品質不正への有効な対策6 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.414 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
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*** 品質不正への有効な対策6 ***
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前回、問題の発生(今後発生するかもしれない問題も含めて)に続
いて行うことは、起った時の「状態」の確認、把握であると言いま
した。第三者委員会報告書に書かれている8項目の要因は、私の観
点からは要因ではなく、品質不正の起きた時の「状態」を記述して
いるのではないかと思います。

■■ 状態の把握 ■■
状態とは、読んで字の如くある状況における様態を言います。辞書
には「事物が、その時にそうなっている、ありさま」と出ています。
品質不正が起きた状態はどのようにして把握するのでしょうか。多
くの第三者委員会報告書には関係者とのインタビューによって状態
(報告書では要因と言っている)を把握したと書かれています。
「状態の把握」には、起きたことに関する周辺情報を集めることが
必要ですので、関係者のインタビューは必ず行われなければなりま
せん。しかし、特定の人のインタビューですと答える人の意識、認
識及び先入観などに拠ることになりますから、必ずしも事実を捉え
たものとは言えないリスクがあります。そこで多数の人のインタビ
ューにより、人によるバラツキを考慮に入れた把握が必要になりま
す。
例えば8項の最初に出てくる「コンプライアンス意識がない」とい
うということは、まさしく不正が起きた時、それを見逃した時、あ
るいは拡大させたときの状態を表現していると思います。多くの人
にインタビューして、当時の時を思い出していただき包括して表現
しています。

■■ 観察の必要性 ■■
事実を把握するために「観察」が必要です。これには、目で見る観
察も、科学的な測定・分析(フォレンジック:法的な証拠を見つけ
るための鑑識捜査392号参照)も含まれます。人が何を考えどうい
うつもりで何をしたか(人の思考プロセス)についても上手な「質
問」によって、どんな状況でどんなことが起きたのかを知ることが
可能になります。品質不正の代表的な状態は今まで説明してきたも
の(5項)を含め次の8項であると言えます。
1.コンプライアンス意識がない。(401号)
2.品質保証部門が機能不全を起こしている(402号)。
3.人が固定化され、業務が属人化されている(403号)。
4.収益偏重の経営がされている(404号)。
5.監査が機能していない(411号)。
6.工程能力がないのに生産している。
7.管理がされていない。
8.教育がされていない。

■■ 要因の抽出 ■■
次のステップに行きますが、それが「要因の抽出」です。要因を
抽出する基本は、「比較(何が違い、何が同じか)」と「変化(い
つから何が変わったか)」ではないかと思います。
前回、四季の変化を例に挙げて状態が時間の経過と共に変ってい
くことをお話ししました。不正が起きたときの状態を比較すると
変化を知ることが出来ます。起きた不正の状態は基準と比較して
どんなことが言えるのか、すなわち基準に照らして変化を観察す
ることで要因の抽出が出来ます。不正の状態を知るためにどんな
基準を使うか検討します。四季の変化を例に挙げれば、春を基準
にすると夏は暑い、秋は同じ、冬は寒いなどと気温の程度を比較
でき、その変化がどうして起きるのかを解明することで要因を抽
出します。変化はどんな力で起きたのかを洞察することで「要因」
が浮かび上がってきます。四季の変化で状態が変わるのは、例え
ば「地球と太陽の位置関係」であるといった具合です。水の状態
は氷、水、蒸気と変化しますが、要因は環境の温度です。