ISO9001キーワード リーダーシップ | 平林良人の『つなげるツボ』

2025年5月7日
————————————————————————-
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.508 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ISO9001キーワード  リーダーシップ ***
————————————————————————-
今回からISO9001キーワード「リーダーシップ」についてお話をいたします。
組織を活性化するためにはいくつかの要素が必要になります。例えば、組織の目
的が明確になっている、扱っているコト/モノが時代に合っている、組織を構成
する人々の志が高い、組織の向かう所が明確になっている等が思い付きます。
ISOマネジメントシステムでは、箇条5「リーダーシップ」において以下のよう
な要求をしています。

■■  5 リーダーシップ  ■■
ISO共通テキスト(附属書SL)において、リーダーシップに関しては以下の3つ
の箇条があります。
 5.1 リーダーシップ及びコミットメント
 5.2 方針
 5.3 責任及び権限
これら3箇条の中で内容が多岐にわたっていて、内容についてもいろいろな見方
ができる5.1を取り上げたいと思います。

5.1 リーダーシップ及びコミットメント
トップマネジメントは,次に示す事項によって,XXXマネジメントシステムに関
するリーダーシップ及びコミットメントを実証しなければならない。
-XXX方針及びXXX目的を確立し,それらが組織の戦略的な方向性と両立するこ
 とを確実にする。
-組織の事業プロセスへのXXXマネジメントシステム要求事項の統合を確実にする。
-XXXマネジメントシステムに必要な資源が利用可能であることを確実にする。
-有効なXXXマネジメント及びXXXマネジメントシステム要求事項への適合の
 重要性を伝達する。
-XXXマネジメントシステムがその意図した結果を達成することを確実にする。
-XXXマネジメントシステムの有効性に寄与するよう人々を指揮し,支援する。
-継続的改善を促進する。
-その他の関連する役割が,その責任の領域においてリーダーシップを実証する
 よう支援する。

■■ 誰が何をしなければならないのか ■■
箇条5.1はトップマネジメントが組織において行うべきことを要求していますが、
要求事項の6番目には次の記載があります。

-XXXマネジメントシステムの有効性に寄与するよう人々を指揮し,支援する。

この記載にある「人々を指揮し,支援する」とはどのようなことを意味している
のでしょうか?このような質問をしますと、多くの方が怪訝な表情を浮かべます。
そして、リーダーシップは力強く、叱咤激励して進む方向を明確にすることであ
る、陣頭に立って指揮を執ることである、そんなことは常識であり、改めて聞く
ことの意味が分からない、と言います。
確かに、戦国時代の武将のイメージでリーダーシップが語られた昭和の時代にお
いては、そのとおりのイメージが社会の通念であったと思います。しかし、平成、
令和と時代が変わり多くの人がそれぞれの考えを持ち、それぞれ異なる能力を誇
示する時代のリーダーシップは、もはやそのような力強いイメージは大分薄れて
きていると思います。
例えば、能力のある人がモチベーション高く業務を推進している場面において、
「目標通り進められていますか」と声を掛けたらどうなるでしょうか。自分は信
用されていない、日ごろの言動を見てもらえていない、上司の目は節穴だ、だか
ら評価が悪いに違いないなど、声をかけた上司には思ってもみなかったことを惹
起させてしまうかも知れません。

■■ 分散化リーダーシップ ■■
インターネットが世に現れて50年位が経ちました。インターネットはもともと軍
事用のバケット通信から生まれ、いまやSNSには無くてはならないものになりま
した。その恩恵には大きなものがあり、個人が自分の判断で個別にネットワーク
を作ることができ、50年前には考えられなかった豊富な情報を手に入れることが
できる時代になりました。
SNSの人々に与える影響には多大なものがあり、良きにつけ悪しきにつけ多様化
は避けて通れません。多様性はリーダーシップのあり方にいろいろな影響を与えて
います。かつてのように一糸乱れずリーダーを先頭に戦いを挑むイメージから多く
にリーダーがそれぞれの持ち場において自分の力を存分に発揮して戦うイメージに
変わってきています。

ISO9001キーワード コミュニケーション7 | 平林良人の『つなげるツボ』

2025年4月30日
————————————————————————-
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.507 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ISO9001キーワード  コミュニケーション7 ***
————————————————————————-
ISO9001キーワード「コミュニケーション」についてのお話を6回にわたってし
てきましたが、今回は最後のキーワード「コミュニケーション」についてです。
要求事項がどう変わってきたかをお話ししてこのキーワード連載の締めにします。

■■  標準の最新化  ■■
現在使われているJIS9001:2015規格の前身はJIS9001:2008規格です。ISOでは
原則5年に一度見直しをすることになっていますが、実質的には10年あるいは
それ以上の期間がかかっています。2025年の現在もISO9001規格の見直しが進
んでいて、次期改正は2026年になる予定です。なぜこのような話をしたかと言
いますと、標準化の性質に根ざした本質的なことを確認したかったからです。組
織においては一度ルールを決めるとそれへの準拠が求められますが、いつの間に
かルールそのものが実態に合わなくなっているということが多くあります。
そのため組織の標準は定期的に見直ししなければなりませんが、そのことをISO
マネジメントシステムでも要求しています。そのISO規格自身も最新化している
わけですが、どんな最新化が行われているのかを「コミュニケーション」でお話
ししたいと思います。

■■  JIS9001:2008規格  ■■
JIS9001:2008規格においてのコミュニケーションの要求は「5.5.3 内部コミュ
ニケーション」というところに在りました。要求事項は次のように簡単なもので
した。「トップマネジメントは,組織内にコミュニケーションのための適切なプロ
セスが確立されることを確実にすること。また,品質マネジメントシステムの有
効性に関しての情報交換が行われることを確実にすること。」
当時はこの要求事項を組織全体のコミュニケーションと読めることから、「方針
説明会とか職場の朝会とか、あるいは各種会議など」をコミュニケーションの内
容として社内で規定して維持するという組織が多かったように思います。
「方針説明会とか職場の朝会とか、あるいは各種会議など」でしたら、多くの会
社で日常的に行っていることで、特に目新しいことではなく組織では抵抗なく規
定していったと思われます。

■■  JIS9001:2015規格  ■■
次に発行された2015年版での要求事項はがらりと変わって次のようなものにな
りました。

7.4 コミュニケーション
組織は,次の事項を含む,品質マネジメントシステムに関連する内部及び外部の
コミュニケーションを決定しなければならない。
a) コミュニケーションの内容
b) コミュニケーションの実施時期
c) コミュニケーションの対象者
d) コミュニケーションの方法
e) コミュニケーションを行う人

どうでしょうか?どうしてこんなにコミュニケーション要求事項が変わったので
しょうか。まさしく経営環境が変わって最新化されたからです。2015年版でa)
~e)と具体的な記述になった背景としては、世界的にコミュニケーションの重要
性が組織の中で高まったからでしょう。この頃からEUでは人材から人財へ、す
なわち人を資源として観るのではなく資本として観るような動きが顕著になって
います。人を資源として観るとなるべく少なく、安く、効率的に扱う(扱うとい
う言葉は不遜ですが・・・)ということなりますが、資本としてみるとなるべく
多く、高く、効果的に扱うということになります。この動きが人的資本という表
現になり、上場会社の人的資本開示の義務化ということに繋がってきました。EU
では2010年頃、アメリカでは2018年頃、日本は一番遅く2023年に義務化がさ
れました(金融庁及び東証)。

■■ コミュニケーションはどうあるべきか ■■
このような背景においては人に対する考え方を変えていかなければならず、その
過程におけるコミュニケーションは従来にも増して重要なものになってきたと言
えます。もっとも、日本では人を資本としてみることは古くから多くの企業で行
われてきていましたので、目新しいことではなかったかもしれません。
ここで改めてa)~e)の要求事項を眺めてみると容易なことではないと個人的は思
います。
というのは、a)~e)は大きく分けて会社全体、グループ、個人の3つ位に分けて
考えなければ実効性がないと思われるからです。
私の個人的な考えを申すならば、会社全体のコミュニケーションでしたらa)方針
など、b)年度初め、c)全員、d)方針大会(リアル/ネット)/社内報、e)社長となる
でしょう。グループでしたらa)目標など、b)4半期ごと、c)グループ全員、d)会議
など、e)グループ長となるでしょう。個人でしたらa)業務進捗、悩み事など、
b)毎月、c)個人、d)ワンonワン、e)上司となるでしょう。

ISO9001キーワード コミュニケーション6 | 平林良人の『つなげるツボ』

2025年4月23日
————————————————————————-
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.506 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ISO9001キーワード  コミュニケーション6 ***
————————————————————————-
前回は人間の自己防衛本能がコミュニケーションに影響を与えているということ
をISO9001箇条7.4「コミュニケーション」と関連させて話をいたしました。
その話の展開において、自己防衛本能は無意識な頭脳の働きであると説明しまし
たが、人間の体にも(もちろん無意識な)自己防衛機能があります。

■■  免疫  ■■
それは人間の体を細菌などから守る免疫(immunity)です。例えば、白血球は自
分の細胞と違う異物(抗原)を見分け、それを取り除こうとします。医学の世界
では、自分の細胞のことを自己(じこ)、自分ではない異物のことを「非自己(ひ
じこ)」と呼んでいます。
心の世界では自分に合わないことはストレスになりますので「非自己」であり、
それを無意識に排除しようとする結果、非自己とはコミュニケーションを取るこ
とが弱くなる、または取れなくなります。

外部からの細菌やウイルスの体への攻撃は免疫によって守られますが、細菌とウ
イルスは違います。細菌は単独で体の細胞に取り付き増殖して体にダメージを与
えますが、ウイルスは単独では増殖できません。ウイルスは人間の体の表面を覆
う皮膚や粘膜(鼻やのどの奥、消化管、生殖器など)から侵入し、人間の細胞に
入り込んで細胞を乗っ取り、その中で増えます。
免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」の2つがありますが、具体的には以下のよ
うな働きをしてくれています。
 ・体の外から侵入したウイルスや細菌などから体を守る
 ・体内の老廃物や変異をした細胞(がん細胞など)を処分・排除する

■■  自然免疫 ■■
自然免疫は、人間体に生まれつき備わっている免疫の仕組みです。免疫細胞が異
物である病原体などをいち早く認識し、攻撃・排除します。ウイルス、寄生虫、
細菌への対応のほか、老廃物や変異をした細胞の排除なども自然免疫による作用
です。自然免疫として認識されているものには以下のような免疫細胞があります。
 (1)好酸球:白血球の一種で寄生虫や細菌を排除する。
 (2)好中球:白血球の一種で処理した細胞を殺菌する。
 (3)マクロファージ:侵入した異物を処理する(食べる)。

■■   獲得免疫   ■■
自然免疫はウイルスの種類や細菌の種類を問わずに働きますので、最前線の防御
システムといえます。しかし、これでも万全ではない時には獲得免疫が働きます。
獲得免疫は、自然免疫で処理しきれなかった異物に対応する免疫システムです。
自然免疫で対応しきれない小さな異物や、すでに細胞に入り込んでしまった異物
を取り除く働きがあります。
獲得免疫には一度侵入した異物の情報を記憶できるという特徴があり、この「免
疫記憶」により、再び同じ異物が侵入したときにはより早く対処できるようにな
ります。ワクチンなどはこの免疫記憶の仕組みを活用したものです。

■■  免疫と自己防衛機能  ■■
免疫と自己防衛機能の目的は同じです。すなわち、自分自身を外敵から守ろうと
することでは全く同じです。しかし、外敵から自分の身を守ろうとするプロセス
は異なります。
免疫は自分の力で外敵と戦おうとしますが、自己防衛本能は外敵と戦おうとせず
に身をすくめて敵をやり過ごそうとします。免疫は相手(外敵)とコミュニケー
ションは一切取りません。食うか食われるかの戦いなのでコミュニケーションど
ころか攻撃一辺倒です。それに対して自己防衛機能は攻撃と見えても、実は身を
守ろうとする余りの裏返しの行動です。自分の弱いところを隠そうとする余りに
相手から見ると攻撃的にみえる本能的な行動です。
人間の免疫力(攻撃力)を高めるにはバランス取れた食生活、規則正しい生活を
することが一番良いと言われていますが、これは科学的に免疫本来の機能を強化
する方法として解明されているものです。
自己防衛機能も同じことで、自身の弱いところを強化することが自己防衛機能を
高めることになります。そのためには自分を知ることですが、自己分析を適切に
行うことはなかなか難しいことです。
免疫力が高ければ有害なウイルスや細菌などにいち早く対応して、健康維持に繋
がり長寿命を得ることができます。自己防衛機能が適切であれば(自分を知って
いれば)コミュニケ―ション能力は上がり、良好な人間関係を築くことができま
す。

ISO9001キーワード コミュニケーション5 | 平林良人の『つなげるツボ』

2025年4月16日
————————————————————————-
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.505 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ISO9001キーワード  コミュニケーション5 ***
————————————————————————-
人間には自己防衛本能があります。ISO9001箇条7.4には「コミュニケーション」
という要求事項がありますが、この自己防衛本能はコミュニケーションに大きな
影響を与えています。自己防衛本能は誰にでも備わっているもので、相手から身
を守ろうとする無意識な頭脳の働きです。

■■  自分を守るには  ■■
日本国は1990年にバブルを経験した後なかなか復活できず、ついに「失われた
30年」と言い出し、自分たちを自虐的に表現するようになってしまいました。社
会的、経済的にも国際競争力を年々落としてしまい、その元凶は、日本人がチャ
レンジしなくなり、イノベーションを起こすことができなくなったからだと自分
たちを反省、批判するようになりました。最近は会社でも「失敗を恐れるな、チ
ャレンジをしろ」とよく言われるようになりました。しかし、こうした仕事の環
境下では本能的に自己防衛力が働き、コミュニケ―ションもネガティブなものに
なる傾向が強まります。
自己肯定感が低い人ほど相手が思っている以上に物事を重く受け止め、つい相手
への対応が否定的なものになります。この否定的な対応は自分を低く置いて、相
手を持ち上げているものですが、相手から見るといつもより攻撃的だと感じさせ
てしまう場合もあります。

■■ チャレンジをしろ  ■■
チャレンジしろ、挑戦をしろという言葉には意識していなくても相手を攻めるニ
ュアンスを含んでいます。
失敗は自分の評価を低めることになりますから、誰しも失敗するか、成功するか
を考えた時、多くの場合「やらない」ということになります。その背景には、失
敗すると責任を取らされるという現実があります。したがって、「チャレンジしろ、
挑戦をしろ」ということを言うならば、その前提として、失敗しても次へのチャ
レンジが許されるという組織風土が無ければなりません。この再挑戦という組織
風土を作っていくためには、組織内のコミュニケーションが大変重要になります。

■■  自己防衛力を弱める  ■■
組織内コミュニケーションを効果的にするためには、個人の自己防衛力を弱める
とよいと思います。自己防衛力が強いと、自分を守ることに心が向いてしまい、
本来目を向けなければならないことに焦点が絞られません。弱いと自覚している
部分(例えばチャレンジしない)に心が向くと、自分を守ろうとする力が自分自
身を動けなくさせてしまうからです。
特にストレスが溜まっている時、あるいは何かにこだわりを持っているときには、
なおさらに自分の心を守るために自己防衛力が強くなります。
自己防衛が強い自分を自覚して、どうしたらそれを乗り越えられるかを考えると
よいと思います。
まず、ストレスですが、外から心に力が掛かるとそれがストレスになりますが、
その多くは言葉による力です。「チャレンジしろ、挑戦をしろ」がその例ですが、
その言葉への心の反応を冷静なものにできるとよいと思います。ストレスは心と
体を疲れさせてしまい、ストレスがたまればたまるほど、身を守ろうとしてしま
い、相手のちょっとした言動にも敏感に反応してしまいます(自己防衛力が強く
なる)。
更に、心にこだわりがあると人の反応が過大に気になり、素直に自分の弱いとこ
ろを認めることができなくなります(その結果自己防衛力が強くなる)。

■■  ではどうしたらよいのか ■■
個人と組織の両サイドから考えることが大切です。個人が自己防衛力を弱くする
努力をすると同時に、組織においても個人の自己防衛力を弱くすることに合った
方針をもちそれに基づく活動を行うことが大変に重要です。
個人は実際の行動に移るまでいろいろ考えます。自分が非難されないか、自分へ
の評価が貶められないかなどを考えます。組織は、個人が考えるであろうことに
先回りして手を打つべきです。組織は、個人がチャレンジしてもし失敗しても、
その失敗を受け止め失敗は次への成長の機会であると個人を評価します。組織が
そのように対応するということを個人が認識できるためには、何回もそのような
対応をしていくことが大切です。1回や2回ではなく、また1つの部門だけではな
く、1,2年、組織全部門でそのようなことが方針として行われることがキーにな
ります。

組織が失敗を次のチャレンジへの糧と考えるようになると、個人は失敗したこと
を自分の責任?或いは誰かのせい?などを考えることなく、「何がそうさせたのか」
と考えることとなり、自己防衛という不必要なことにエネルギーを使うことをし
なくて済むようになります。このような土壌を作っておくことが、ISO9001箇条
7.4のコミュニケーションを効果的にさせる秘訣であろうと考えます。

ISO9001キーワード コミュニケーション4 | 平林良人の『つなげるツボ』

2025年4月9日
————————————————————————-
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.504 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ISO9001キーワード  コミュニケーション4 ***
————————————————————————-
ISO9001キーワード「コミュニケーション」についてお話ししていますが、今回
は身近に体験したコミュニケーションの問題についてです。
突然家内の耳が聞こえなくなりました。原因はほぼはっきりしていましたので大
きな心配はなかったのですが、完治するまで、2人の間のコミュニケーションに
新たな発見がありました。

■■  耳が聞こえなくなった  ■■
原因は風邪でした。彼女は1ケ月ほど前に風邪に罹りました。コロナかインフル
エンザかと心配しましたが、医者の診断で普通の風邪であるということでした。
しかし、しばらくするとテレビの音が聞こえないからボリュームを大きくしてく
れと言いだしました。そして、しばらくすると彼女の話す声が大きくなり出しま
した。このころから彼女自身もおかしいと思いだしたのでしょう、耳鼻科のクリ
ニックに連れて行ってくれということになりました。診断の結果は「中耳炎」だ
ということでした。鼓膜に穴をあける簡単な手術をして快方に向かいだしました
が、片耳ずつの手術だということでこの間約1か月時間がかかりました。

■■ 対面によるコミュニケーション  ■■
いままでの我々2人のコミュニケーションは、彼女の積極的な話しかけによって
成り立っていました。話題は実に様々です。国際情勢、特にトランプ大統領の動
静、ウクライナ戦争、中東情勢また国内情勢、最近ではフジテレビ問題、神戸知
事パワハラ、大谷選手の活躍、ご近所の話題、女性スポーツジム(カーブス)で
の出来事など途切れることなく話が続きます。私といえば関心のあることにはそ
れなりの返事をし、それに対してまた彼女が返事をするという風に話のキャッチ
ボールが続きます。しかし、あまり興味のない話については、そうね、くらいの
返事で終わり、その後話は続いていきません。それでも30分、40分くらい話が
続いてワンラウンド終了、という形がほぼ毎日繰り返されるというものでした。
この間テレビはつけっぱなし、時々放映されていることに話題が移っていくこと
もあるといった調子でした。

■■ 彼女の話題が少なくなった  ■■
われわれは、息子、娘が結婚した今は2人だけの生活になっています。私といえ
ば相も変わらず仕事に忙しく、家に帰っても何らかの事をしています。しかし、
仕事に疲れてちょっと一休みというときの彼女との会話は一服の清涼剤でした。
ところがこの1か月ほど彼女からの話題提供がばったりと減ってしまいました。
理由は、多分耳が遠くなり得られる情報が減ったことにあるようです。新聞から
の情報、インターネットからのタブレットへの情報など、それなりに情報を得て
いたようですが、テレビからの情報(例えば、報道特集、○○バラエティなど)
は途絶えがちだったのかもしれません。いずれにしても、私からの返事がよく聞
こえないため、応答に難儀を感じて自然と会話が少なくなったのではないかと思
います。

■■ 話の内容の吟味  ■■
こんな状況の中で彼女は今までのように何でもかんでも思いついた話題を発信す
ることをしなくなりました。多分、自身で考える時間を取るようにしたのだと思
います。その結果、話と話の間に時間が空くことになりました。私といえば、今
まで一方的に話を聞く(聴くではない)立場でしたが、話題が限られてきたこと
から、自分にとって興味あることが無くなった物足りなさから、自分から話題提
供をするようになりました。しかし、私が発信する内容の半分くらいについて、
彼女からの返事はありません。耳が遠くなったからだとも思いましたが、そうで
はなく話の内容に興味がないからだと気が付きました。ここまでの10年の私の
姿が映し出された思いを強く持ちました。

ISO9001箇条7.4 コミュニケーションにはこうあります。

組織は,次の事項を含む,品質マネジメントシステムに関連する内部及び外部の
コミュニケーションを決定しなければならない。a) コミュニケーションの内容
(後は略)

■■ メルマガへの感想ありがとうございます ■■
先週のメルマガにAさんからこんな感想を寄せて頂きました。
平林さま  〇〇(株)のAです。
メルマガの事例は日々よくみる事例で、考えさせられます。交差点での信号を守
らない歩行者の心理もそのようなものかと思いました。信号待ちしている人の心
理は「走り込みする人」の心理に近いのではと思いました。信号守ってと注意し
ようと思っても守らない人が多すぎますので、「みんなで赤信号渡れば怖くない」
心理なのかと思います。このへん、コンプライアンスにも通じるものがあって、
交通信号も守らない方は、会社や社会のルールも守っていないのかなと思ってし
まうこの頃です。単なる愚痴ですみません。一事が万事とも言いますので。