ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」9 | 平林良人の『つなげるツボ』

2026年6月18日
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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.561 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
*** ISO9001キーワード「ヒューマンエラー」9 ***
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ヒューマンエラー防止の基本は、決められたことを決めたとおりに行うことです。
ISO9001の8.5.1 c)は、プロセス又はアウトプットの管理基準、並びに製品及びサービス
の合否判定基準を満たしていることを検証するために、適切な段階で監視及び測定活動を
実施することを求めています。ISO9001の8.5.1 c)は、g)「ヒューマンエラーを防止する
ための処置を実施する」と関連しています。

■□■工程内検査、次工程受入れ検査によるヒューマンエラー防止■□■
「工程内検査」は、製造・サービス提供の途中段階でプロセスやアウトプットが要求事項
を満たしているかを確認する活動です。ISO90018.5.1 c)の要求事項を具体化する代表的手
段です。
一方、「次工程受入れ検査」は、前工程からきた製品(半製品、情報、サービス成果物)
を後工程側が受入基準に照らして合否判断し、合格品のみを自工程に流す仕組みです。言
い換えると、「後工程はお客様」という考え方を前工程及び後工程の2つに展開したもの
です。ここで重要なのが「ゲート化」の視点です。ゲート化とは、工程節目に関所を作る
ことを言います。
 ・合格なら次へ進める
 ・不合格なら止める、隔離する、戻す、修正する
  という分岐を明確にすることです。
ゲートがない工程では不適合品が流れていきます。流れた不適合品は、次工程で発見され
た瞬間に、手戻り、ライン停止、再段取り、出荷遅延、顧客クレームへと波及していきま
す。工程内検査及び次工程受入れ検査の特徴は、まさにこの「波及」を最小化する点にあ
ります。
さらに工程内検査は「品質保証部門が最後に検査する」最終検査とは根本的に性格が異な
ります。工程内検査の狙いは工程能力の安定ですから次の観点が重要です。
 (1)異常を早期に発見する
 (2)異常が下流に流れないようにする
 (3)原因を再現性あるうちに是正する

次工程受入れ検査は、責任を明確にするということに繋がります。前工程が「作ったから
受け取る」のではなく、「基準を満たしているから受け取る」という責任を明確にする活動
をすることになります。前工程は基準を守らないと流せなくなるため、人の注意力に頼ら
ずに品質を保つという8.5.1 gヒューマンエラー防止の対策になります。

■□■ 工程内検査及び次工程受入れ検査の有効性 ■□■
工程内検査及び次工程受入れ検査がヒューマンエラー防止に有効である理由は、ヒューマ
ンエラーの性質にもあります。人のミスは、(1)起きる、(2)気づかない、(3)気づいても流
す、という三段階で重大化します。ゲート化は、このうち(2)(3)を狙って抑えます。つまり
「ミスをゼロにする」より、「ミスが起きても欠陥に大きくしない」仕組みです。「ポカヨ
ケ」がミスを起こせないという根本に手を打つのと異なり、生ぬるいのですが、人間が間
違いを起こす存在であるという本質がある限り次善の策も有効です。

「工程内検査及び次工程受入れ検査」のヒューマンエラー防止への有効性は大きく4つに
整理できます。
(1) 早期発見による被害最小化
 エラーは早く見つけるほど、影響範囲が小さい。例えば、材料投入ミスを最終検査で見
 つければ全ロット廃棄になり得ますが、投入直後の工程内検査で見つければ、止めて隔
 離し、損失を限定できます。これは品質コスト(COQ)の観点で、内部失敗コストを劇
 的に減らします。
(2)流出防止
 次工程受入れ検査は「自工程のエラー防止」です。自工程に不適合が流れてくると、作
 業者の負荷を増やし、焦りを生み、二次エラーを誘発します。流出を止めることは、品
 質だけでなく安全、納期、士気にも効きます。
(3)原因が特定しやすい
 工程内でエラーが留まると、原因はそのままになっているいることが多いでしょう。設
 備設定、材料ロット、作業者、治具、環境などの条件がその場に残っているため、原因
 究明がしやすいはずです。これが下流で見つかると原因にまで遡れず、エラー再発防止
 資源の投入が多くなります。

■□■ それでも防げないヒューマンエラー ■□■
工程内検査及び次工程受入れ検査というゲートがあるのに流出するケースは日常の活動で
経験することです。人は間違いを起こす存在であることを理解して補完策を講じることが
重要です。
(1) 検査自体の見落とし
 外観判定、感覚検査、判断を伴う検査は、疲労や慣れで見落とし、誤判定が起きます。
 限度見本、画像検査、照明条件の標準化、自動化(AI)など、検査そのものを強化し
 ます。
(2) 基準の曖昧さ
 合否判定基準を数値化しないと、曖昧な検査になります。OK/NG例を明示し、測定方
 法も標準化します。
(3) 工程を 止められない文化
 ゲートがあっても、納期や上司の圧力で、とりあえず流すことが起きます。これは仕組
 みだけでなくマネジメントの問題で、停止を評価する文化、例外承認の可視化が必要で
 す。
(4) 例外処理・特採の乱用
 特採や暫定処置が増えるとゲートは形骸化します。特採基準、承認権限、記録、再発防
 止のセット運用が不可欠です。
(5) 検査対象外の潜在不良
 工程内検査は、測っていない特性は保証できません。内部欠陥、長期信頼性、環境スト
 レスで出る不良などは、妥当性確認、工程能力管理、信頼性試験など別の管理が必要で
 す。
(6) 混入・取り違え
 ゲートで合格しても、保管・搬送で混入が起きれば意味が薄れます。識別、隔離、先入
 先出、ラベル、バーコード追跡が必要です。
(つづく)