ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」6 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年5月27日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.558 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」6 ***
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ヒューマンエラーへの対応の一つとして手順書の作り方を工夫することが考えられます。
前回手順書の粒度の話をしましたが、書くだけでは効果的な防止にならないので、動画で
手順を説明することが多くの現場で活用されています。また手順書の使われる状況に応じ
て書き方を工夫することも必要です。

■□■「手順」と「基準」と「異常時対応」 ■□■
組織の標準書を「手順」と「基準」及び「異常時対応」に分けて考えてみます。
(1)手順:どのような順ですすめるか(工程順など)
(2)基準:どこまでできたら合格とするか(品質、安全、数量など)
(3)異常時対応:作業中迷ったらどうするか(止める、呼ぶ、隔離するなど)
標準書を読むものから、実践的に使うものにする工夫、即ち“現場を動かす仕組み”として
考えてみます。特に、(3)異常時対応がない標準書は考え直した方が良いと思います。現
場では必ず例外が起きるため、「異常の見つけ方」「止め方」「誰に連絡するか」「記録には
どう書くか」を標準書にはっきりさせておくことで、ヒューマンエラーを防いだり、拡大
させたりしないことに役立ちます。

■□■ 手順書と属人化について ■□■
属人化とは、仕事が特定の人の経験・勘・記憶に依存している状態を言います。その人が
いないと品質や納期が不安定になる状態です。手順書は属人化を減らすための基本手段で
すが、作り方を誤ると逆に属人化を助長します。例えば、標準が形式的で現場実態とズレ
ていると、作業者は標準を見ずに“できる人のやり方”を参考にし始めます。すると標準は
飾りになり、暗黙知が温存され、属人化が固定化されてしまいます。
属人化を減らす標準づくりのポイントは、標準を「熟練者のコツの翻訳」として扱うこと
です。熟練者は、作業の中で無意識に重要ポイントを見ています。例えば、締付けの感
触、音、振動、わずかなズレ、材料の状態などです。これらを、写真・NG例・注意点と
して言語化/視覚化することで、暗黙知が形式知化され、属人化が減ります。ここでの肝
は、標準を品質保証部門が机上で作るのではなく、現場と一体で作り、現場の言葉と現場
の絵を取り入れることです。
また、標準と属人化の関係で重要なのが「標準=最低ライン」ではなく「標準=最良のや
り方(現時点で)」という位置づけにすることです。標準が最低ラインだと、上手い人は標
準を無視して自分のやり方で作業をしてしまいます。標準が最良のやり方として更新され
続ければ、上手い人の工夫は標準に吸収され、組織能力になります。つまり、標準は固定
文書ではなく、改善の器にするべきです。ISO9001の10.3(継続的改善)と結びつけると
マネジメントシステムの定着に繋がります。

■□■ 手順書の限界と補完策 ■□■
(1)見ない、読まないという問題
 標準があっても、見ない人が多くいます。最初は読んでも慣れてくると見なくなりま
 す。それへの対策は、標準遵守を工程の完了条件に組み込むことです。標準をチェック
 したり、標準を記録に結び付けたりすることを完了の条件にします。
(2)例外処理、変化に弱い
 材料変更、設備変更、人員入替、特急対応などがあると標準が使い物にならなくなりま
 す。いろいろな変更をどのように管理するかについても標準に書き込むことが必要です。
(3)判断の良し悪しが求められる
 標準は通常の作業には強い一方、異常に弱いことは前述のとおりです。標準どおりにい
 かない場合の判断が重要になりますが、エラー、ミスにならないようにするには判断が
 適正であることが必要になります。場合によっては止めることも判断の一つです。
(4)標準自体が間違っている
 標準が誤っていれば、標準通りにやって不良が出ます。標準は検証(レビュー、現場試
 行、結果確認)とセットで運用しなければなりません。
(5)標準ではうっかりを防げない
 部品は正しいが締付けトルクが足りない、ラベルは貼ったが剥がれたり、組んだが表裏
 が反対などは標準だけでは防げません。前回までに述べたポカヨケで補完します。

結論として、手順書の見える化は「理解」と「再現性」を大きく高めますが、見ない、読
まない、守らない、例外に弱い、判断が必要など限界があります。手順書を単独で活用す
るのではなく、バーコード照合やポカヨケ、工程内検査、力量管理、変更管理などと組み
合わせて「管理された状態」を構築することが必要です。