■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.18 ■□■
*** 東京都検証主任試験 ***
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テクノファ代表取締役の平林です。
最近、「検証主任者講習」(東京都温室効果ガス-以下GHG:
Green House Gas-排出総量削減義務に関する)を受けました。
そして、最後に行われた修了試験に落ちてしまいました。
今回も宜しくお願いいたします。
■□■ 検証主任者講習会 ■□■
平成 20年6月25日、東京都議会において東京都環境確保条例
の改正が可決されました。これにより大規模事業所(約1400
事業所)のGHG排出総量削減義務が決定されました。
この条例は罰則の導入、排出量取引制度の採用と、国に先行し
た制度として関係者からの大きな関心が集まっています。今後、
東京都の大規模事業所はGHGの排出を抑制しながら経済活動を
行なうことになりますが、その成果はどうなるかについて更に
大きな注目が集まるでしょう。
この制度において大規模事業所は、東京都から認証登録された
第三者検証機関から排出量の検証を受ける必要があります。
排出量取引は金銭取引と同じ意味を持ちますので、大規模事業所
が算定・報告した排出量は正確であり、信頼性のあるもので
なければなりません。
東京都から認証登録された第三者検証機関は、都内の事務所に
必ず1名以上の「検証主任者」を配置しなければならないことに
なっています。
この検証主任者になるためには、東京都主催の1日講習に参加
することが条件の1つです。そして講習会の最後に行われる
修了試験に合格しないと修了証をもらえないことになっています。
■□■ 修了試験 ■□■
私は平成21年7月22日に行われた1日講習に参加しました。1日
の講習が終わり、最後に数十分の修了試験(今回は40分)が
行われるのは、いろいろな資格制度においてよく採用される方法
です。
今まで私が経験した各種資格講習の修了試験は、真面目に講習
を受けてさえいれば合格するレベルの試験でした。勿論講習中に
居眠りをしているようでは合格しません。あくまでも真摯に
講習内容を理解しておくことが必要です。
しかし、今回の修了試験は事前の推測を100%覆すものでした。
一口でいって高難度の試験でした。
1.出題範囲が広い。
出題は東京都のホームページに公開されている各種ガイド
ラインから出されました。
・総量削減義務と排出量取引制度における検証機関の登録
申請ガイドライン 32p
・総量削減義務と排出量取引制度における特定温室効果
ガス排出量算定ガイドライン 83p
・総量削減義務と排出量取引制度における特定温室効果ガス
排出量検証ガイドライン 77p
・総量削減義務と排出量取引制度におけるその他ガス排出量
算定ガイドライン 19p
・総量削減義務と排出量取引制度におけるその他ガス削減量
算定ガイドライン 58p
・総量削減義務と排出量取引制度におけるその他ガス削減量
検証ガイドライン 48p
合計300ページ以上に及ぶガイドラインを相当細かく勉強して
おかなければなりません。
この他にスライド40枚くらいの概要説明書も出題範囲とされて
います。
2.応用問題が多い。
単に記憶を試す問題は少なく、応用問題が多く出されました。
その中の1題は計算問題でした。
3.読解するに時間が掛かる。
1つの問題がけっこう長文であるので、読解するだけで時間が
掛かりました。
■□■ 落ちるとどうなるのか ■□■
8月27日、今回修了試験に落ちた人の追試がありました。参加した
人の顔ぶれを見て、びっくりしました。前回講習会に参加した
ほとんどの人がいたからです。
追試試験が終了したあと「今回の合格レベルは?」と質問が主催者
に飛びましたが、公表はしないとのことでした。
私の推測では合格は70点以上、合格率20%くらいかなという印象
です。
さて、追試の難易度についてですが、これも事前の予想に反する
ものでした。通常、追試は前回より分量が減るか、難度が下がる
ものですが、むしろ前回より難易度が上がっているという
印象を受けました。
なお主催者によると、今回落ちても10月に予定されている講習会を
受けることで何回でも検証主任者へチャレンジできるように
なっているようです。
■□■ 講習会のあたらしいスタイル ■□■
今回の東京都の検証主任者講習会は、今後の公的資格講習会に
あたらしいスタイルを導入するものとして興味のあるものです。
1.法(条例)の周知、徹底をするための戦略を策定する。
2.法(条例)を解釈のためのガイドラインを作成しホームペ
ージで公開する。
3.法に基づく行政を推進するために、執行の一部を担う検
証機関に求める要件、手順、力量を明確にする(検証機関の
登録申請ガイドライン)。
4.検証主任者に求められる要件、特に法(条例)知識、理解
の水準を明確にする。
5.検証主任者に必要とされる法(条例)理解を確認できるレベルの
試験を作成する。
6.検証主任申請者に必要とされる試験を受けてもらい一定の
水準以上の者のみに修了証を発行する。
7.検証主任申請者には修了試験を期待されるレベルに達成する
まで繰返し受けてもらう。
因みに東京都の講習会は無料です。
■□■ ISO14001審査員には新しいチャンス ■□■
東京都の検証主任者講習会で首尾よく修了証を手にしても、
それだけでは検証主任者には登録できません。
検証主任者に登録されるには過去3年に10件のISO14001第三者
審査の業務経験を持っている必要があります。2010年3月までに
登録する者には5件でよいという経過措置もあります。
検証主任者に登録するためには、ISO14001以外では次のような
業務経験でもよいとされています。
・省エネルギー診断業務:過去3年に10件
・京都議定書に基づくCDM/JI 制度のDOE における、有効化
審査業務若しくは検証業務:過去3年に10件
・試行排出量取引スキーム、国内クレジット(国内CDM)制度、
環境省自主参加型国内排出量取引制度若しくはオフセット・
クレジット(J-VER)制度における検証業:過去3年に10件