多様性の波 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.6 ■□■
  *** 多様性の波 ***
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テクノファ代表取締役の平林です。

今回は8年続いている東京大学非常勤講師について話をさせていただき
ます。

宜しくお願いいたします。

■□■ 多様化が進む大学 ■□■

私は2002年春から東京大学大学院新領域創成科学研究科において、環境
プランニング基礎講座を担当するようになりました。実際に教えている
のは環境マネジメントシステム、ライフサイクルアセスメント、排出権
取引、環境プランニングなどです。

大学で環境関係の講座が新設されてから久しいのですが、今や全国の大
学に環境関係の講座があるといってよいと思います。

担当している学生数は年々増加していまや140人となっています。昨年の
私の担当クラスでは140人中32人が女性でしたし、留学生も10%くらいお
り、欧米、東南アジア、中南米と出身国もさまざまです。

中には、一度社会に出てまた大学に戻って研究をしているという社会人
兼学生のような方もおり、学生の多様化にはめざましいものがあります。

私のやっている講座は選択科目ですから、いろいろな専攻の生徒がきま
す。理系も文系も一緒に授業を受けています。したがって、教える内容
は理系の人が退屈しないよう、かつ文系の人が難しくないように気をつ
かっています。

学生の専攻は、昨年の例でいいますと、Sustainability Science、海洋
技術環境学、環境システム学、国際協力学、自然環境学、社会文化環境
学、先端エネルギー工学、人間環境学、複雑理工学、メディア環境など
相当に広範な人材が集まってきます。

■□■ 本郷でMOTプロジェクトがスタート ■□■

なぜ私が東京大学の非常勤講師になったか、そして今日まで8年続いて
いるのかは、大学の多様化に深く関係しています。

2002年、環境プランニング学会の板生清副会長(当時東京大学教授、NP
O法人WINの会理事長)から、文部科学省が新しいプロジェクト「MOT」を
各大学から募集をすることになった、ついては東京大学大学院としてそ
れに応募したいという話がありました。

当時、アメリカではMOT(Management Of Technology) という科学技術者
育成プログラムがMBA(Master of Business Administration)の理系版
として流行っておりました。

MOTとは、「技術に立脚する事業を行う企業・組織が、持続的発展のため
に、技術が持つ可能性を見極めて事業に結びつけ、経済的価値を創出し
ていくマネジメント」です。

株式会社テクノファでは、ISO14001環境マネジメント関連講座の多様化
の一つとして、「環境プランナー」という資格講座を当時展開しており
ました。

この講座が板生先生の目にとまり、MOTプロジェクトへの協力を要請され
たことから非常勤講師を勤めるようになりました。

■□■ 環境プランニングとは ■□■

環境プランニング学会(山本良一会長)では、組織固有の環境に関する
計画を作ることを「環境プランニング」と呼んでいます。

環境プランニングを定義すると次のようになります。
「組織の置かれている経営的、技術的、管理的な固有の状況を考慮して、
組織が地球環境の視点から長期的に取り組むべき課題を明かにし、それ
に対する対応策を計画(プラン)すること。」

世界の人口の増加に伴って世界で消費されるエネルギーは急増していま
す。この急増するエネルギーの大半は、地殻から掘り出されたものです。
人類はその繁栄の過程で、地球の地下資源を掘り出し、エネルギーとし
て又材料として大量に消費してきました。

その結果、二酸化炭素や硫黄酸化物、窒素酸化物などが大気中に排出さ
れ、大量の化学物質が水中や土壌に蓄積されることとなりました。
かつては無限と思われた地球の自然浄化能力が限界に達し、バランスの
とれた自然の循環の輪が断ち切られつつあります。

このような状況のもと、21世紀に存在する組織は環境に焦点を当てて、
自社の環境問題への取組みを明確にすることが求められています。この
取組みは、その場のその場の断片的な活動では不充分です。組織のトッ
プは長期的な方針、目標を策定し、従業員をはじめとする利害関係者に
組織の進むべき方向をはっきりさせなければなりません。

この方針、目標は、世の中で広く言われている一般的な環境情報に基づ
くスローガン的なものでは説得力はありません。「ビジョンを描くこと」
からなお一歩進めた組織固有な方針、目標を含んだ、自分たちに何が
できるか、自分たちだからこそできるという組織固有の計画(プラン)
でなければなりません。

【テクノファ環境プランナー関連講座】
http://www.technofer.co.jp/training/consulting/indexplan.html

■□■ 柏の葉キャンパス ■□■

講座を担当して3年経った2005年、東京大学の環境専攻関係のキャンパ
スは、本郷から千葉県柏に移転しました(最寄り駅:「柏の葉キャンパ
ス」(つくばエクスプレス))。その関係で新領域創成科学研究科も柏
に移動し、秋葉原から「つくばエクスプレス」に乗って約30分間電車に
揺られていくことになりました。

いまでこそ駅前に「ららぽーと柏の葉」ができましたが、移転した当時
は国立がんセンターがあるだけで駅前に何もないところでした。

学生も東京大学なのに東京じゃないと言っていました。その代わり施設
はすばらしいものです。最新の映像装置、音響装置、遠距離通信装置な
どが装備されています。

柏に来て本郷より学生の数が増えました。一クラス140人というのは東大
では大きな規模です。それだけ「環境プランニング」は人気のある講座
だといえると思います。

■□■ 今様東大生 ■□■

何も今に限らないかもしれませんが、授業で眠る学生がいます。それも
講師の目前で堂々と眠ったりしています。私の同僚の講師は「一人も眠
らせないこと」を講師信条にしています。

彼によると眠らせないコツは次のようなものだそうです。
 ・面白い話をする。
 ・考えさせる。
 ・質問をする。
 ・大きな声で話をする(眠っている学生の近くで)。

彼は一人でも眠る学生が出ると、今日は「負けた」といって落ち込みま
す。
140名もいますから大変です。私は、いろいろな学生がいていい、今は多
様性の時代だからと訳けのわからない理屈で彼を慰めています。

昨今の世界同時不況もアメリカ一極主義、多様性のなかったことが原因
の一つであると言われているのですから。

そういえば今年は名古屋で生物多様性国際会議(COP10)が開かれ
るそうです。

皆様の周りのいろんなところで多様性が確認できるようになってはいませ
んか?