附属書SLと次期9001の改正 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.75 ■□■

*** 附属書SLと次期9001の改正 ***

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■□■附属書SLとISO9001(つづき)■□■
 フォーラムの続きです(昨年テクノファ年次フォーラムでは
附属書SLに関して、有識者の方に集まっていただいて
パネルディスカッションを行いました)。

 フォーラムの時の様子をお伝えしますが、出席者の方の発言は
平林の責任で編集させていただいています。

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中條先生(中央大学教授):
 箇条8については、単純に言うと、2008年版で書いてある内容を
 2015年版に全て引き写すのが基本的な考え方なので、
 附属書SLにないところは全部プラスになっています。

 もちろん2008年版自体に足している部分、新たに追加になっている
 要素もあります。

平林良人(テクノファ):
 箇条8に追加要素がたくさんあるということですが、例えば、
 附属書SLの8.1では6~7行しかテキストがありません。

 ここに現状のIS09001の箇条7関連の2~3ページ分のテキストが
 ずらずらと人ってくるわけですね。

 では全体のボリューム感については2008年度版と比べると
 どの程度でしょうか。

中條先生:
 全体としてみると、2008年版にあったものの8~9割は
 入ってきそうです。

 ただ部分的な増減はあります。

 また、2008年版で相当細かかった記述は、
 若干抽象化される可能性があると思ってください。

 先ほどCD版では2008年版をそのまま引き写してくると言いましたが、
 設計の妥当性確認や検証に関してはかなり抽象化した内容で
 持ってきたので、その分かなり薄くなっています。

 例えば8.5 「商品・サービスの開発」では、
 単純に「設計でやるべきこと」といってずらりとリストが書いてあって、
 そのリストの中に設計の妥当性、検証、デザインレビューなどが
 含まれています。

■□■箇条8への追加■□■

平林解説:
 箇条8は品質のオペレーションの部分で、他のMSSがそうであるように、
 ISO9001もこの箇条8には品質に固有のことを記述しています。

 主な所を抜き取ってみます。

 8.2.2「商品・サービスに関連する要求事項の明確化」は、
 2008年版7.2.1「製品に関連する要求事項の明確化」とほとんど同じ
 内容の要求事項となっています。

 「組織は,該当する場合には,
  必ず次の事項を明確にしなければならない。

 a) 顧客が特定した要求事項。これには引渡し及び引渡し後の活動に
   関する要求事項を含む。
 b) 顧客が明示してはいないが,指定された用途又は意図された用途が
   既知である場合,それらの用途に必要な要求事項
 c) 商品・サービスに適用される法令・規制要求事項
 d) 組織が必要と判断する追加要求事項のすべて」

 しかし、お気づきのように「製品」が「商品・サービス」に
 変わっています。

 今回、サービス業への配慮の視点から、productという用語は
 goods and servicesに変わりました。

 多くの方から、やはり「product:製品」という用語が
 いいという意見を聞いております。

 今後DISに向けてどのような検討がされるか注目したいと思います。

 
 8.2.4 は「顧客とのコミュニケーション」となっています。

 「組織は,次の事項に関して顧客とのコミュニケーションを図るために
 計画された方法を決定し,実施しなければならない。

 a) 商品・サービス情報
 b) 引合い,契約若しくは注文の取扱い。それらの変更も含む
 c) 苦情を含む顧客からのフィードバック(9.1 参照)
 d) 該当する場合には,顧客の所有物の取扱い
 e) 関連する場合には,緊急処置の特定の要求事項」

 附属書SLの箇条7.4「コミュニケーション」には次の要求があります。

 「組織は,次の事項を含む,品質マネジメントシステムに関連する
  内部及び外部のコミュニケーションを実施する必要性を
  決定しなければならない。

  - コミュニケーションの内容(何を伝達するか。)
  - コミュニケーションの実施時期
  - コミュニケーションの対象者」
 

 7.4と8.2.4には重複感がありますが、
 8.2.4は顧客に焦点を絞っています。

 顧客とコミュニケーションすべき項目を具体的に要求しています。

■□■箇条8への追加―つづき■□■

平林解説:
 規格は現在CDの段階ですので、まだいろいろ変わります。
 ただし、附属書SLの部分は変わりません。

 CD段階でどのような項目が箇条8にあるのかを見てみましょう。
 以下が箇条8の細分箇条も含めての項目立てです。

 8 運用
  8.1 運用の計画及び管理

 8.2 市場ニーズの明確化及び顧客との相互作用
  8.2.1 一般
  8.2.2 商品・サービスに関連する要求事項の明確化
  8.2.3 商品・サービスに関連する要求事項のレビュー
  8.2.4 顧客とのコミュニケーション

 8.3 運用計画プロセス

 8.4 外部から提供される商品・サービスの管理
  8.4.1 一般
  8.4.2 外部からの提供の管理の方法及び程度
  8.4.3 外部プロバイダーに対する文書化した情報

 8.5 商品・サービスの開発
  8.5.1 開発プロセス
  8.5.2 開発管理
  8.5.3 開発の移行

 8.6 商品製造及びサービス提供
  8.6.1 商品の製造及びサービス提供の管理
  8.6.2 識別及びトレーサビリティ
  8.6.3 顧客又は外部プロバイダーの所有物
  8.6.4 商品・サービスの保存
  8.6.5 引渡し後の活動
  8.6.6 変更管理

 8.7 商品・サービスのリリース

 8.8 不適合商品・サービス

 8.5商品・サービスの開発 から「設計:design」という用語が
消えていますが、これについては82号あたりで触れたいと思います。

以上