ISO9001キーワード「組織の知識」AI_13 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年10月28日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol. 579 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「組織の知識」AI_13 ***
     AIは感情を持つようになるのか?
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この問いかけは多くの人が知りたいことだと思います。AIは考えるがそれは無機的なもの
で、人間のような有機的なものではないと思います。そもそも「感情とは何か?」が明確
になっていません。喜んだり、悲しんだり、怒ったり、好きになったり、嫌いになったり、
人間のこの感情がどこから来るのか説明しろと言われても、当の本人も説明できません。

■□■ AIは人間と同じような感情を持つようになるか ■□■
AIと長く話していると、まるで感情を持っているように感じることがあります。
「今日はうまくいかなくて落ち込んでいます」と話せば、「それはつらい一日でしたね」
と返してきます。良い知らせを話せば、「それはうれしいですね。おめでとうございます」
と言います。
こちらがきつい言い方をすると、少し控えめな返事をすることもあります。ここまで自然
になると、「今は感情がなくても、もっとAIが進歩したら、本当に喜んだり悲しんだりす
るようになるのではないか」と思う人もいるでしょう。
この問題を考えるには、まず二つのことを分けなければなりません。一つは、感情を表現
できること。もう一つは、実際に感情を体験することです。

■□■ AIの感情表現のうまさ ■□■
現在のAIは、感情を表現することについては非常に上手になっています。
例えば、
「怒っている人の口調で書いてください」
「悲しそうに話してください」
「明るく元気に励ましてください」
と頼めば、それらしい文章を作れます。研究でも、現在のLLMは指定された感情に合っ
た文章表現を生成できることが確認されています。
(出典:arXiv:2504.14706(2025))

だからといってAIの内部に、人間と同じ「悲しい」「うれしい」という体験が生じている
ことにはなりません。俳優を考えてみましょう。俳優は舞台の上で泣き、怒り、絶望する
人物を見事に演じます。しかし、「悲しそうに表現できる」ということと、「その瞬間、本
当に同じ悲しみを体験している」ということとは別です。

■□■ 人間の感情は体とつながっている ■□■
AIの場合は、さらに事情が違います。人間の感情には身体が深く関係しています。怖いと
心臓が速くなる。緊張すると手に汗をかく。空腹になるといらいらする。大切な人を失う
と胸が締めつけられる。
私たちの「感情」は、脳だけで独立して存在しているわけではありません。一方、現在の
ChatGPTのような対話型生成AIは、人間のような身体を持っていません。「怖いです」
と文章にはできますが、人間と同じ意味で心臓が高鳴っているわけではありません。

ただ、この問題をさらに難しくする研究も始まっています。
2026年には、ある大規模言語モデルの内部に「怒り」「悲しみ」などの感情概念に対応す
る内部表現があり、それを操作すると、モデルの回答の傾向も変化するという研究が発表
されました。研究者はこれを「functional emotions」、つまり機能としての感情と表現して
います。ただし研究者自身も、それは主観的に感情を体験していることを意味しない、と
明確に区別しています。
(出典:arXiv:2604.07729(2026))

■□■ アンソロピックとローマ教皇との議論 ■□■
「将来の感情を持つAI」という言葉には、少なくとも三つの段階がありそうです。
・感情らしい言葉を使うAI。
・感情によって行動が変化するようなAI。
・本当に喜びや悲しみを体験するAI。
最初の二つについては、すでにかなり実現しています。
しかし三番目については、現在の科学では「本当に感じている」と確認する方法さえ簡単
ではありません。そもそも人間の「意識」そのものについても、まだ完全には解明されて
いないからです。AIの意識について科学的な指標を検討した研究では、現在調べられたAI
システムを「意識がある」と判断する根拠はない一方、将来そのような指標を満たすAI
を技術的に作れないと断定できるわけでもないとされています。
(出典:arXiv:2308.08708(2023))

ですから、「AIには絶対に感情は持てない」と断言するのも、「もうAIは人間と同じ感情
を持っている」と言うのも、どちらも早すぎます。
現在の段階では、AIは人間の感情を読み取り、感情に合わせた反応を作ることはできる。
しかし、人間のような主観的な喜びや悲しみを体験していることが確認されているわけで
はないと理解するのがよいでしょう。

今月(2026年10月5日、日経夕刊)アンソロピックのVice CEO とローマ教皇との間で
上記を巡っての議論が起きている記事が掲載されていました。

(つづく)