品質不祥事 1 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.374 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 品質不祥事 1 ***
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今回から品質不祥事を取り上げます。昨今の品質不祥事は、日本の
産業界において、2017年の神戸製鋼の問題から始まり、直近の日野
自動車の問題まで、5,6年継続的に続いています。実は同じような
品質不祥事の問題が2003,4年当時、食品業界を中心に社会に発覚
しました。

You Tubeで「超ISO」を検索してください。私が投稿した「品質不
祥事」4回シリーズが掲載されています。今回の品質不祥事シリー
ズでは、皆さんと品質不祥事についていろいろな側面を議論してい
きたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

■■ 20年過ぎても解決されない品質不祥事 ■■
2004年当時、品質不祥事を起こした会社の社長がテレビの前で頭を
下げる光景を何度も見てきました。そして、20年近く経った今、ま
た同じ光景を目の当たりにしています。何とかならないのでしょう
か、どうして20年もの間、問題は解決されなかったのでしょうか、
我々はISO9001規格を中心に、品質保証、品質管理の勉強をしてき
ていますが、ISO9001は品質不祥事に対しては無力なのでしょうか、
知っているという事とやれるということは違うと言いますが、まさ
しく品質不祥事はその実例と言っていいのでしょうか。

■■ 科学技術の発展と品質不祥事 ■■
我々は急速に進化するテクノロジー革命の時代に突入していますが、
デジタル化、AI、ブロックチェーン、生命科学、宇宙開発、エネ
ルギー革命などの科学進歩は著しいにもかかわらず、組織の行動メ
カニズムに関しては驚くほどに解明がなされていません。社会に存
在する組織は、それぞれが固有な文化を持ち、固有であるがゆえに
組織の文化は「組織の風土」と呼ばれて、その特質、特徴は千差万
別です。したがって、品質不祥事は組織固有の問題故に、個別事象
として扱われ、品質不祥事の共通性についての分析はあまりされて
きませんでした。

■■ 日本の社会的風土 ■■
しかし、今日の品質不祥事は、調査してみると、組織文化が多くの
品質不祥事の要因に影響していることに気が付きます。戦後の日本
は、組織の全員が自分の業務を改善するという欧米人には考えられ
ない集団主義を武器に、全社挙げての実践により日本国産業界を大
きく躍進させました。集団主義の文化には仲間と協調することが何
より大切という意識が常に根底にありました。個人が集団から離れ
た動きをすると集団からは戻るような力が働き、それでも戻らない
と村八分にされてしまうという社会文化が日本にはあると言われて
います。
文化は国ごとに特徴がありますが、個人主義文化の欧米とは異なり、
集団主義文化の日本では、品質不祥事を論じるときにはこの文化の
特質を強く意識することが必要です。仲間と協調することは正しい
方向に向かうと大きな力になりますが、誤った方向に向かうととん
でもないことになるという事をもう一度噛み締めなければなりませ
ん。

■■ 国際競争力の低下 ■■
品質不祥事は、40年余にわたる国際競争力低下の要因の一つになっ
ていると思います。品質不祥事は国全体の問題と捉えて一刻も早く
手を打たないと後日後悔することになると思います。人の行動原理
と組織文化とがからむ品質不祥事は、実験を行うことはもちろん、
組織文化を解明するデータを集めることも困難、不可能です。しか
し、「品質不祥事」を引き起こす要因は何か,どんな対応策があり得
るのか、我々は組織を注意深く観察して事実に基づく答えを見つけ
る努力をしなければならないと思います。同時に、事象の一つひと
つにとらわれずに、不祥事の全体像を俯瞰して、総合的な見地から
の現実的解決に結びつく方法論を提案する必要もあると考えます。

次回からは、産業界の内部で何が起きているのか、どんなメカニズ
ムで品質不祥事が起きるのか、なぜ内部で解決されずに外部から指
摘されて初めて対応を取ることになるのかなどを考えてみたいと思
います。