ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」3 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年4月29日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.555 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」3 ***
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前号でポカヨケの話をしました。その具体的な例として「QRコード、バーコード照合
(スキャン必須化)」を取り上げました。ポカヨケの原点はトヨタのモノつくりにあった
とお話ししましたが、 QRコード、バーコードについては、いつ頃、誰が考えたのかはあ
まり知られていません。バーコードから調べてみました。

■□■ バーコードの歴史的経過と名前の由来 ■□■
バーコードは「線(バー)と空白(スペース)の並びで情報を表し、機械で読み取る」技
術です。人が目で見て読む文字情報に比べ、読み取りが速い、誤読が少ない、システム連
携しやすいという利点があります。歴史的には、1948年、米国Drexel大学の学生であっ
たMr.WoodlandとMr.Silverが、Morse Code(モールス信号)を印刷して垂直に伸ばし、
太バーと細バーを作成することを考案しました。大量の商品を扱う流通・小売の現場では、
手入力や目視記録では処理速度が追いつかず、入力ミスが避けられにことから、商品を一
意に識別できる機械読取の仕組みが求められていましたので、バーコードは急速に普及し
ていきました。

「バーコード(bar code)」という名称は、記号の主要部が棒(bar)で構成され、棒の太
さや並び(一次元)で情報を符号化し、読み取り装置がそれを数値や文字列に符号化
(code)して機能させるという、きわめて直感的な命名です。その後、一次元バーコード
は小売の標準化(商品識別コード体系)とともに広がり、医療、製造、物流へとその応用
領域を拡大しました。製造業においては、単に「品番」だけでなく、ロット、シリアル、
作業者、工程、設備、検査結果などの紐付けが重要になり、トレーサビリティ要求の高ま
りとともに利用価値が増しました。
一方で、一次元バーコードは記載する「情報量」に限界があり、面積が小さい部品や複数
情報をコードに載せたい用途には限界がありました。そこで普及したのが、QRコード
(二次元コード)です。

■□■ QRコードの歴史的経過と名前の由来 ■□■
QRコードは、1994年に日本の自動車部品メーカーである(株)デンソー ウェーブの技術
者、原昌宏(はら まさひろ)氏らによって開発されました。名称の「QR」は“Quick
Response”の略として知られ、読み取りの迅速性(現場での即応性)を志向したものでし
た。
製造・物流現場での「高速読み取り」と「大容量データ」のニーズに応えるため誕生した
縦横方向に情報を持つQRコードは多くの情報を格納でき、汚れや欠けに対する誤り訂正
機能を持つものもあります。
結果として、現場では「一次元(JAN/Code128等)と二次元(QR/Datamatrix等)」を使
い分け、工程や識別粒度に応じた設計が行われるようになりました。

ISO9001の観点で見ると、バーコード/QRの普及は単なる技術導入ではなく、箇条8.5.2
(識別及びトレーサビリティ)や、箇条8.5.1の「管理された状態」を実現するための代
表的手段になっています。とりわけ「品番取り違え」「ロット混入」「誤出荷」といった重
大リスクは、人の目視確認だけでは残留リスクが大きく、機械照合による仕組みが強く求
められるようになっています。

■□■ バーコード/QRコードの論理的発想 ■□■
コード照合の本質は、ヒューマンエラー対策としての認知負荷の削減と、誤りの受理拒否
(インターロック)にあります。人が品番やロットを目視で読むときには、次のような典
型的なエラーが起こりえます。
 ・桁・文字の見間違い(Oと0、Iと1、8とB等)
 ・似た品番の取り違え(末尾違い、枝番違い)
 ・思い込みによるスキップ(「いつもの品番」と決めつける)
 ・焦りや割込みによる確認漏れ(見たつもり・読んだつもり)
 ・転記ミス(紙への書き写し、手入力)
コード照合は、次の3要素をポイントにして、「読む、比較する、入力する」という人の弱
い部分を、読み取り(機械)+照合(システム)に置き換えます。
(1)一意識別:対象(部品・材料・製品・伝票・箱)にIDを付与する
(2)機械読取:人が文字を読まず、スキャンでIDを取得する
(3)自動照合:作業指示(期待値)とスキャン値(実績)を比較し、一致しない限り次 
  工程へ進めない
ここで重要なのが「スキャン必須化」です。単にコードを貼って任意で読ませる運用だ
と、忙しい時や慣れた人ほどスキップし、結局は目視運用に戻ってしまいます。したがっ
て、ISO9001の「管理された状態」を維持するため工程の完了条件(done)=照合OKま
では先に進めないインターロック化が要点です。
コード照合は「検出型ポカヨケ」に分類できます。誤りを物理的に不可能にするのではな
く、誤りが起きてもその場で検出し停止させる。検出型の強みは、対象が多品種でも拡張
しやすく、データが残る点です。照合ログが残れば、次の改善が可能になります。
 ・どの工程で、何の取り違えが多いか(傾向分析)
 ・どの時間帯・どの班で多いか(負荷や教育の検討)
 ・どの品番群で多いか(似た品番設計や表示改善の検討)
つまりコード照合は、単なるエラー防止ではなく、再発防止のための事実データの獲得に
も役立ちます。ISO9001でいえば、10.2(不適合及び是正処置)や9.1(監視・測定・分
析・評価)と相性がよい仕組みです。