品質不正への有効な対策2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.410 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
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*** 品質不正への有効な対策2 ***
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2023年5月9日に実施された、「JSQC TR 12-001テクニカルレ
ポート品質不正防止」講習会において出された質問についてお話
をさせていただいています。

■■ 品質不正防止講習会 ■■
当日はZOOM開催でしたので、対面での質疑応答は出来ないこ
とからチャットで質問をお受けしました。ここで扱う質問は当日
お答えした回答に加えて、私が追加させていただきたいと思う質
問に限定させていただきます。当日は全部で22件の質問が寄せ
られましたが、その内から3、4の質問を取り扱いたいと思いま
す。

【質問】
品質保証部門の適切な人事ローテーションの周期は3年だと人財
育成が難しいように思えるので、10年くらいなのかなと思いま
すが、どうでしょうか?
(注:このご質問は、品質不正が起きる要因に、品質保証部門が
機能不全を起こしている、及び「人が固定化されている」が上げ
られているからだと思います。)

■■ 人が固定化されている ■■
人の固定化に対して反対の組織行動である人事ローテーションは、
個人と組織を活性化するために無くてはならない仕組みであると
思います。
 ・組織がどのように動いているのかを知ることが出来る。
 ・ジェネラリスト(多くの分野のことを知っている人、万能家)
  を育成することができる。
 ・従業員が自分に得意な分野を探すことが出来る。
 ・広い視野を持てる。
逆に、スペシャリスト(一つの分野に得意な人、専門家)を育成
することは困難になります。
ご質問にあるように、3年では品質保証部門の人(スペシャリス
ト)を育成することは難しいと思われます。10年くらい必要であ
るとのご質問ですが、一旦同意して、次のことを考えてみたいと
思います。

■■ 品質保証部門のお仕事 ■■
それは、品質保証部門にはどんな仕事があるのかという事です。
 ・検査業務
 ・クレーム処理
 ・市場対応(お客さん要望対応)
 ・全社品質保証仕組みづくり
 ・月度品質会議事務局
 ・品質経営事務局
 ・品質データまとめ
 ・是正処置実施とフォロー
 ・初期流動管理
 ・品質保証の日常管理
 ・ISO事務局
 ・TQM事務局
思いつくまま上げてみましたので、名称からは業務の具体的な仕
事内容が分からない、重複があると言われそうです。ここで言い
たいことは、10年という長い歳月と担当する業務との関係性、
すなわちどの範囲をどのくらい深く、能力として身に付けるかの
目標の立て方により在籍年数は変わるという事です。

「人を固定する」とどのようなデメリットがあるのでしょうか、
すなわち、ローテイションをしないとどんなことが心配になるの
でしょうか。
1.総合職(ジェネラリスト)が育たない。
2.社内での人脈が出来ない。
3.全社機能の縦割り度合いが強くなり、串刺し機能が弱くなる。
等が考えられます。

さて質問の背景にある品質不正の要因の一つに「人が固定化され
ている」と不正を起こしやすくなるという事は、上記のデメリット
には上げませんでした。人の固定化は、不正を起こす要因ではなく、
不正を起こす背景に過ぎないと思います。第三者委員会報告書で説
明されている以下のことは、もう一歩掘り下げて真因に近づけてい
くべきであると思います。
-単独かつ固定化した業務体制であった。
-孤立し閉鎖的な職場環境であった。
-縦割り組織になっており、個々の組織は孤立し、属人化し、人
事の固定化が、不適切行為を長期にわたり発覚させない主要な
要因ともなっていた。
-最初に所属した職場に留まる人事制度であった。
-人事が固定化していた。
-人事ローテーションがなく、人間関係が固定化していた。
-同じ者が、長期にわたり品質管理業務を担当していた。
-縦割り文化、個人商店化、業務の属人化が要因になっていた。
(品質保証部門が機能不全を起こしている、は別途扱いたいと思い
ます。)