資格試験合格と職業適性 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.20  ■□■

*** 資格試験合格と職業適性 ***

——————————————————–

テクノファ代表取締役の平林です。

今回は「資格試験合格と職業適性」についてお話をしたいと
思います。

今回も宜しくお願いいたします。

■□■ ISOの審査員研修コースの合格率 ■□■

東京都検証主任者試験の合格率は20%位か?と、かつて書き
ました。これは国家資格試験並みの難関ですが、今後試験内容が
明らかになるにしたがって、徐々に合格率は上がっていくのでは
ないかと思います。

翻って、ISO審査員研修コースの合格率はどうでしょうか。

コースの種類(品質、環境、情報セキュリティなど)や、研修機関
によって当然異なりますが、海外他国の状況も含め検証主任者
試験の逆というところです。すなわち、80~90%程度の合格率
になっているのではないかと思います。

あえて極言すれば、勉強すれば合格できる試験であるといえる
ものです。審査員資格を取得すること自体は、現在の枠組み
では、それ程ハードルは高くなく、多くの人が突破できる道なの
です(当然のことながら、一生懸命勉強しなければ合格できま
せん)。

20%と80~90%の違いは、後者に5日間研修コースが試験の前段階
に用意されているところにあるのだと思います。つまり、受験前に
5日間 ISO規格の要点などを学び、質問にも懇切丁寧に答えて
もらえるという過程が存在することが大きく合格率を押し上げている
のだと思います。

■□■ 資格試験と職業適性 ■□■

現行のISO審査員資格制度では、意欲を持つ人であれば、資格取得
はまずできるのではないかと思います。

問題は、それらの方々が、たとえ優秀な方々であっても、審査員
という職業に向いているかどうかということです。

ISO審査員に求められる力量については、ISO19011などの規格
にも示されています。

現実的な言い方をすれば、勉強だけできる人では、務まらない
仕事です。質問する力、聞く力、判断する力、それも、人を相手
にした仕事です。

さらにごく限られた時間の中で、そのやり取りを相手として、
その上で、都度判断して、進めていかなければいけない仕事
です。

じっくり腰を据えて行なう仕事(例えば調査・研究業務)とは
かなり異なります。観察力、判断力、対人折衝力に加え敏捷力
などが求められる仕事なのです。

■□■ 職業適性をどうみる ■□■
審査員という職業の適性を見抜くには、残念ながら従来型の筆記
試験だけでは不足です。

そこに風穴を開けるべく、3年前よりJRCA(財団法人日本規格
協会マネジメントシステム審査員評価登録センター)では面談
形式の力量試験を取り入れました。

この力量試験、私自身も試験員として時々対応しますが、意義
深い、効果のある試験形式と思っています。

受講生が試験員(たいていの場合は講師)と1対1で、まさに審査
さながらのやり取りをする中から、適合、不適合の判断をして
いく試験です。

制度発足当初、たった10分間の面談形式の力量試験で何を見る
ことができるのか、評価できるのか、と疑問を呈する声も上がり
ました。

ですが、実際にその試験問題を作成、設定し、実施してみると、
10分間あれば、十分です。

これから審査という仕事を専門にされていく方のQMS(品質マネ
ジメントシステム)に対する理解度を含めた適性を見る、という
点では、極めて有効な試験です。

多くの方にとって、このような体験は初めてであるが故に、緊張
されるのをみて気の毒に思いますが、審査員という職業を考え
れば、実際の審査先ではこれ以上の緊張感を味わうことになります。

■□■ 面談形式の力量試験 ■□■

いざ面談形式の力量試験が始まると、その方の癖が様々な面で
表れてきます。

おとなしい性格の方、遠慮深い性格の方など、なかなか質問が
てきぱきと繰り出せずに苦労されます。

一方、思い込みの激しい方、自信満々の方などは、自分の予想
内の問答であればよいのですが、ちょっと予想外の返答が返って
くると、一気に詰まってしまわれます。

そして、中にはごく少数ですが、非常に不愉快なコミュニケー
ションをとってこられる方もいらっしゃいます。

管理職として、部下の教育などの現場でもまれてきた方、営業
経験の中で苦労されてきた方であれば決してとらないであろう
コミュニケーションスタイルをお持ちの方は、たとえどれほど
規格についての知識をお持ちであっても、サービス業である
審査員には残念ながら向きません。

そういった、様々な点がこの10分間の力量審査の中でよく見る
ことができるのです。

■□■ フォローアップ研修の必要性 ■□■

現在の力量試験を発展させると、既存の審査員のトレーニング
及び評価として面白いものができそうです。

認証機関(審査登録機関協議会:JACB)と、要員認証機関(JR
CA、CEAR、IRCAなど)、また被認証組織(各種工業会)も加え
て、自分たちに役立つ審査員トレーニング制度を作っていく必要
があります。

一番重要なことは、認証を受ける組織の声を必ず入れるように
することです。

審査は、何よりも、審査を受ける組織が、価値を見出してこそ、
存在意義があります。どのような点に価値を見出すかは、組織
によって様々です。

残念ながら、ISO審査員に組織経営の経験者はそう多くはおられ
ないと思います。そうであれば、審査員には、もっと組織経営
について知ってもらう教育をすべきです。

その上で、審査員はマネジメントシステムをどのように使い
こなすか、経営者の目線になって、その組織の審査を品質
なり、環境なり、情報セキュリティなりの分野を評価するのです。

■□■ 期待される審査員象 ■□■

経営者の目線になれることこそが、プロセスアプローチ審査
の真髄なのです。経営というプロセスを理解した上で、品質経営、
環境経営、情報セキュリティ経営などを評価するのです。

同時に、現場におけるプロセスも評価できなければなりません。
企業競争力は現場力で決まる要素を多く持っているからです。
規格要求事項の細部も決しておろそかにしない審査も一方では
大事なのです。

いってみれば、トップの視点と現場監督の視点の両方(組織
総てのプロセスの理解)を兼ね備えた審査員が必要なのです。

そのような力量を持った審査員は、現時点でももちろんいますが、
残念ながら少数です。いま、審査員の淘汰が始まっています。

優秀な審査員には、どんどん仕事が依頼される。一方、力量
不足の審査員は、いつまで経っても仕事にありつけない。

当然のことといえば当然ですが、このような期待される審査員
を如何に多く育成していくのかが、第三者審査制度を更に意義
あるものにしていく一つの道です。

もし、ご希望があれば、テクノファで、このようなことを議論
する勉強会を立ち上げてもよいと思っております。

見た目と中身 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.19  ■□■

*** 見た目と中身 ***

——————————————————–

テクノファ代表取締役の平林です。

今回は「見た目と中身」についてお話をしたいと思います。

今回も宜しくお願いいたします。

■□■ 見た目と中身 ■□■

前回お話した「東京都検証主任者講習会及びその修了試験」の
経験は、私に次のようないろいろなことを連想させました。

1.見た目と中身
2.ISOの世界の、負のスパイラル
3.資格制度の将来

今回は「見た目と中身」について考えてみたいと思います。少々、
世俗的な例から入らさせて頂きます。

皆様、若かりし頃を思い出してください(10代の読者の方が
いたらすみません)。

若い頃は、私自身もそうでしたが、日常生活の中での異性に
対する興味、話題、行動などは何といっても大きな比重を占める
ものです。その際、初めは、どうしても外見に目を向けがちでは
ありませんでしたか。

それがだんだん、成長していくと共に、そして、更には結婚を
意識するようになって、外見だけでなく、相手の内面により多く
目を向け、その人との価値観の共有といったことを重要視して
いくようになるのが一般的な例ではないかと思います。

つまり、見た目よりも中身重視に変わっていくわけです。

■□■ 見た目と違う新鮮さ ■□■

東京都の検証主任者講習は、見た目では国による法規制講習会
及び修了試験と変わるものではありません。

しかし、内容は前回お話しましたように、国による法規制講習会
及び修了試験とは一線を画すものでした。

民間に定着した「ISO14001の研修会及びその修了試験」とも
異なりますし、昨今広がりを見せている「エコアクション21」とも
異なるものでした。

世の中には各種の講習会及び修了試験がありますが、すべてが
少しづつ違う、今回の「東京都の講習会及び修了試験」は大きく
違う東京都独自の考えに基づく制度であるといえます。

このように事前の情報ではうかがい知れないコンテンツ(講習会
及び修了試験の内容)に触れたときは、新鮮な驚き、戸惑い、
期待などを覚えるものですが、それらは後の行動に圧倒的な
影響を与えます。

これは異性への見方が外観から中身にシフトしたときに感じる
新鮮さと同類のものといっていいでしょう。見た目と違う、
それぞれが違う、だからこそ引かれるのでしょうが、だからこそ
悩むのかもしれません。

■□■ すべてが少しずつ違う ■□■

見た目は同じでも、内容が違う、少しずつ違う、このことは
人についても同じことです。

先日、「横浜労災病院メンタルヘルスセンター」の山本晴義先生の
講演があるのを見つけ、約45分の短いセミナーでしたが参加して
きました。

山本先生は、国の事業の位置付けで、メンタルヘルスについて
「メール無料相談」を行っているそうです。

メールの総数は、何と年に6,000通以上。

その全てに対して山本先生本人が読んで24時間以内に必ず返
信を出すということでした。

どうやって、その時間を確保しているのか驚くほかないのです
が、何よりも、例えば金曜日に入ったメール、今、自分がこの
メールへの返答を出すのを週明けに延ばしてしまったら、
メールを出してきた人は、週末に自殺をしているかもしれない。

だからこそ、すぐに返信を出さなければならない、という話には
ドキッとするものがありました。

しかも、一つひとつの内容が全部違うから、当然返事は総て違
う。

■□■ 見た目と中身のギャップ ■□■

「メールは、返信を出さない限り相手は無視されたと感じる。
これがメンタルヘルスの基本なのです。」という説明にも、
大いに頷かされるものがありました。

加えて、働く人にとってのメンタルヘルスとは、
1.周囲と良い関係ができている
2.周囲の人たちに役に立っている
3.仕事など日々の活動に生きがいを感じる
4.自分の存在意義を感じる

で、特に2、4が重要との説明でした。

こちらも、大いに頷くと共に、深く考えざるを得ないものがあ
りました。

働く人のメンタルヘルスは、見た目と中身のギャップに注意す
る必要があります。
1.自分では周囲と良い関係ができている、と思っているが
そうではない。
2.周囲の人たちに役に立っている、と思っているがそうで
はない。
などです。

最近のIT系企業のように、社員は客先に継続駐在していて上司
とのフェース・トゥー・フェースのコンタクトは殆どない状況
は、非常に心配であるという趣旨の話も出ました。

東京都検証主任試験 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.18  ■□■

  *** 東京都検証主任試験 ***

——————————————————–

テクノファ代表取締役の平林です。

最近、「検証主任者講習」(東京都温室効果ガス-以下GHG:
Green House Gas-排出総量削減義務に関する)を受けました。
そして、最後に行われた修了試験に落ちてしまいました。

今回も宜しくお願いいたします。

■□■ 検証主任者講習会 ■□■

平成 20年6月25日、東京都議会において東京都環境確保条例
の改正が可決されました。これにより大規模事業所(約1400
事業所)のGHG排出総量削減義務が決定されました。

この条例は罰則の導入、排出量取引制度の採用と、国に先行し
た制度として関係者からの大きな関心が集まっています。今後、
東京都の大規模事業所はGHGの排出を抑制しながら経済活動を
行なうことになりますが、その成果はどうなるかについて更に
大きな注目が集まるでしょう。

この制度において大規模事業所は、東京都から認証登録された
第三者検証機関から排出量の検証を受ける必要があります。
排出量取引は金銭取引と同じ意味を持ちますので、大規模事業所
が算定・報告した排出量は正確であり、信頼性のあるもので
なければなりません。

東京都から認証登録された第三者検証機関は、都内の事務所に
必ず1名以上の「検証主任者」を配置しなければならないことに
なっています。

この検証主任者になるためには、東京都主催の1日講習に参加
することが条件の1つです。そして講習会の最後に行われる
修了試験に合格しないと修了証をもらえないことになっています。

■□■ 修了試験 ■□■ 

私は平成21年7月22日に行われた1日講習に参加しました。1日
の講習が終わり、最後に数十分の修了試験(今回は40分)が
行われるのは、いろいろな資格制度においてよく採用される方法
です。

今まで私が経験した各種資格講習の修了試験は、真面目に講習
を受けてさえいれば合格するレベルの試験でした。勿論講習中に
居眠りをしているようでは合格しません。あくまでも真摯に
講習内容を理解しておくことが必要です。

しかし、今回の修了試験は事前の推測を100%覆すものでした。
一口でいって高難度の試験でした。

1.出題範囲が広い。
 出題は東京都のホームページに公開されている各種ガイド
ラインから出されました。
  ・総量削減義務と排出量取引制度における検証機関の登録
   申請ガイドライン 32p
  ・総量削減義務と排出量取引制度における特定温室効果
   ガス排出量算定ガイドライン 83p
  ・総量削減義務と排出量取引制度における特定温室効果ガス
   排出量検証ガイドライン 77p
  ・総量削減義務と排出量取引制度におけるその他ガス排出量
   算定ガイドライン 19p
  ・総量削減義務と排出量取引制度におけるその他ガス削減量
   算定ガイドライン 58p
  ・総量削減義務と排出量取引制度におけるその他ガス削減量
   検証ガイドライン 48p
  
 合計300ページ以上に及ぶガイドラインを相当細かく勉強して
おかなければなりません。
この他にスライド40枚くらいの概要説明書も出題範囲とされて
います。

2.応用問題が多い。
 単に記憶を試す問題は少なく、応用問題が多く出されました。
その中の1題は計算問題でした。

3.読解するに時間が掛かる。
 1つの問題がけっこう長文であるので、読解するだけで時間が
掛かりました。

■□■ 落ちるとどうなるのか ■□■

8月27日、今回修了試験に落ちた人の追試がありました。参加した
人の顔ぶれを見て、びっくりしました。前回講習会に参加した
ほとんどの人がいたからです。

追試試験が終了したあと「今回の合格レベルは?」と質問が主催者
に飛びましたが、公表はしないとのことでした。

私の推測では合格は70点以上、合格率20%くらいかなという印象
です。

さて、追試の難易度についてですが、これも事前の予想に反する
ものでした。通常、追試は前回より分量が減るか、難度が下がる
ものですが、むしろ前回より難易度が上がっているという
印象を受けました。

なお主催者によると、今回落ちても10月に予定されている講習会を
受けることで何回でも検証主任者へチャレンジできるように
なっているようです。

■□■ 講習会のあたらしいスタイル ■□■

今回の東京都の検証主任者講習会は、今後の公的資格講習会に
あたらしいスタイルを導入するものとして興味のあるものです。

1.法(条例)の周知、徹底をするための戦略を策定する。

2.法(条例)を解釈のためのガイドラインを作成しホームペ
  ージで公開する。

3.法に基づく行政を推進するために、執行の一部を担う検
  証機関に求める要件、手順、力量を明確にする(検証機関の
  登録申請ガイドライン)。

4.検証主任者に求められる要件、特に法(条例)知識、理解
  の水準を明確にする。

5.検証主任者に必要とされる法(条例)理解を確認できるレベルの
  試験を作成する。

6.検証主任申請者に必要とされる試験を受けてもらい一定の
  水準以上の者のみに修了証を発行する。

7.検証主任申請者には修了試験を期待されるレベルに達成する
  まで繰返し受けてもらう。

因みに東京都の講習会は無料です。

■□■ ISO14001審査員には新しいチャンス ■□■

東京都の検証主任者講習会で首尾よく修了証を手にしても、
それだけでは検証主任者には登録できません。

検証主任者に登録されるには過去3年に10件のISO14001第三者
審査の業務経験を持っている必要があります。2010年3月までに
登録する者には5件でよいという経過措置もあります。

検証主任者に登録するためには、ISO14001以外では次のような
業務経験でもよいとされています。
 ・省エネルギー診断業務:過去3年に10件
 ・京都議定書に基づくCDM/JI 制度のDOE における、有効化
  審査業務若しくは検証業務:過去3年に10件
 ・試行排出量取引スキーム、国内クレジット(国内CDM)制度、
  環境省自主参加型国内排出量取引制度若しくはオフセット・
  クレジット(J-VER)制度における検証業:過去3年に10件

BCMS | 平林良人の『つなげるツボ』

———————————————————-
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.17  ■□■
   *** BCMS ***
———————————————————-

テクノファ代表取締役の平林です。
最近「BCMS」という言葉を耳にします。
今回も宜しくお願いいたします。

■□■ 「BCMS」とは ■□■

BCMSは“Business Continuity Management System”の略で、
日本では「事業継続マネジメントシステム」と呼ばれています。

その中核にあるのは、BCPです。“Business Continuity Plan”
の略で「事業継続計画」と呼んでいます。事業継続計画は、
何らかの不測の事故、災害などにより組織の工場、施設、情報網
などが打撃を受けても、事業を中断させないか、又は中断した
場合には早急に回復させるための計画です。

もちろん即刻100%の状態に復旧させることは困難です。被害の
程度によって、またどんな原因による事業停止なのかによって
打つ手は変わってきます。

事故、災害などから被害を受けた事業所の操業度(製品供給量
など)はその時点で急落し、被害が大きい場合には操業不能な
状況に陥ります。

事故、災害などの発生から時間がたつにつれて操業度は回復して
いきますが、回復時間が長くなればなるほど損失は大きくなって
いきます。

平穏な時に、事故、災害などを想定しておいて、起きたときの
手の打ち方をマネジメントシステムとして構築しておこうと
いうものです。

■□■ BCP規格 ■□■ 

ISO/TC223社会セキュリティ(Society Security)では、総ての
組織を対象に、自然災害、テロなどから組織を守るための危機
管理、事業継続に関する国際統一規格を検討しています。

WG1/TG1(Working Group1/Task Group1)においては、緊急事態
準備としてのBCPに関する規格を開発中です。

TC223では既に、ISO/PAS22399(社会セキュリ
ティ 緊急事態準備と業務継続マネジメントガイドライン)を
2007年11月に発行済みです。

BCPに含まれる項目としては次のものが上げられています。
1.リスクの想定
 リスクは組織ごと異なるため、自ら想定する。
 (例)鳥インフルエンザ;養鶏業者、自然災害(地震、台風)、
 新型インフルエンザ、人的災害(ミス、事故)、犯罪(テロ、
 愉快犯)ほか
2.影響分析
 ビジネスインパクト、人的安全、設備被害、ボトルネックの
 特定、信用・契約への影響
3.コア業務の選定
 組織/事業として、どの業務を優先して継続しなければなら
 ないか
4.事業継続のための計画の立案
 復旧目標時間の設定、指揮命令系統の整備、連絡体制の確立、
 情報インフラの整備、調達計画の策定など
5.実施可能な体制整備
 対策のマニュアル化、BCP担当者の育成
6.継続的改善
 内部監査などにより不備の発見、対策実施、改善歯止め

■□■ BCP国際規格の企業への影響 ■□■

組織(一般企業)へのBCP国際規格の影響については、経済産
業省産業技術環境局基準認証ユニットの勉強会で次のような
可能性があると指摘しています。

1.グローバルサプライチェーンの中でBCPの策定が商取引の
 条件になる可能性
2.BCPの策定状況を公表することで組織の価値に格差が生じる
 可能性
3.ステークホルダーからの策定要求が生じる可能性
4.本社機能、工場の代替を確保する、事業部の序列化などの
 制度導入を余儀なくされる可能性
5.既に策定済みのBCPを国際規格に整合させられる可能性

■□■ BCMS関連セミナーのご案内 ■□■

テクノファでは、BCMS審査員資格拡大研修コース(TT18)を開催
しています。そのコースはIRCA承認申請中で、コースの詳細は
下記をご覧下さい。
http://www.technofer.co.jp/training/isms/tt18.html
至近の開催日程には、2009年9月20日(日)~22日(火)、
2009年10月13日(火)~15日(木)があります。

■□■ BCPの成功事例 ■□■

BCPの策定をしていて効果を発揮した事例を紹介します。2007年
の中越沖地震の発生において、BCPの策定が効果を上げた例
です。2004年の地震を経験してBCPを作成した事がきっかけ
だったとのことです。

BCPは大企業を中心に整備が進められていますが、下記事例
に示すような中小企業においても取り組みを進められ成果を
上げています。

<金型加工メーカー 米谷製作所 (新潟県柏崎市)の例>
1.被害の概要
 棚の転倒などがあったが、事前対策の効果もあり、機械転倒な
 どの大きな被害はなし
2.事前の対策
 工場や大型機械の基礎強化
 ノウハウ継承を目的としたパソコンでの情報共有マニュアルを
 整備
 設備復旧などの情報の共有、防災勉強会の開催
3.災害時の対応
 発災当日は、物が散乱する中、避難路を確保し、全員の安全
 確認
 翌日には出社可能な職員による復旧作業
4.効果・評価など
 発災翌日の午後には、生産を再開し、出荷を開始
 新潟県や経済産業省も、BCP普及の弾みになるなどとして高く
 評価
 (出典:日本経済新聞 2007年7月19日)

是正処置 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.16  ■□■
 
   *** 是正処置 ***

———————————————————-

テクノファ代表取締役の平林です。

ISO9001:2008規格には、8.5.2という箇条に「是正処置」の要求
があります。

今回も宜しくお願いいたします。

■□■ 8.5.2「是正処置」とは ■□■

ISO9001規格を知っている方にはいまさらながらの話ですが、
そうではない方のために「是正処置」とはどんなことをいうのか
簡単に話させていただきます。

日本語で「是正」というと、「間違ったことを直す、修正すること」
を意味するのが普通です。

しかし、ISO9001においては上記の意味は「修正」という言葉で
定義されており、是正処置は「原因を除去すること」を意味します。

ISO9001規格に用いられる用語が、我々が日常使用する用語と
意味が異なることは、この「是正処置」に限らず他にも多く存在
しており、ISO9001を普及させる上での一つの課題であると思い
ます。

しかし、この課題は別の機会に譲るとして今回は「原因を除去
すること」とは、どのようなことをいうのか考えてみたいと思い
ます。

■□■ 原因とはなにか ■□■ 

総ての「事象」には何らかの原因が存在しています。原因とは、
事象を引き起こすもとになった「できごと」のことをいいます。

どうしてそのような結果事象になったのか、それを決めている
原因(できごと)は一つではありません。幾つかのいろいろな
原因が重なり合って一つの事象を起こしていると考えられます。

日常のちょっとした小さなできごと(火種)は、それが見逃さ
れ、適切に処置されずに成長・拡大して遂に好ましくない事象
になります。

原因には、火種原因、見逃し原因、拡大原因などがあり、さらに
原因の連鎖の見方から、直接原因、間接原因、遠因、誘因、
根本原因などと分類されます.

ここで重要なことは、一つの事象を巡る原因にはいろいろなもの
があり、その組み合せ方により結果が変わってくるということです。

さらに、火種原因から起きる事象は小さなものですが、見逃し
原因、拡大原因を経ると段々に大きな事象を起こすことになって
いきます。

1986年に起きた旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所の臨界事故
の原因の数は、その後の調査により100にも及ぶということです。

100の原因のうち1つの原因でも当時除去されていれば、あの
ような大きな事故にはならなかったでしょう。

このように原因にはいろいろなレベルのものがあり、原因の組み
合わせにより起きる事象の大きさは異なるということです。

■□■ 不適合とは ■□■

ISOでは要求事項を満たしていないことを「不適合」と呼びます。
ISOでは不適合が起きればかならず原因となる「できごと」が
あるはずであり、それらを除去することで再発を防止できると
考えています。

しかし、原因となる「できごと」にはいろいろありますから、
それらを網羅的に、しかも根本原因までを明確にし、除去する
ことは簡単ではありません。

そのような背景から、8.5.2「是正処置」では「起きた不適合の
影響の大きさに見合う形での原因除去」でいいといっています。

すなわち、起きた不適合が組織に小さな影響を与えるような
場合は、除去する原因も火種原因のような初期段階のものでよい
でしょう。

逆に起きた不適合が重大な影響を与えるような場合は、根本原因
を探し出しそれを除去することが大切です。

根本原因を把握するには、よく「whyを5回繰返す」ことが
よいといわれます。

■□■ whyを5回繰返す ■□■

「whyを5回繰返す」は、トヨタ生産方式で問題の再発防止を
実行するときに推奨された方法です。

「whyを5回繰返す」例を以下に掲げます。ここでは
施盤の切削効率がここ1~2日落ちた、という事象について
whyを5回繰返えしてみます。

1.刃物に潤滑油が回っていなかった。
なぜ

2.潤滑油ポンプが稼動していなかった。
なぜ

3.フィルターが目づまりしていた。
なぜ

4.フィルターに切紛がつまっていた。
なぜ

5.フィルターを交換していなかった。

上記の例は技術的な事象についてですが、管理的な事象の例を
以下に掲げます。

手順書に決まっていることを実施していなかった。

1.作業者が忘れていた。
なぜ

2.忙しかった。
     なぜ
      ↓
3.前の仕事が遅れていた。 
     なぜ
      ↓
4.一日の仕事量が念頭になかった。
なぜ

5.気持ちが仕事に向いていなかった。

このように技術的な課題はwhyを5回繰返すことで比較的楽に
根本原因に近づくことができるのですが、管理的課題はwhy
を5回繰返しても根本原因に行き着くことが難しいケースが多い
ようです。

■□■ 是正処置では根本原因を取り除く? ■□■

ISO9001:2008規格では、「組織は,再発防止のため,不適合の
原因を除去する処置をとること。是正処置は,発見された不適
合のもつ影響に見合うものであること。」とされています。

上記記述の意味ですが、途中の原因すなわち「事象の起きたプ
ロセスのどこかの原因」に対する処置でも原因を除去したもの
と考えられます。

したがって、組織がとる是正処置は必ずしも根本原因に対して
ばかりではないと考えられます。

しかし、何の原因も除去しないのでは、組織はISO9001に適合し
たシステムを運用できているとはいえません。何らかの原因を
除去することが必要です。