品質不正への有効な対策3 | 平林良人の『つなげるツボ』

—————————————————————
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.411 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** 品質不正への有効な対策3 ***
—————————————————————
JSQC品質不正防止講習会で出された質問に関してお話をしていま
す。第三者委員会報告書で説明されている次のことは、もう一歩掘
り下げて真因に近づけていくべきであると思います。

■■ 説明されている要因、原因 ■■
405号でお話ししたように品質不正防止TRで取り上げた18社の品
質不正の要因は次の8項目に集約されます。
1.コンプライアンス意識がない。(401号)
2.品質保証部門が機能不全を起こしている(402号)。
3.人が固定化され、業務が属人化されている(403号)。
4.収益偏重の経営がされている(404号)。
5.監査が機能していない。
6.工程能力がないのに生産している。
7.管理がされていない。
8.教育がされていない。
1~4は今まで扱いましたので、今回は5番目を紐といてみたいと思
います。

■■ 監査が機能していない ■■
「監査が機能していない」については、以下のような記述がされてい
ます。
-内部監査の内容や密度を決定しておらず、監査部門がリスクに着目
 した監査を行っていなかった。
-品質監査体制が脆弱であった。
-内部監査室による業務監査は、品質不正に十分に対応していなかった。
-具体的なリスクを念頭に置いた実効的な監査(ISO 内部監査,監査
 部の業務監査など)が行われていなかった。
-内部監査は不十分であった。
-内部監査は機能不全になっていた。
-全社的に監視機能が脆弱だった。

■■ 問題を問題として認識できない ■■
「監査が機能していない」という要因の背後には7つの代表的な課題
が書かれていますが、それぞれについて組織は「問題として認識して
いた」のでしょうか?
実は問題が発生して是正処置を取るステップはISO9001:2015 箇条
10.2に規定されていますが、「その不適合の原因を明確にする」とい
うことに関して「問題を問題として認識する」ことができていないと
いう現実があります。本来ならば問題と認識しなければいけないこと
が問題にされず、あとで火を噴くという事が多くみられます。10.2は
「苦情から生じたものを含め、不適合が発生した場合、組織は、次の
ことを行わなければならない。」という要求からスタートしていますが、
品質不正の実態を報告書から読むと、まず問題が発生したという事を
認識することが大変重要です。それは、目の前に起きていることを、
問題として捉えるという問題意識に関する感受性になります。

■■ 問題の認識 ■■
一般的に、問題解決への道筋として,語られているのが次のストーリ
です。
ISO9001も基本的にはこのストーリで構成されています。
■問題の発生(今後発生するかもしれない問題も含めて)
 ↓
状況の把握
 ↓
原因の理解
 ↓
対応策(応急処置、再発防止、未然防止)
しかし、端緒となる■問題はどのように認識するのでしょうか
組織が問題意識を持てない理由はいろいろありますが、最大の理由は
問題の背後要因が深く遠いところにあるからです。組織は個人の集ま
りですから、まず個々人が問題意識を持つことが必要ですが、たとえ
個々人が認識しても組織全体の問題意識にならないと行動に結びつき
ません。しかも個々人の思考形態・行動様式を左右するのはその組織
の運営(マネジメント)スタイルです。
例えば、
-内部監査は不十分であった。
-内部監査は機能不全になっていた。
-全社的に監視機能が脆弱だった。
などについて、誰かが問題だと思っても、組織運営において誰も問題
にしなければ、今すぐに被害が出る直近のことでもないのでスーッと
通り過ぎて行ってしまいます。