Author Archives: 良人平林

難しいことを易しく | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.125 ■□■
*** 難しいことを易しく ***
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■□■ 分かりやすい解説 ■□■

世の中、もっと易しく説明できないのかと、いろいろなことで感じる
ことが多くあります。

例えば、経済、政治の世界に関連しては、専門家でないと本当に
は理解できないことが、マスメディアでは日常茶飯事に流されて
います。

そのためでしょうか、池上彰さんの「時事問題の世界一分かりや
すい」解説講座がもてはやされるのでしょう。

■□■ 遊びの世界でも ■□■

遊びの世界においてもそうです。私はゴルフをするのですが(ゴ
ルフはスポーツではない、遊びであるという人が多い)、ゴルフに
ついて、いろいろな方が「遠くへ真っ直ぐ飛ばすコツ」をあれこれ
説明してくれますが、実行するには困難が伴います。

実はこの1年、Uチューブをチェックしながら遠くへ飛ばす動画を
漁り、打ちっぱなしの練習場へ行ってあれこれ試してみました。

実施してみて無駄だったとはいいませんが、ほとんどは細部にこ
だわっており、一番肝心な「球を打つ」ことを教えてくれませんでし
た。

■□■ 本質は何か ■□■

ゴルフの本質は球を打つことです。ところが、Uチューブの動画解
説では体の動きの細部をいろいろと解説してくれています。

手の動き、腰の動き、頭の動き、足の動き、加えて体の重心の動
き、クラブのフェースの動きなどなど、言い出すとまだ10点以上は
上がるほどの解説が盛り沢山です。

その一つ一つを実践するうちに一番重要な本質がどこかへ行って
しまいます。球を打つためには体全体がバランスとれた動きにな
らなければなりません。

■□■ ISO9001規格の本質は何か ■□■

ISO9001規格は読んでも、難しくて何を言っているのか十分に理
解できない、ということを組織の方から時々聞きます。

この難しいと言われるISO9001規格を易しく説明することが、テクノ
ファの使命だと思っています。

例えば、プロセスを易しく説明しようとすると、次のようにいろいろ
な表現ができると思います。

・プロセスは一連の活動である。
・プロセスはアウトプットに向かっての道筋である。
・プロセスはインプットとアウトプット間で行われる付加価値をつけ
る活動である。

これらの説明は、一見易しく説明しているように見えますが、ISO9
001規格の本質をきちんと把握しているでしょうか。本質が見失っ
ていると難しいことを易しく説明したことにならないのです。

■□■ ISO9001規格の本質は何か ■□■

ISO9001規格の本質は組織能力の実証と顧客満足向上です。こ
の2つの目的は箇条1の適用範囲に書かれています。

プロセスは目的、目標を持っていなければなりません。目的、目
標を見失ったプロセスは本質を把握できていないと言わざるを得
ません。

難しいことを易しく説明する際には、必ず本質が入った説明になっ
ていなければなりません。

その意味で、プロセスを易しく説明すると次のような言い方になる
でしょう。

・プロセスは目標を達成する一連の活動である。
・プロセスは目標に向かっての道筋である。
・プロセスはインプットとアウトプット間で行われる目標達成という
付加価値をつける活動である。

目に見えない穴、目に見える突起 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.124 ■□■
*** 目に見えない穴、目に見える突起 ***
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■□■ リスクは目に見えない穴 ■□■

ISO9001:2015には、2008年版にはない、新しい要求としてリス
ク及び機会への取組み」が規定されています。

「6.1.1 品質マネジメントシステムの計画を策定するとき,組織は,
4.1 に規定する課題及び4.2 に規定する要求事項を考慮し,次
の事項のために取り組む必要があるリスク及び機会を決定しな
ければならない。

a) 品質マネジメントシステムが,その意図した結果を達成でき
るという確信を与える。

b) 望ましい影響を増大する。

c) 望ましくない影響を防止又は低減する。

d) 改善を達成する。」

ここで、リスクは「不確かさの影響」と定義されているように、計
画を作る時になんとなく心配になる事柄をいいます。

リスクは、例えれば目的を達成しようと歩いている道に開いてい
る穴のようなもので、穴が大きいと落ちて大きな怪我をすること
になります。

a)~d)はリスクと機会を決定する時の糸口を与える項目ですが、
そのリスクと機会を決定する際には、4.1で決定を要求されて
いる外部及び内部の課題を考慮しなければなりません。

■□■ 課題は目に見える突起 ■□■

ISO9001:2015には、2008年版にはない、新しい要求としての
「外部及び内部の課題」が規定されています。

「4.1 組織及びその状況の理解

組織は,組織の目的及び戦略的な方向性に関連し,かつ,その
品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能
力に影響を与える,外部及び内部の課題を明確にしなければな
らない。」

組織の能力に影響を与える課題とは何でしょうか。まず、規格
は、組織の能力とはQMSが意図した結果を達成する能力である
と規定しています。

QMSの意図した結果を達成するには、組織の能力が必要にな
るのですが、その能力は油断しているとどんどん劣化していっ
てしまう、したがって、劣化しないように課題として捉えて解決を
しなければならない、ということがここにおける規格の意図であ
ると思います。

外部及び内部の課題は、目に見えるように明確になっていなけ
ればなりません。そうでなければ解決することはできません。

ちょうど、歩いている道の前にはっきりと見える突起みたいな、
越えなければならない障害と例えることができます。

■□■ リスクと課題 ■□■

このように、ISO9001;2015 で新しく規定された、リスクと課題は
似たようなものですが、本質は違います。

組織の想定するリスクを時々拝見する時がありますが、課題が
リスクとして取り扱われている場合が多くあります。

課題は目に見えており、それが目標を達成する上の障害になっ
ているので取り除かなければならないものです。目に見えてい
るから、どのようにすれば取り除くことができるのかが分かり、
基本的には解決することができる性質のものです。

しかし、リスクは、時、場所、人、状況などを特定することがなか
なかできません。
誰でも一度は、何かを計画するとき、何か起きそうだという不確
かなことを心配したことがあると思います。その漠然とした不安
みたいな性質のものがリスクであると思います。

ISO37001 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.123 ■□■
*** ISO37001 ***
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■□■ 企業の人権侵害を世界が監視 ■□■

海外ビジネスの現場で企業の人権侵害に関する圧力が強くなっ
ています。人権団体は「途上国での過酷労働を助長している」と
して、先進国の企業を相次ぎ批判し、不買運動も起きています。

国連は企業の人権侵害に関する責務への指導原則を策定しま
した。一般にこのテーマに関する日本企業の危機感は低く、専
門家は東京オリンピックを控え経営を揺るがしかねない事態も起
こりうるとして警告しています。

■□■ 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」 ■□■

国連は2011年ハーバード大学ジョン・ラギー教授が中心となっ
て「企業には人権を尊重し保護する責務がある」として「ビジネス
と人権に関する指導原則」を纏め、人権理事会において全会一
致でこの原則を採用しました。

人権はかっては国家の問題でしたが、多国籍企業の影響力が
高まり、今では企業も責任を負うべきであるという国際合意が出
来上がっています。

■□■ 欧米の法規制 ■□■

欧米では、企業活動による人権侵害を防ぐための法律が次々と
生まれています。アメリカでは、カリフォルニア州で2012年「サプ
ライチェーン透明化法」が施行されました。これは、企業が一次
取引先に対して過酷な労働を強いることがないように求めていま
す。

イギリスでは2015年「過酷労働防止法」が制定され、現代の奴
隷防止法であると言われています。これは、一定規模以上の企
業に対して、人権侵害の予防策を取締役会で承認することを求
め、それをウエブサイト上で公表することを義務づけしたもので
す。公表を怠った企業には罰金を科す規定も盛り込まれていま
す。

■□■ 日本での企業の人権問題 ■□■

2015年「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、中国に
おいて下請けの過酷労働を人権団体から批判されました。

「人権の尊重は指導してきたが、人権団体は我々の気が付かな
い点までも調べていた」と同社の新田幸弘執行役員は話してい
ます。

2011年には日立製作所が東南アジアの下請け工場での過酷労
働を問題にされています。

また日産自動車は2012年ブラジル企業との間での調達で企
業責任を問われています。

■□■ 日本における法的規制 ■□■

日本には、まだ企業の人権問題に特化した法律はありませんが、
2015年に導入された、コーポレートガバナンス(企業統治指針)
では、株主以外のステークホルダーとの適切な協働を求め、グ
ローバルな社会・環境問題への対応に注意を促しています。

その他、サービス残業、最低賃金、男女差別、同一労働・同一
賃金など企業の従業員、下請けへの一層の配慮を求める動き
が強くなっています。

■□■ 贈賄防止マネジメントシステム規格 ■□■

表題に掲げたISO37001は企業の人権問題に関係するものとし
て注目されます。この規格は企業の贈収賄を防止するためのも
ので、「贈賄防止マネジメントシステム規格
(Anti – bribery management systems standard )と呼ばれるも
のです。

日本ではあまり知られてきませんでしたが、海外では頻繁に起
きる贈賄事件に対して、企業への法的規制が各国で打ち出され
てきています。ISOではそれらに関連して自主的に贈賄防止のマ
ネジメントシステムを構築する基準を作成する活動を開始し、現
在ではDIS(国際規格原案)の段階まで規格の開発が進んでい
ます。

■□■ 各国の贈賄防止法的規制 ■□■

海外における贈賄防止に関する法規制で代表的なものは、アメ
リカの不正(腐敗)行為防止のための法律「米国海外腐敗行為
防止法(FCPA)」です。

またイギリスにおいては「英国贈収賄防止法(UKBA)」が成立し
ています。

日本企業は、グローバル展開に伴いこれら海外の贈収賄防止
法を知っている必要があります。ただ、知るだけでなく、海外従
業員を含め、贈賄行為を決して行わない倫理を組織内に継続的
に徹底させていく必要があるでしょう。

組織の能力 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.122 ■□■   
     *** 組織の能力 ***
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■□■ 11か所に「(組織の)能力」 ■□■

前回、ISO9001:2015 には11か所に「(組織の)能力」という用語
が出てくるとして、それらが繋がっているというお話しをしました
。また、「組織の能力」については、具体的なものに置き換える
というお話しもしました。

■□■ 4.1の注釈の意味 ■□■

4.1には注記が3つあります。今回はその内から、注記1につい
てお話ししたいと思います。
「注記1 課題には,検討の対象となる,好ましい要因又は状態,
及び好ましくない要因又は状態が含まれ得る。」

注記1は「組織の能力に影響を及ぼす、外部・内部の課題」につ
いて参考になることを述べています。普通、課題と言えば「好ま
しくない要因又は状態」を考えると思います。しかし、この注記1
では「好ましい要因又は状態も含まれ得る」と書かれています。
なぜでしょうか?
 
■□■ 組織の能力とは ■□■

現在組織が存在し得ているのはどうしてなのか、組織の中にい
る方はあまり考えたことがないと思います。

しかし、誰かが創業し長年にわたって市場に存在しているという
ことは、何か優れていること、魅力のあること、他社にはないも
のが存在しているからではないでしょうか。

誰しもそのような疑問を漠然とは考えたことはあったと思います
が、まじめに?きちんと考えたことはないのではないでしょうか。

例えば、

・NO.1の製品を持っている
・トップシェアである
・古い歴史がある
・社会に名が知れている
・有為な人材がいる
・国際的に活躍している
・卓越した技術がある
・豊富な資金を有している  など

■□■ 後に続く要求事項 ■□■

箇条4.1で決定したことは、その後の箇条の要求事項に繋がり
影響を与えますので、ここは組織内で一度ブレーンストーミング
などをして適切な答えを得ておくと成果に結び付くと思います。

ちなみに、「組織の能力に影響を与える外部・内部の課題」は、
箇条4.3、箇条6.1.1要求事項における考慮事項になっています。
また、箇条9.3.2マネジメントレビューにおけるインプット事項にも
なっています。

■□■ 好ましい要因又は状態 ■□■

組織が今市場シェアでトップに立っているということは好ましい
状態です。この好ましい状態を続けていくということはこの組織
にとって一つの課題になり得るのです。

なぜ組織は市場シェアでトップに立っているのでしょうか?それ
は、競争相手に対して何かで差別化していることの結果にほか
なりません。それは何でしょうか?その答えが「組織の能力」で
す。

先に上げた;

・有為な人材がいる
・卓越した技術がある

等でしょうが、本当は他にもその答えがあるかもしれません。

例えば;

 ・引き渡し後のサービスが優れている
 ・困ったことに相談に乗ってくれる
 ・スピードが速い

などかもしれません。

■□■ 把握できないと維持できない■□■

市場シェアNo.1の理由、即ち本当の組織の能力を把握できない
と、その能力は意識されず、当然のこととして忘れ去られている
ことになり、現在のレベルを維持できなくなるでしょう。すなわち
、将来市場シェアNo.1の座を明け渡す可能性が高まることに
なります。

ここに本当の組織の能力を把握する意味があるのです。好まし
い現在の状況、なぜそうであるのかの要因が外部・内部の課題
の対象になり得ることはお分りになったことと思います。

システムは繋がっている3 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.121 ■□■
*** システムは繋がっている3 ***
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■□■ 繋がっている他の要求事項 ■□■

ISO9001:2015 には11か所に「(組織の)能力」という用語が出てき
ます。

前回につづき「組織の能力」について、具体的なものに置き換える
話をしたいと思います。

■□■ 箇条7.1.1a) 実現能力 ■□■

7.1.1a)には組織の能力ではなく、実現能力として出てきます。「既
存の内部資源の実現能力及び制約」を考慮して、QMSの効果的
な実施、及びプロセスの運用及び管理に必要な人々を明確にし、
提供しなければならない、と要求されています。

ここでいう実現能力を一般用語として見逃してはなりません。現実
の世界に置き替えましょう。テクノファの例でいうならば、実現能力
とは「審査員研修コース5日間をJRCA基準に基づき受講者の方を
満足させて終了させる」能力を意味します。

テクノファの場合、内部資源にこの実現能力は充分にありません
。当社の審査員研修コースの種類、実施回数を考慮すると30人く
らいの講師が必要となりますが、内部資源では制約があり、現在
実現能力としては2,3人しかいなく、他は外部資源に頼っています

■□■ 箇条8.2.3.1(要求事項を満たす)能力 ■□■

8.2.3.1には、顧客に提供する製品及びサービスに関する要求事項
を満たす能力をもつことが要求されています。

具体的なものに置き換えてみましょう。テクノファの場合、”顧客に
提供する製品及びサービスに関する要求事項を満たす能力”に
は、次のものがあります。

 ・講師の理解しやすい講義力
 ・教材編集力
 ・便利で明るく清潔な研修室
 ・スピードの速いCP、IT機器
 ・明るいプロジェクタ、など

■□■ 8.3.4b)(要求事項を満たす)能力 ■□■

8.3.4 には、設計・開発を行う管理の一つに、要求事項を満たす能
力を評価するレビューを行う、という要求があります。

テクノファで新しい研修コースを設計した場合、前の項で述べた能
力が充分にあるかを確認しなければなりません。

 ・講師の理解しやすい講義力
 ・教材編集力
 ・便利で明るく清潔な研修室
 ・スピードの速いCP、IT機器
 ・明るいプロジェクタ、など

■□■ 8.4.1c)(外部提供者の)能力 ■□■

8.4.1 には、組織が外部のプロセス,製品及びサービスを活用する
場合,プロセス又は製品・サービスを提供する外部提供者の能力
に基づいて,外部提供者の評価,選択,パフォーマンスの監視,
及び再評価を行うための基準を決定し,適用しなければならない
、と要求しています。

テクノファでは最重要能力である講師の能力を評価する基準を作
成し、コース実施ごと毎回パフォーマンスの監視,及び再評価を
行っています。

■□■ 8.4.2組織の能力  ■□■

8.4.2 には、外部から提供されるプロセス,製品及びサービスが組
織の能力に悪影響を及ぼさないことを確実にしなければならない
、と要求しています。

ここでいう組織の能力は、テクノファの例で言えば代表的なものと
して講師の能力になるでしょう。

そして、8.4.2c)1)には、外部から提供されるプロセス,製品及びサ
ービスが,顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を一
貫して満たす組織の能力に与える潜在的な影響を考慮に入れて
、外部提供者の管理をしなければならない、と要求されて
います。

■□■ 8.5.1f)(組織の)能力    ■□■

8.5.1 の製造及びサービス提供の管理については、そのf)に
管理された状態で実行しなければならない項目として次にものが
指定されています。

「f) 製造及びサービス提供のプロセスで結果として生じるアウトプ
ットを,それ以降の監視又は測定で検証することが不可能な場合
には,製造及びサービス提供に関するプロセスの,計画した結果
を達成する能力について,妥当性確認を行い,定期的に妥当性を
再確認する。」

テクノファの例でいうと講師の講義はまさしくそれ以降の監視又は
測定で検証することが不可能な場合であり、計画した結果を達成
する能力すなわち講師の力量を妥当性確認しなければなりませ
ん。