ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-23 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.243 ■□■    
**ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-23**
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昨年から、
ISO 9004 :2018「品質マネジメント-組織の品質-持続的成功を
達成するための指針」について話をしてきました。
とくにイノベーションについては数回を費やしましたが、今回が
ISO 9004の最終回です。
箇条11の「タイミングとリスク」そして「自己評価」について
お話しします。

■□■ 箇条11.4.3 タイミングとリスク ■□■ 

イノベーションもそうですが、物事にはタイミングがあります。
早過ぎてもいけない、遅くてはなおいけないと言われますが、
持続的成功を進めるうえで、イノベーションが早過ぎるという
ことはないでしょう。

箇条11.4.3はタイミングとリスクについて述べています。
革新にチャレンジするためには、革新の計画におけるリスク(及び機会)
を評価することが必要です。組織は,革新によって起こる
かもしれない変更を明確にし、その変更を運営管理する場合に
どのような影響がありえるのかを考慮し,必要な場合には,
(緊急時対応計画を含む)リスクを軽減する計画を準備する
必要があるとしています。

タイミングは,通常,革新が必要とされる緊急性と,革新の
展開のために利用可能な資源とのバランスを考慮して決める
ことがよいとも述べています。
革新は優先順位を付ける必要があり、実施したならば、革新を
定期的にレビューすることが必要です。このレビューが組織に
新たな学習を経験させることになり、そこから新しい組織の
知識が得られることも多いはずです。

■□■ 自己評価ツール ■□■

ISO 9004 :2018には、自己評価ツールの附属書が付いています。
この附属書は,改善及び革新の機会を特定し,優先順位を付け,
持続的成功の目標に向けての行動計画を策定するために利用
するとよいと思います。自己評価のアウトプットは,組織の
パフォーマンス及びマネジメントシステムの成熟度について、
組織の強み・弱み,関係する改善のためのリスク及び機会,
及び自己評価が繰り返される場合には,長期にわたる組織の
進捗状況を示すものとして活用することができます。

■□■ 自己評価の要素及び基準の一般モデル ■□■

TableA.1には,パフォーマンス基準が成熟度レベルにどのように
関わっているかを表形式で示しています。組織は,特定の基準に
照らしてそのパフォーマンスをレビューし,組織の現在の成熟度を
特定し,その強み・弱み,並びに関連するリスク及び機会の改善を
明確にすることが望ましいとしています。

自身より高いレベルとして与えられた基準は,組織が検討すべき
課題の理解,高レベルの成熟度に達するうえで必要となる改善を
明確にしています。

■□■ 自己評価を実施するための実施手順 ■□■

A.4には自己評価を実施するための実施手順が掲載されています。
1.自己評価の範囲を決定する。
2.自己評価の責任者を決定する。
3.自己評価をどのように実施するのか,チームによるのか個人に
よるのかを決定する。
4.組織の個々のプロセスの成熟度レベルを特定する。
次の事項によって行うことが望ましい。
- 組織の現在の状況と表に記載したシナリオとの比較
- 組織が既に実施している要素に印を付けること。レベル1
から始め,レベル3及び4、5までをチェックする。
- 現在の成熟度レベルの決定
5.結果を報告書にまとめる。これは,今後の記録となり,組織内外の
情報交換に役立たせることができる。このような報告をグラフに
することは伝達に有用である。
6.組織のプロセスの現在のパフォーマンスを評価し,改善及び/又は
革新すべき領域を特定する。

■□■ 5段階成熟度による自己評価基準 ■□■

TableA.2~A.32は,ISO 9004規格に基づいた5段階の成熟度レベルに
よる自己評価基準です。
組織の成熟度レベルは,要素ごとに異なります。レベルを規定している
要素と組織の現状とのギャップのレビューは,トップマネジメントが
個々の要素をより高いレベルに向上させるのに必要な改善及び/又は
革新活動を計画し,優先順位付けをすることに役立てることができます。
自己評価の完了は,この規格の要素に基づいて,改善及び/又は革新
のための行動計画の策定につながり,それがトップマネジメントによる
計画の策定及びレビューへのインプットとして利用されることが推奨
されます。