ
-日常管理、小集団改善活動による価値観の共有・定着 
-品質管理教育による顧客重視、プロセス重視、全員参加など
 の価値観の共有 
d) 他者の活動への関心
-新製品・新サービス開発管理による顧客・社会、他部門、他
 組織に対する関心・意識の向上
-プロセス保証による前後の工程に対する関心・意識の強化
-小集団改善活動による自部門、他部門のメンバーとの交流
e) 多様なコミュニケーション
-方針管理による階層間、部門間、組織間の意識・考え方のす
 り合わせ
-日常管理による手順に従ったフォーマルな報告・連絡・相談
-小集団改善活動による様々な人々の間のコミュニケーション
 の活発化 
TQMには、組織文化に関係し、組織文化を形成・改善する活動が
多重的に含まれている。組織の文化を形成・改善する上でTQM
は有効かつ重要である。

(3)組織文化によるTQMの定着
一時的にはTQMを形式的に実施することはできても強力なリー
ダーシップがなければ、組織文化はいずれ形骸化し機能しなくな
ります。
-正規の手順やルールを守らない。
-変化に鈍感で同じ手順を繰り返している。
-経営層と現場で価値観にズレがある。
-他者が何をやっているか知らず、行動にも関心がない。
-コミュニケーションが活発でなく、報連相も十分でない。

(4)TQMと組織文化の関係
品質不正を発生させないためのTQMの実施と組織文化の改善は
表裏一体で相互に依存しています。TQMによって品質不正を発
生させないよう組織文化を改善すると同時に、一方で組織文化を
醸成することによって品質不正を発生させないTQMを定着させ
ます。