Category Archives: つなげるツボ

人の話を聞く | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.14  ■□■
 
  *** 人の話を聞く ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

人というものは、「自分の聞きたいことしか聞こえない、自分
の見たいものしか見えない」と、よくいわれますが、人の話を
聞くということについて考えてみたいと思います。

では今回も宜しくお願いいたします。

■□■ 上の人は話を聞かない ■□■

人の話を聞くということは意外と難しいことです。特に日頃、
人から指示されることの少ない上の人は、人の話を聞かないと
よくいわれます。

部下に「話を聞くから言え」という管理者に限って、途中まで
聞いて「わかった、わかった」といって、かえって部下に
フラストレーションを与える人が多いようです。

多くの管理者は、「話を聞かない人」とならないようにいろいろな
努力をしているようですが、一番の問題はある時は話しを聞く、
しかしある時は話しを聞かないといったムラをどのように
無くすかということです。

どんな場面でも必ず話を聞くということは、その人の骨身にまで
染みた心構えがなくてはならないのですが、このことは大変
むずかしいことです。

人間は自分にメリットがあることには興味をもちますから、
まずは、話を聞くことがどんなメリットに繋がるかをよく知っておく
ことが重要だろうと思います。

■□■ 最良の道を選べる ■□■

当然のことですが組織にはそれぞれに目標があります。トップ
には会社経営における目標がありますし、管理者には部署に
与えられたミッションを果たす目標が存在します。

人の話を聞くメリットの第一は、この目標を果たすための道を
間違ったものにしないということです。目標を達成する手段には
幾つものもの道が考えられます。一番効率のよい道を選ば
ねばなりませんが、一度間違えた道は大きな回り道に
なってしまいます。

人は自身が気に入っている道と異なる道を提案されると、
聞く耳を持たなくなります。話を聞かないことによって、もし、
より効果的な別の道があるにもかかわらず、見逃したとすると
その代償は大きなものになります。

■□■ 信頼のおける部下を持てる ■□■

人の話を聞く第二のメリットは、信頼のおける部下を持てる
ということです。NHK大河ドラマで今はやりの「直江兼続」では
ありませんが、彼のような腹を割って話し合える部下をもつこと
のメリットには大きなものがあります。

もっとも、腹を割って話し合えるようになるには、話を聞く
だけではなく、話を聞く際の心構えも重要になります。それは
「私心」を持たないということです。

私心を持たない、私利私欲のためでなく大義のためと言い換え
てよいと思います。すなわち、個人でいえば自分のためでなく
組織のため、組織でいえば会社のためでなく公(社会)のため
ということになります。

上の人が部下の話を聞くことができても、そこに私利私欲が
あるとしたら、良好な人間関係を築くことは困難でしょう。私心
を持っていては腹を割って話し合える人間関係を作り出せません。

■□■ 信頼の満ち溢れた職場ができる ■□■

上の人だけでなく、組織の全員が人の話を聞くようになると、
職場は信頼感の満ち溢れた気持ちのよい雰囲気になります。

しかも、一人ひとりが個人のことよりも、集団のことを優先的に
考えられるようになると、お互いの間に目的が共有化され腹を
割って話し合えるようになります。

腹を割って話し合う、すなわち本当の対話が信頼感を醸成して
いきます。このことは、聞く側の問題ばかりでなく、話をする方
の問題へと繋がっていきます。

話をする方が、遠慮したり、本当とは裏腹のことを言って
いると、せっかく相手が聞く態度になっているのに何にもなり
ません。関係が悪くなると思っても本当のことを言わなければ
なりません。相手が聞く態度にいる時に本当のことを言わない
と、相手に誤解を与えることになります。

対話(コミュニケーション)は話をすることではなく、「聞くこと」
からはじまるといわれますが、話す人が本当のことを言うことが
重要です。聞く方は、相手が何を訴えたいのか、話す言葉だけ
ではなくその裏にある気持ちも汲み取ろうとして一生懸命な
わけですからそれに応えなければなりません。こうして、
居心地のよい職場ができていくのです。

■□■ コミュニケーションについて学ぶには ■□■

「コミュニケーション・トレーニングコース」をご案内します。

お互いを理解しあうための「傾聴トレーニング」及び、異なる
意見・考えからお互いに納得して結論に導くための「アサー
ション(発信)トレーニング」を通じてコミュニケーション能力を
高めるコースです。

詳細はテクノファホームページをご覧ください。
http://www.tfcc.jp/category/1250770.html

■□■ ものごとにこだわらない ■□■

対話(コミュニケーション)していても、つい言葉尻を捕らえて
つまらない方向に議論がいってしまうことがよくあります。
話をする人が言葉を慎重に選ぶことも必要ですが、聞く方が
相手は何を言いたいのかを汲み取る姿勢がより重要です。

心を真っ白にしていると言葉尻は気にならなくなります。心を
真っ白にしているとは、ものごとにこだわらないことをいいます。
しかし、心を真っ白にして聞く、すなわちものごとにこだわらずに
聞くということは本当に難しいことです。

職場の対話には必ず大なり、小なりの対立があります。すなわち、
立場の違いがあります。目標を達成しようとするとその目標に
こだわらなければなりません。

目標を達成しないでいいというならば、こだわる必要もなくなり、
自由に和気あいあいと対話(コミュニケーション)していれば
よいのですが、現実はそのようなわけにいきません。

自分の立場は相手の立場と異なりますから、こだわっていると
人の話はほとんど聞こえてきません。多くの人が、人の話を
聞かないで、どのへんを落し所にしようかばかりを考えています。
それでは冒頭に言った「自分の聞きたいことしか聞こえない、
自分の見たいものしか見えない」ということになります。

自分の目標にはこだわるがやり方にはこだわらない、自分の信念
にはこだわるが行動にはこだわらない、自分の性格にはこだわる
(変えられないから)が表現の仕方にはこだわらないなど、
一度じっくりと考えてみるべきではないでしょうか。

■□■ 職場での最重要課題は ■□■

周りから見たら職場の雰囲気を壊しているとしか思えないのに、
自分では気がつかないタイプの人がいます。

1.理屈で人は動くと信じている。
2.人から学ぶことをしない。
3.人と相談することができない。
4.決して謝ることをしない。
5.人の気持ちが理解できない。

上の人は常に自分を自戒していなければなりません。
自戒していてもこうなってしまう人には、どこかに行ってくださいと
お願いせざるを得なくなります。職場の雰囲気を良好に保つという
ことは、それくらい重要なことです。

私にもこういう傾向がないとはいえません。私の部下から
見ればたぶんこういう傾向があると言うでしょう。常に自分は
今どういう状態でいるか、昨日までは人の話を聞けていたが
今日も本当に聞けるか、自問自答しなければなりません。

本質がそうでないのにそのようになろうとすることは大変な
ことです。でも常に自分との闘いをしていかざるをえないのです。

環境プランナー・ベーシック資格 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.13  ■□■
 
  *** 環境プランナー・ベーシック資格 ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

今回は東京商工会議所「eco検定」のセカンドステップ「環境
プランナー・ベーシック」資格のお話をさせていただきます。
では宜しくお願いいたします

■□■ 環境に関する話題 ■□■

環境に関する最近の話題は何といっても地球温暖化の進行、
そして温暖化ガスの削減についてのものです。地球の気温上昇が
気候、農作物、そして生態系に大きな影響を及ぼすと懸念されて
います。

IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:国連の
気候変動に関する政府間パネル)5次レポート(2008年発行)
では、すでにその現象が現れていると述べています。

その原因は空気中の温暖化ガスの増大にあるというのが大方の
学者の主張です。温暖化ガスにはいろいろな種類(国連では6種
類を指定)がありますが、それら内でもCO2(二酸化炭素)に関
する排出が最大の議論となっています。

■□■ 日本の2020年目標 ■□■

日本政府は2020年における温暖化ガスの削減目標を2005年比
15%減(1990年比8%減)にすると発表しました(6月10日)。

京都議定書(国連気候変動枠組み条約)の基づく第一次国別
目標(2008年~2012年)において、日本は1990年比6%減という
数字を負わされています。

しかし、なぜ1990年比なのか、なぜアメリカは離脱したのか、
なぜ開発途上国は数値目標を持たないのか、特に中国、インドは
CO2を大量に排出しているにも拘らずなぜ規制の網に掛から
ないのか、など第一次国別目標にはいろいろな議論があります。

今年12月に予定されているデンマーク・コペンハーゲンCOP15
(第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議)において、ポスト
京都議定書の国際交渉がいよいよ始まろうとしています。

■□■ 東京都温暖化ガス削減及び排出権取引制度 ■□■

東京都では2008年の東京都議会で「都民の健康と安全を確保
する環境に関する条例」の改正を可決しました。その中には、
「温室効果ガス総量削減義務及び排出量取引制度」という日本で
初めてとなる制度が入っています。

東京都ではこの条例に基づき、2015年時点で8%減、2020年時点
で25%減のCO2を削減するという野心的な目標を掲げています。

対象となるのは、年間で燃料、熱及び電気を一定以上(原油換算
1500Kl)使用する事業所であり、都内には約1300事業所があると
みられています。

基準排出量は、過去5ヵ年度(2002年~2006年)の中から事業者
の都合のよい連続した3ヵ年度を選び、その平均値を取ってよい
となっています。事業者がもし目標値を達成できなかった場合
には罰則があります。

東京都では目標とする削減量の実現を支援するため、いろいろ
な削減手段を提供しようとしています。例えば、グリーン証書
の活用、また排出量取引も適用させようとしています。また、
太陽エネルギーバンクと称して住宅用太陽エネルギー機器の
導入のための補助金支給も決めています。

■□■ 民生用CO2削減も大きなテーマ ■□■

現在日本では何種類かの温暖化ガスの削減計画が進んでいます。
環境省主導のもの、経済産業省主導のもの、東京都主導のもの
などです。CO2は、従来、産業分野、運送分野で多く排出されて
いましたが、最近では業務分野(事務所)、民生分野(家庭)
での伸びにも著しいものがあります。

今までは、工場、発電所、製鉄所、化学プラントなどがCO2排出
の主たる源と思われていましたが、過去10年事務所、家庭から
の排出が急激に増加してきています。

東京商工会議所が2006年から始めた「eco検定」は、このような
CO2排出に代表される環境問題を国民に広く知らしめる役割をも
って登場しました。そして狙い通り環境問題を理解する人々の
拡大に成功しています。2008年にはエコピープル(eco検定保有
者の総称)が5万人に達しました。

これからは、CO2排出だけでなく、それらを取り巻く環境問題を
多くの人が知り、何らかの活動に繋げていくことが大切です。
例えば、家電製品購入に付加されるエコポイント、省エネルギ
ー、廃棄物管理、水質問題、生物種の絶滅、緑化運動、無農薬
栽培など、実の多くのニュースが我々に提供されています。

しかし、知っただけでは何も変わりません。一人ひとりが何ら
かの行動を始めることが大切です。

ダブルスタンダード | 平林良人の『つなげるツボ』

 ■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.12  ■□■
 
      *** ダブルスタンダード ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

「ダブルスタンダード」は、組織の中に2つの仕組みができて
しまい、目的達成の支障になるとされていますが、最近ダブル
スタンダードこそが日本の生きる道であるとの論調があります。

では宜しくお願いいたします。

■□■ ダブルスタンダードが必要? ■□■

先月(2009年4月)行われた環境省、日本経済新聞社などが主催
する「環境コミュニケーションシンポジューム」で“世界二制度:
ダブルスタンダード”の提案がありました。

環境問題というと対症療法的な技術論と抽象的な文明論が中心
ですが、両者の間にあるべき社会の仕組みを作ることが重要で
あるという論調のなかでの提案でした。

20世紀、我々はローカルよりグローバル、遅いより速い、安定より
成長が優れていると考えてきました。

しかし、これでは環境問題が解決されないのは明らかです。
しかし、両者が共存できる仕組みでなければ世界全体も個人も
存在していけないのではないか、すべての経済活動に関して
「ローカルでスローなルール」と「グローバルでファーストな
ルール」 といった二階建てルール、すなわちダブルスタンダー
ドが必要である という意見です。

スピードを抑制し、多様性を維持できる仕組みづくりの具体的な
ものとして提案されたのが「ダブルスタンダード」です。

■□■ 日本はダブルスタンダードの国? ■□■

日本はもともとダブルスタンダードの国であった、という説が
あります。

古来から日本は、中国からいろいろな文化を取り入れていました。
その都度、日本にあったものと中国からきたもの、すなわち
ダブルスタンダードを上手に取扱ってきました。

例えば、稲作、律令、街並み、文字、焼き物、織物、食べ物など
多くのものが中国からきましたが、日本人は2つのものを程よく
融合させ独自の文化をつくってきました。

典型的なものは宗教です。日本には古来から自然崇拝の宗教-
神道がありました。日本人は、石から草木までに八百万の神が
いるとして森羅万象を神と見立ててきました。

中国から仏教が入ってきたとき、時の天皇は深く仏教に帰依
しましたが、だからといって神道が途絶えたわけではありません
でした。

2つの宗教、神道と仏教、すなわちダブルスタンダードをうまく
取り扱ってきたのです。

■□■ 一神教と多神教 ■□■

日本は多神教の国です。それに対してよく引き合いに出されるのが
西欧の宗教です。キリスト教、イスラム教、ユダヤ教などいずれの
宗教も自身以外の宗教を認めません。

一神教は排他的ですから、西欧では宗教の違いによる戦争が
何回も引き起こされてきました。それも絶対に妥協することのない
厳しい戦いです。

日本では聖徳太子の「和をもって尊しとする」という教えもあってか、
宗派が異なるかといって徹底的に争うということはありませんでした。

それどころか、2つのそれぞれいいところを取り込んで、
より良いものに 仕立て上げていくという文化を作り上げて
いきました。

日本人は、2つの異なるものを融合することに長けているのです。
古くは和魂漢才、新しくは和魂洋才という言葉が示すように、
ダブルスタンダードを混合することに得意であったのです。

■□■ 二重構造が組織を強くする ■□■

実はものごとは二重にすることで強くすることができます。
家でも 車でも物理的な強さは二重にすることで達成されて
いることが 多くに見つけられます。

生物の遺伝子が二重構造であることは有名です。アデニン(A)・
チミン(T)・グアニン(G)・シトシン(C)の4つの塩基がらせん状に
二重に絡みついた構造をとっています。

文化も日本のように2つのものを組み合せたり、お互いに補強
し合ったりしたほうが1つのものより強固にすることができる
と思います。

企業の組織もそうだと思います。金太郎飴のようにどこを切っても
同じ顔が出てくるような組織は一見強いように見えますが、
意外ともろいものです。

違った意見を持つ人々がお互いに意見を交換しながら目まぐるしく
変化する外界に立ち向かうイメージが、長い期間継続して
存在できる組織像であると思います。

■□■ そして多様性 ■□■

ダブルスタンダードには、多様性が必要です。いろいろな考え方が
あって初めてダブルスタンダードが成り立ちます。

多様性とはお互いがその存在を認めて成り立つ性質です。もし、
片一方が相手を認めないと多様性は成り立ちませんし、ダブル
スタンダードも成立しません。

ここで重要なことはお互いを認める多様性がダブルスタンダードを
成り立たせているという点です。

お互いが認めない、すなわち一方が明らかに偽者、いつわり、
悪性のものは多様性とはいいませんし、ここでいうダブルスタ
ンダードの概念にはいりません。

■□■ ISOのダブルスタンダード ■□■
      
ISO9001認証制度の弊害としてよく指摘されることに「ダブル
スタンダード」があります。いままで述べてきたものと言葉は
同じでも、ISOでいうダブルスタンダードは概念が違うものです。

QMS(品質マネジメントシステム)を構築しても、会社の中に
二重の仕組みができてしまって、言っていることとやっている
ことが違う、というダブルスタンダードは避けなければなりま
せん。

ISO9001規格が要求していることは、“What”すなわち「何を
やりなさい」ということだけです。「このようにやりなさい」
すなわち“How”ということは要求しておりません。

しかるに、組織のISO9001事務局は、“What”を理想的に展開して、
組織の部署に頭で考えた実施すべきことを規定書にして
トップダウンで指示をしています。

現場では、従来からの先輩から脈々と引き継がれてきた仕事の
やり方がありあます。自分たちが慣れ親しんできたやり方は
そう簡単に変えることはできません。

「ダブルスタンダード」という言葉でお互いが繋がっているように
みえても、一方は肯定的なもの、一方は否定的なものです。
このように、世の中には表面は同じように見えても内容が異なる
ということが多くあります。

研究テーマは「組織構造分析」 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.11  ■□■
 
      *** 研究テーマは「組織構造分析」 ***

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このメルマガは、(株)テクノファ及び平林良人が何らかの
ご縁でつながった皆様方にお送りさせていただいております。
このメルマガは1万名以上の方々にお読みいただいています。

■□■ 組織のプロセス分析 ■□■

テクノファ代表取締役の平林です。

今回は東京大学大学院工学系研究科の共同研究員のお話を
させていただきます。私は昨年から共同研究員になりましたが、
研究テーマは 「組織構造分析」です。

では宜しくお願いいたします。

■□■ 共同研究員とは ■□■

昨今は、日本の大学においても産学協同が盛んです。アメリカ
の大学は昔から産業界とのつながりを重要視して、大学で創造
されたこと、開発されたことを産業界のビジネスに結びつけて
きました。

大学と産業界の一体となったエネルギーがアメリカの新しい
ビジネスを起こしてきたのですが、一方で大学が実利に走り
すぎて真理探求への力が削がれているとの懸念、指摘もあり
ました。

アメリカはいろいろと言われてはきましたが、日本の産学協同
はアメリカと比べると、掛け声ばかりで、今日に至るまであま
り成果が上がっていないというのが通り相場です。

日本でも、アメリカほどでなくてもよいから、もっと大学と産
業界の結びつけを強くして、お互いが補完し合いながら成果を
上げていくことが期待されているのです。

大学における共同研究員制度は、そのような背景のもとかなり
以前から存在している制度です。

■□■ 組織構造分析とは ■□■

組織とはふしぎな存在で、放っておけばいろいろな問題が起き
ますが、まったくだめな方向に行くかといえばそうでもなく、
誰かがリーダーシップをとってほどほどのところで落ち着き
ます。

組織とは、生物学的にいうと「ほぼ同形・同大で、働きも似通
った細胞の集団で集まって器官を構成する」ものですが、社会
学的には、「社会を構成する各要素が結合し有機的な働きを有
する統一体」であるといわれています(広辞苑)。

また品質管理においては、「責任、権限及び相互関係が取り決
められている人々及び施設の集まり」と定義されています
(ISO9000)。

一般的な広範な概念から個別な品質管理における概念まで
いろいろありますが、共通に言えることに次のようなことがあ
ります。

1.同じものの集まり
  (ほぼ同形・同大で・・・、各要素が結合・・・、人及び
  施設の集まり)。
2.つながっている
  (集団で集まって・・・、有機的な働き・・・、相互関係
    が・・・)。
3.目的をもっている
  (器官を構成する、働きを有する・・・、取り決められて
    いる・・・)。

我々の企業組織も、1、2、3という要素は同じですが、一つ
付け加えなければならないものに「効果的」という要素があり
ます。

「組織とはふしぎな存在で放っておいても誰かがリーダー
シップをとるようになる」と言いましたが、誰かがリーダー
シップをとってくれるのを待っていては競争に負けてしまい
ます。

■□■ 効果的とは ■□■

そこで企業組織には普通ピラミッド型の組織構造があります。
これは古今東西の軍隊組織を真似たもので、組織の最高指揮官
のもと一糸乱れず目標に向かって、組織全体として成果を上げ
ようとするものです。

ただ、軍隊は単純に物理的強さを求めますが、企業組織は経済
的強さを求めるがため、いろいろな要素がからんできます。

企業は市場で勝たねばなりませんが、そのためには収益を
上げ、その収益を投資にむけ、顧客から支持される製品を
開発し、また売上を伸ばすというサイクルを継続しなければなり
ません。

企業が市場で勝つとは、これら一連のことを競争相手よりも
効果的に行うことです。

そのための組織構造とはどのようなものがよいのでしょうか。
必ずしもピラミッド型の組織構造がよいとはいえないのです。

■□■ 最重要課題は「製品」をつくる固有技術 ■□■

他の視点も組織にとって重要です。組織構造はあとからついて
くる課題であって、競争に勝つためにはまず「製品」が優れて
いなければなりません。
市場で顧客から評価される製品、すなわち顧客が買いたくなる
製品・サービスを継続的に市場に提供することが最重要課題
です。

顧客は気まぐれです。市場はいつも動いています。経営環境は
時代と共に変化していきます。

常に変化していく環境に適合した製品を市場に提供し続ける
ことはそれなりの戦略がないと実現することはむずかしいで
しょう。

まずは、製品を開発し、製造(又はサービス提供)していく
固有技術がないと企業は市場で勝つどころか、存在すること
さえ許されなくなってしまいます。

■□■ そして業務の進め方に焦点を当てる管理技術 ■□■

更にいえば、継続的に顧客から評価される製品、サービスを
市場に提供する業務の進め方が重要です。

ここで思い出されるのはISO9001のプロセスアプローチです。
プロセスとは何かという難しい定義は今後のメルマガに譲る
として、プロセスとは簡単に言えば業務のことです。業務の
進め方に焦点をあてる、すなわちプロセスアプローチも私の
共同研究員としての課題です。

そういうことで、私の東京大学共同研究員としての課題と
ISO9001プロセスアプローチとはしっかりとつながっていま
した。

生物多様性 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.10 ■□■
 
      *** 生物多様性 ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

今回は生物多様性について話をさせていただきます。来年2010年
には名古屋においてCOP10(第10回締約国会議)が開催される
予定です。

では宜しくお願いいたします。

■□■ 生物多様性とは-1992年環境サミット ■□■

1992年、ブラジルのリオデジャネイロでは有名な「環境サミット」
が開催され、約180カ国の首脳が集まりました。その時の
アウトプットの一つとして有名なのが「気候変動枠組み条約」
です。

現在、世界をあげて地球温暖化防止(CO2排出削減など)に
ついての議論が活発ですが、ことの発端はこの環境サミットに
あったのです。

この気候変動枠組み条約の陰に隠れてあまり知られていません
でしたが、もう一つ締結された条約が「生物多様性枠組み条約」
です。

1992年に締結されたこれらの条約をフォローする国連主催の
会議がCOP(Conference Of Parties)と呼ばれる一連の国際会議
です。

気候変動枠組み条約は今年COP16と呼称されていますから、今年
で16回目の会議になるわけです。生物多様性枠組み条約のほうは、
開催回数が少なかったため来年でCOP10です。

■□■ どうして生物多様性は必要か ■□■

一昨年、アメリカ発の世界金融不況が始まったとき、経済の世界
にも多様性が必要だといわれたものでした。

アメリカ一国の強者が築いた経済世界は、最後はあまりにも脆弱
(ぜいじゃく)であることが露呈してしまいました。

自然の世界でも強者だけでは成り立ちません。世界には3000万
種ともいわれる多様な種が存在し、お互いに影響を与えながら
全体のバランスをとり、結果、自然界を営々と維持しているのです。

例えば、次のようなことがあります。弱肉強食の世界では強者が
弱者を糧にして生きていますが、弱者も強者を糧にしています。
ライオンの死骸を最後にきれいにしてくれるのは、微生物であったり
します。

自然界はお互い持ちつ持たれつつ、バランスを取りながらその
存在を維持しているのです。バランスを取るためには多様性が
必要です。

■□■ 生物多様性とビジネス ■□■

企業組織にとって生物多様性はどんな関係があるのでしょうか。
2007年に環境省がアンケートをとった結果、約70%の日本の
組織は「生物多様性は自分たちのビジネスには関係がない」と
答えています。

私はこの数字をみて、これは面白い数字であると思いました。
多くの企業が生物多様性について興味を持っていないのです。

もし、興味を持たざるを得ない時代が来るとすると、先に理解を
深めていた企業の方がいろいろな意味で有利になると思った
からです。

■□■ 国の施策 ■□■

国としてはどんな施策を考えているのでしょうか。
生物多様性の保全と持続可能な利用に関わる国の施策の目標と
取組の方向を定めた「第三次生物多様性国家戦略」が、平成19年
に閣議決定されています。

次の4つの基本戦略を掲げています。
1.生物多様性を社会に浸透させる。
2.地域における人と自然の関係を再構築する。
3.森・里・川・海のつながりを確保する。
4.地球規模の視野を持って行動する。

■□■ ABSとは ■□■

生物多様性の議論にABSという言葉が出てきます。

ABSとは“Access and Benefit Sharing”の略で「アクセス便益
共有」と訳されています。
これは生物の遺伝についての概念です。

近年、生物の遺伝は人為的に加工できるようになりました。
遺伝子を操作すること(アクセスすること)で多くの便益を手に
入れることが可能な科学的現実があります。

そのため、先進国は開発途上国の種(遺伝子)を金に糸目を
つけず買い漁る傾向が強くなっています。

ABSはそうした傾向に対して、一つの原則を明確にしたものです。
すなわち、遺伝子を操作して得られた便益は、その種を提供した
開発途上国を決められた比率で分けなければならないという
原則です。

この原則は、気候変動枠組み条約のCDM(Clean Development M
echanism:
クリーン開発メカニズム)とよく似ています。CDMにおいても先進国は
開発途上国で手に入れたCO2排出権を独り占めすることは
許されず、開発途上国とある比率で分けなければなりません。

このように、気候変動枠組み条約と生物多様性の二つの条約は、
それらの考え方でお互いに繋がっています。