内部診断と内部監査5 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.259 ■□■
*** 内部診断と内部監査5 ***
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新型コロナウイルスはまだ今後の動きが見えず不安ですが、
まだ早いという方がいるかもしれませんが、終息後の世界について、
変化を注視していく必要があります。
そうした変化に備える意味でもこの機会に自組織の内部診断(内部監査)を
行ったらどうでしょうか。

前回は方針管理についてお話しをしましたが、今回は働き方改革について
お話しします。

■□■ 経営分野-働き方改革 ■□■

この「つなげるツボ」では、経営分野の診断対象の一つに「働き方改革」を上げました。
一連の法律改正は2018年6月に成立し、2019年4月から順次施行に移されていますが、
今回取り上げた理由は、新型コロナウイルス終息後の世界にこの働き方改革が
大きく関係しそうだからです。

一連の法律8項目は次の通りです。
大企業と中小企業で実施時期が異なる項目に特にご注意ください。

(1) 残業時間の「罰則付き上限規制」 大企業 適用済
中小企業 2020年4月
(2) 5日間の「有給休暇取得」の義務化 全企業 適用済
(3)「勤務間インターバル制度」の努力義務 全企業 適用済
(4)「割増賃金率」の中小企業猶予措置廃止 大企業 適用済
中小企業 2023年4月
(5)「産業医」の機能強化         全企業 適用済
(6)「同一労働・同一賃金の原則」の適用 大企業 2020年4月
中小企業 2021年4月
(7)「高度プロフェッショナル制度」の創設 全企業 適用済
(8) 3か月フレックスタイム制」が可能 全企業 適用済

■□■ 働き方改革8項目の概要 ■□■

(1)残業時間の「罰則付き上限規制」
労働者の過労死等を防ぐため、残業時間を原則月45時間かつ年360時間以内、
繁忙期であっても月100時間未満、年720時間以内にするなどの上限が設けられ、
これを超えると刑事罰の適用もあります。

(2)5日間の「有給休暇取得」の義務化
年10日以上の有給休暇が発生している労働者に対しては、会社は必ず5日の
有給休暇を取得させなければならない義務を負うことになります。

(3)「勤務間インターバル制度」の努力義務
疲労の蓄積を防ぐため、勤務後から次の勤務までは、少なくとも10時間、あるいは
11時間といった、心身を休める時間を設けることが望ましいとされ、努力義務が
設けられます。

(4)「割増賃金率」の中小企業猶予措置廃止
中小企業には適用が猶予されていた、月の残業時間が60時間を超えた場合、
割増賃金の割増率を50%以上にしなければならないという制度が全ての規模の
企業に適用されるようになります。

(5)「産業医」の機能を強化(事業主の労働時間把握義務含む)
従業員の健康管理に必要な情報の提供が企業に義務付けられ、その一環として
事業主には客観的な方法での労働時間把握義務が課されることになります。

(6)「同一労働・同一賃金の原則」の適用
正規・非正規の不合理な格差をなくすため、判例で認められてきた
「同一労働・同一賃金の原則」が法文化されます。

(7)「高度プロフェッショナル制度」の創設
年収1,075万円以上で、一定の専門知識を持った職種の労働者を対象に、
本人の同意等を条件として労働時間規制や割増賃金支払の対象外とする
制度が導入されます。

(8)「3ヶ月のフレックスタイム制」が可能に
最大で1ヶ月単位でしか適用できなかったフレックスタイム制が、
2ヶ月単位や3ヶ月単位でも適用することができるようになります。

■□■ 高度プロフェッショナル制度 ■□■

高度プロフェッショナル制度は、2019年4月1日から、企業規模を問わず
適用が開始されました。とはいえ、現実的には、年間1,075万円以上の
賃金を支払い、専門性の高い業務に従業員を従事させるのは、多くの
場合大企業に限定されるでしょう。

2018年10月31日、厚生労働省の労働政策審議会で、
高度プロフェッショナル制度を適用する5業務が示されました。

・金融商品の開発
・金融ディーラー
・アナリスト
・コンサルタント
・研究開発

これらの業務に従事する従業員がいる企業では、高度プロフェッショナル制度を
人事制度の選択肢の1つとして検討をしてみる価値があるでしょう。
上記以外の業務でも、今後適用業種が拡大される可能性は十分あります。

経営者や人事担当役員から「我が社で高度プロフェッショナル制度を導入できる
可能性があるか検討してほしい」といった対応あるいは診断を求められる
可能性もあります。