三菱電機最終報告書2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.393 ■□■
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*** 三菱電機最終報告書2 ***
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2022年10月に出された第4報第三者委員会最終報告書の説明を
しています。2021年4月に発覚した名古屋製作所可児工場製造
の電磁開閉器に使用されていた樹脂材料が、第三者認証機関
Underwriters Laboratories Inc.(UL)に承認されていたものと異な
ることが発覚したことをきっかけに、この最終報告書まで三つの
報告者が出されています(2021年10月、12月、2022年5月)。
ここに書かれていることが、三菱電機のみならず日本産業界全体
で確実に実践されていけば、日本の製造業の回復、ひいては国際
競争力のUPにつながることは必至であると思います。

■■ 三菱電機で何が起きたのか ■■
三菱電機と言えば日本の産業界を担う超一流の名門企業です。白
物家電から電動機、空調機、宇宙ロケット用製品までを製造する
企業で、就職先のランキングでは常に上位に位置しており、入社
できれば仲間から羨ましがられる大企業です。そのような名門大
企業が近年の品質不祥事発覚の企業の中に名を連ねたことは多く
の人に意外感を与えました。
いったい何が起きていたのでしょうか。

■■ 品質不正が相次いで発覚 ■■
近年、三菱電機では、その本体及び関係会社において品質不正が
相次いで発覚し、その都度、再発防止のための取組を行ってきて
いました。過去、2016年、2017年及び2018年と3度にわたり、
グループ全体を対象に品質不正を検出する点検を実施してきまし
たが、2018年の点検の後も、2019年6月には、パワーデバイス
製作所において、高耐圧用パワー半導体の一部機種につき、顧客
との間で取り交わした試験を実施していなかった事実が発覚しま
した。2020年10月には、三田製作所及び三菱電機の在タイ王国
子会社が製造していた欧州向けカーオーディオ製品の一部につき、
欧州RE指令に適合しない製品にCEマークを表示して、EU域内
に向けて出荷していた事実が発覚しました。
そして今般、2021年には可児工場が製造する製品において、UL
に認証登録したものとは異なる材料を使用していたという事実が
発覚しました。

■■ 本格的な取り組みへ ■■
このような事態を受け、社長は強い危機感から「この機会を最後に
して、徹底的に膿を出さなければならない」という指示を全社に出
すと共に、社外の有識者による第三者委員会を組織化し、三菱電
機全体における品質不正の実態調査に踏み切りました。
可児工場で発覚した問題の事実関係を調査するとともに、三菱電
機グループ全体を見据え、いまだ存在するかもしれない品質不正
を徹底的に炙り出すための取組を開始することになりましたが、
1.5年にも及ぶ長い道のりが待っているとは関係者を含めて誰も
予測できなかったことだったと思います。
このような長い調査になった点については、最終報告書を読んで
2つのことが言えると思っています。
1.1.5年にも及ぶ調査、分析を行った努力を可とする、一方、
いかに今までの調査が半端で臭い物に蓋をするレベルであった
ことの反省を今後に生かしていかなければならない。
2.日本の文化の特徴である集団主義が良い方向に発揮される場
合と、品質不正の例のように悪い方向に発会される場合とでは
結果が全く異なる。故に、経営者は日本文化の特徴を理解し経
営に良い結果が出るように組織化を運用をしなければならない。

■■ 5.5万人へのアンケート ■■
三菱電機の品質不正調査で注目するものに、フォレンジックやリ
ニエンシーなど新しい手法の活用がありますが(前号参照)、加え
て社内全員へのアンケート調査もその規模と手法に参考とすべき
ものがあります。
第三者委員会(及び三菱電機)では、可児工場を対象としたアン
ケート調査に引き続き、全従業員を対象としたアンケート調査を
実施しました。当初実施した可児工場のアンケート調査の対象と
なった従業員の数は232名でしたが、全従業員へのアンケート調
査の対象となった従業員の数は実に55,302名でした。アンケート
の回答率も90%を超えるもので、今回の三菱電機の取り組みが本
格的で従来とは全く質量の異なるものであったことを物語ってい
ます。アンケートにおいて、品質に関わる問題が「ある」と回答し
た者は、全従業員の約5%、2,200名余りでした。
アンケートで抽出された問題については、第三者委員会(及び三
菱電機)において、その内容を精査の上(中には不正とは言えな
いものも含まれていた)、必要があると思われる案件については
関係資料の精査及び関係者に対するヒアリング等の調査を行なっ
たことが報告されています。