「リスクマネジメント」「危機管理」 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.43 ■□■

*** 「リスクマネジメント」「危機管理」 ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

 震災後3ヶ月が過ぎようとしておりますが、夏が近づくにつれて電力不足、
放射能問題での生活への影響がじわりじわりと広がってきているように
感じている毎日です。

 また、まだまだ続く被災された皆様の復旧復興への道のりを少しでも
ご支援できたらと思っております。

 今回の東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所の問題で、
今後の日本の経済活動を考える上で重大な事象が、我々の目の前に
提示されていると思います。

 正直に申し上げますと、今回の大震災の後、

『QMSまたはEMSがうまく活用していたので復旧がうまくいった』とか、
『被害が少なく抑えられた』という話は、あまり聞こえてきません。

 実際、皆さんQMSやEMSどころではないのでしょう。

 ISOマネジメントシステムに係る一人として、少々寂しい気持ちでは
ありますが、これが今の日本の「ISO業界の実情」ではないかと考えます。

 では、なぜこのようになってしまったのでしょうか。

 この議論は各所でなされているので、持論をお持ちの方も多いと
思いますが、私なりに以下の三つの側面から考察してみたいと思います。

●個別のマネジメントシステムとして捉えてしまっている
●経営に活用しようという視点が不十分
●「人」の視点

■□■ 個別のマネジメントシステムとしての対応 ■□■

 QMSならQMS、EMSならEMS。

 それぞれのマネジメントシステムは、規格要求事項が定められ、製品実現、
運用管理の部分のみならず、文書管理、内部監査、マネジメントレビューなど、
組織運営に必要な事項が網羅されています。

 よって、その要求事項に適合するシステムを作り上げ、それに基づく
運用を行っていけば、審査において基本的に困ることはなく、無事に
認証を得ることができます。

 それによって、QMSなり、EMSなりを単独運用している間は、まだ問題は
起きませんが、組織のシステム活用状況が進んでいく、取引先からの要求が
増える、などの状況変化により、複数のマネジメントシステムを運用して
いくようになると、弊害が現れてきます。

 例えば、文書体系一つとっても、QMS用、EMS用と似たようなものなのに、
複数の体系が出来上がることになってしまうのです。

 審査対応を考えると、この方が管理しやすいことは理解できるのですが、
現場の方々のことを考えると、これでは業務に支障をきたすリスクを
抱えることになってしまいます。

 あくまで、両マネジメントシステムに共通する部分は共通化して、両文書の
つながりを持たせておかないと、それぞれが一人歩きして、手間ばかりが
掛かり、さらには形式的な運用に陥ってしまいます。
  

■□■ 経営に活用しようという視点 ■□■

 QMSにしろEMSにしろ、取引先から認証取得を要請されたので取り組んだ、
という組織が多いことも事実であると思います。

 ですが、誰もが分かってはいることなのですが、今一度考えてみましょう。

 経営の主体はだれでしょうか。

 それはお客様ではなく、間違いなく、「組織」自身です。

 そうであれば、経営者にとって大事なことは、

    どのような経営がしたいのか?
    どのような会社にしたいのか?

 ということを明らかにした上で、日々の経営に当たるということです。

 
 ありたい経営・組織の姿を明確化することによって初めて、

    そのために何をすれば良いのか、
    どのようにすれば良いのか、

 という疑問にあたります。

 その視点で経営者のみならず、マネジメントシステムに関わる
全ての人が考えることが出来れば、

内部監査やマネジメントレビューの機会を活用して、経営者が
どのような将来像を描いているかを問いかけたり、あるいは引き出したり
する機会は、ISOの活用場面では色々なところにあるのです。

 繰り返しますが、

QMS・EMSの認証取得のために経営があるのではありません。

経営のために、QMS・EMSの認証取得という選択肢があるのです。

そのツボさえ外さなければ、
複数のマネジメントシステムをつなげるという意識でもって、
日頃の組織活動が生まれてくるのです。
   

■□■ 「人」の視点 ■□■

 最後のポイントです。

マネジメントシステムを活用するのは誰でしょうか。

愚問でしたね、

当然、組織の構成員、つまり「人」となります。

 どのマネジメントシステム規格の中でも、人(人的資源)に関する
要求事項は存在します。(← と言い切って大丈夫でしょうか???)

 しかし、これも要求事項という視点から見てしまうと、如何にその枠組みに
組織の構成員をはめ込むか、従わせるか、という視点に陥ってしまいます。

 それでは本末転倒、

あくまで、人ありきで、その人々が前向きに、成果を上げやすくしていくために、
マネジメントシステムを使わねばならないのです。

そこに必要な視点は、「人は時間を掛けてじっくり成長していく」という
ポイントです。

 一朝一夕に人は変わるものではありません。

じっくり、じんわりと種まきをしていくことでいつか花が開くのです。

成果が出るのを、焦ってはいけないのです。

そのために大事なことは主体性を引き出すということです。

さて、以上で3つの視点である、

●個別のマネジメントシステムとして捉えてしまっている
●経営に活用しようという視点が不十分
●「人」の視点

を一通り考察してみました。

■□■ マネジメントシステムをつなげる仕組み ■□■   

 長くなりましたが問題は、ここからです。

 これらのことが分かった上で、マネジメントシステムを
つなげる仕組みとして大事なことは何か、

 基本はPDCAを回す、ということですが、そのことに加えて、
私は、それが今回の大震災及びその後の問題から感じた、

    「リスクマネジメント」
    「危機管理」

の視点だと思っています。

リスクマネジメント → 危機が起きる前に対応する未然防止
危機管理      → 危機が起きた後に行う対処

と、扱う視点は同一ですが、その狙うところ、活用する時期が
全く異なります。

 組織の活動は、あくまで、継続してなされることを想定して
組み立てられていますし、お客様の期待もそこにあります。

 その根本的なところを抑えるのが、リスクマネジメントであり
危機管理であるわけです。

 それらがベースとしてあり、その上で更に両者の信頼関係を
構築する上で、QMSやEMSがあると考えることが重要なのです。

 そして、今回の大震災を機に、各所で聞かれる度合いが増した

            BCP(事業継続計画)

というものが、その活用ツールとして存在価値を増すと思っています。

 もちろん、事業継続マネジメントシステムの規格であるBS25999を
表面的に見てしまうと、そのような発想にはならないと思います。

 ですが、あくまで 『組織の経営』 という視点でこの規格をじっくり
見てみるとこの規格の中には、新たな気づきがたくさんあります。

 私自身、このBS25999規格については、改めてじっくり研究して
みたいと思っています。

 機会を改めて、またそのお話をさせて頂く予定にしております。

環境人材育成 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.42 ■□■

*** 環境人材育成  ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

   東日本大震災において、被災された皆様方の
 ご安全と1日も早い復旧復興をお祈り申し上げます。

   大震災でしばらく中断しておりました「環境人材育成」
 についてお話させていただきます。

   原発事故に関する2回のお話しの前、39号において
 内閣府の専門タスク・フォースの話をさせていただきました。

   内閣府で議論が進む「日本の人材育成」に関しての
 情報について、さらに皆さんにお伝えしたいと思います。

■□■ 環境情報の入手 ■□■

   ISO14001(環境マネジメントシステム)の審査員資格を
 お持ちの方は、日本で現在8,000名程度いらっしゃいます。

   この方々は世の中から環境のプロとして認知されていると
 私自身考えていますが、

   地球温暖化問題や生物多様性の問題など、環境に関する
 問題は、これからの社会人にとっては避けることが出来ない、
 学ぶべき必須の分野であることは間違いありません。

   新聞、テレビの報道に触れるに際しても、環境に関する
 記事が登場しない日はないくらいといってよい状況になって
 います。

   では、皆さんはこの環境に関する知識をどのようにして
 得ておられるのでしょうか。

   私自身は、本業の傍ら、東京大学で環境分野の一つとて
 「環境プラニング基礎論」という講座を担当して大学院の学生さん
 相手に教えていることもあり、常に知識のアップデートは欠かせま
 せん。

■□■ 環境プランニング学会とeco検定 ■□■

   私は新聞、TV報道だけでは情報が足りなくて、業界専門誌、
 業界専門雑誌にも目を通す毎日です。

   ですが、何よりも環境に関する各種の専門分野に関わる
 お仕事をずっとやってこられている方々との交流が大きな財産に
 なっています。

   その中の一つに、私自身が副会長を務めている
 一般社団法人環境プランニング学会(山本良一会長)があります。

       http://www.kankyo-planning.org/

   同学会は、中小企業に所属する社会人の方々が環境問題に
 取り組むための支援をすることを一つの目的としておりますが、

 同学会の活動は、東京商工会議所が主催する「eco検定」とも
 大きなつながりを持っています。

   eco検定は、すっかり日本人の中で評価が定着した、環境を
 勉強していくための登竜門とも言える検定となり、既に15万人の
 方々が同検定に合格され、「エコピープル」という称号を得られて
 います。

   このように多くの方々が環境問題に関して意識をもち、
 更に貢献意欲をもって試験にチャレンジされていることを
 大変嬉しく思うと共に、経済環境が思わしくない中、

 グローバルに見て日本人は元気がないといわれ始めていることに
 対して、そんなことはない、と強く反論できる証左だと思っています。

   前回お話した内閣府のプロジェクトも、eco検定のような
 人材基盤の上に成り立つ制度であると思います。

■□■ 環境プランナー・ベーシック ■□■

   環境の分野においても勉強を深める道はたくさんあります。

 皆さんも、ご自身の興味ある分野から、今後の地球環境問題に
 どのように取り組んでいくべきかということを考えて頂ければと
 思います。

   その一つとして、私自身が副会長を務める環境プランニング
 学会が推進する資格試験『環境プランナー・ベーシック』は
 皆さんが勉強する上での一つの対象としてお勧めできます。

   同資格試験は、eco検定合格者(エコピープル)のための
 上位資格として位置付けており、2009年に始まったばかりの
 新しい資格ではありますが、今まで4回の試験を実施し、
 延べ1,000名を超える合格者を輩出しております。

        ご興味をお持ち頂いた方は是非、
      学会の下記ホームページをご覧ください

   http://www.kankyo-planning.org/top_in/basic/basic.html

原子力発電所ー使用済核燃料プールとは | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.41 ■□■
*** 原子力発電所ー使用済核燃料プールとは ***
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テクノファ代表取締役の平林です。

 先の臨時号メールに誤った記述がありましたのでお詫びするとともに
修正させていただきます。

「(新たな問題として東京電力福島第一原発の)1、2、3、4号機の
原子炉圧力容器、原子炉格納容器破損という極めて重要な事故が
勃発しております。」は誤りでした。

  ※※※※※ 以下に修正させていただきます。※※※※※

 「2号機の圧力抑制室(サプレッションチャンバー)の一部損傷の
可能性が高くなっています。」

 謹んでお詫び申し上げます。

■ 東京電力福島第一原子力発電所の3号機を巡る報道は皆さん
  ご存知のことと思います。

 私は専門家ではありませんが、現在の原子力発電所の問題に
 ついて知っていることをお話したいと思います。

■ 使用済核燃料プールからどうして熱が出るのか、そもそも
 原子炉圧力容器内にある核燃料と使用済プールにある核燃料
 との違いは何なのでしょうか。

  原子炉圧力容器内にある核燃料はコントロールされた状態で
 核分裂をしています。

 それに対して使用済プールにある核燃料は核分裂していません。

 しかし、核分裂していないにもかかわらず既に出来た物質 
 (核分裂生成物)が放射線を出しながら崩壊熱を放出しています。

 核分裂生成物は不安定な物資で、安定しようとして崩壊をします。

 例えば、原子核はアルファ粒子(陽子2つ、中性子2つの、
 ヘリウム4の原子核)を放出し、原子番号と中性子数を2減らします
 (質量数が4減る)。

 これをα崩壊といいますが、その際に熱と放射線(α線)を出します。

 また、中性子が電子(ベータ粒子)を放出して原子核の陽子になり、
 一つ重たい原子核になるβ崩壊という現象もあります。

 さらに、原子番号や質量数が変わらない崩壊もあります。

 これはγ(ガンマ)崩壊と呼ばれており、高いエネルギー準位から
 低いエネルギー準位に遷移する際に、熱とガンマ線を放出して
 安定な原子核へと移行します。

■ 核燃料は「核分裂のエネルギー」、「核分裂生成物が崩壊する
 際のエネルギー」の両方を出します。

 原子炉圧力容器内の炉からは、核分裂のエネルギーと核分裂
 生成物が崩壊する際のエネルギーの両方が出ています。

 しかし、使用済核燃料プールからは核分裂生成物の
 崩壊エネルギー(崩壊熱)だけが出ています。

 もちろん、これらのエネルギーには放射線が伴っています。

■ 崩壊熱を冷却したり、放射線を遮蔽するためには、
 核分裂生成物を含む燃料棒を大量な水に浸す必要があり
 ます。これを行っているのが使用済核燃料プールです。

 原子炉では水の次の3つの優れた性質を活用しています。
 ① 冷却機能
 ② 放射線遮蔽機能
 ③ 核分裂促進機能(減速材)

 ①については説明を要しないと思いますが、

 ②については水は4mほどの厚みで放射線をほぼ遮蔽します。

 ③については若干話が複雑です。核分裂は水があることで
 促進されます。

 核分裂によって新しく発生する中性子は非常に高速です。
 スピードを遅くしてやると核分裂が促進されます。

 減速能力の高い水を核分裂促進材として用いているのです。

■ 適切に水に浸されていると、放射線は外に出なくなりますし、
 水温は水の循環冷却により通常40度くらいに保たれていますが
 水を冷却するシステムが機能しなくなっているのが現在の
 状況です。

 使用済燃料から出る放射線を遮蔽できなくなる状況が発生して
 いると考えられます。

 使用済核燃料プールが怖いのは、原子炉圧力容器内にある
 核燃料と異なり格納容器という閉じ込め容器の外側にあり、
 遮蔽する防御壁が原子炉建屋(コンクリート製)しかないという
 点です。

 また、使用済燃料プールは、原子炉圧力容器から核燃料を
 プールに移動するに水に浸けて行いますが、プールは高所に
 設置されておりいろいろな処置を取る上で一つの課題になって
 います。

 昨日、自衛隊のヘリによる放水、警視庁及び自衛隊による
 地上からの高圧放水車による放水が行われました。

 これは水の放射線遮蔽効果、すなわち上で説明した②の 
 目的で実施しているのです(と同時に①の目的もある)。

 関係者皆様の決意、ご努力に心から敬意を表したいと思います。

 以下、ご参考までに、多少理論的なことを含む原子力発電に
 関するお話をしたいと思います。

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□ 核燃料の防御

 核燃料はウラン235を濃縮して、全体の3~5%くらい(残りは238)
 にまでにした濃縮ウランをペレット状に焼き固めて作られています。

 このペレットはタバコのフィルター位の大きさ(直径、高さとも1cm
 くらい)のセラミックで「さや状の筒」(被覆管といいます)にぎっしり
 と積み上っています。

 積み上ると表現したのは、長さ4mくらいのジルコニューム製の
 被覆管に入っているからです。

 この核燃料の入っているジルコニューム被覆管は何重もの
 防御壁に厳重な守られています。

 ジルコニューム被覆管の周りは原子炉圧力容器と呼ばれる
 約15~30cm厚もの鋼鉄で囲われ、その周りは原子炉格納容器と
 呼ばれるこれまた数cm厚の鋼鉄で囲われています。

 その囲は厚い(2m程度の厚さ)コンクリート原子炉建屋に囲われて
 います。

□ 原子爆弾との違い

 基本的にはウラン235の濃縮度が異なります。

 原子爆弾は、一瞬のうちにほとんどのウランを核分裂させるために、
 ほぼ100%のウラン235を使用し、核分裂を爆発的に連鎖して引き
 起こさせる構造をもっています。

 それに対して、原子炉圧力容器内にある核燃料は、核分裂する
 ウラン235は3~5%しか含有しておらず、残りは核分裂しない
 ウラン238です。

 原子炉内では核分裂の数をゆるやかに一定にして、連続して
 継続的に連鎖して反応させるような構造にしてあります。

7つの段位1 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.40 ■□■
*** 7つの段位***
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(本号は東日本大震災の影響によりメールマガジン配信はされておりません:メルマガ編集局)

テクノファ代表取締役の平林です。

今回も内閣府の専門タスク・フォースについて発信させていただきます。

前回段位という言葉を紹介しました。なにか柔道のような感じですが、段級位制(だんきゅういせい)は、武道・スポーツ・書道・珠算・囲碁・将棋など広範な世界で技量の度合いを表すために使われています。

■□■ 1~7段 ■□■
段級位制においては気をつけなければならない事があります。

それは数字の大きさです。級位を表わすときには、数字の多い方から少ない方へと上っていきます。10級→1級

段位を表わすときはその反対で数字の少ない方から多い方へと上っていきます。1段→7段

囲碁の世界では、例えばは棋士を呼ぶ際、「梅沢由香里五段」「瀬川四段」のように、氏名または名字の下に段位をつけて呼称することが通例です。

英語では「初段=first degree black belt(黒帯1度)」のように意訳する場合と、「初段=shodan」とそのまま表記する場合があります。

今回のタスクフォースでは段位を7つに設定しています。

■□■ 1段はエントリーレベル、7段はトッププロ ■□■ 
1段は初級レベル/エントリーレベルとWGでは呼び、入門者のレベルを想定し、最初の入り口のレベルとして幅広い知識を勉強してもらい「わかる」というレベルになってもらおうと考えています。

2段は「何かできる」レベルです。できるといってもまだ指導を受けながらのレベルです。しかし「わかる」から「できる」にジャンプすることは大きな飛躍です。

3段はひとりでできるレベルでスペシャリストと呼んでいます。組織で言えば、一人前として周りから認められるレベルだといってよいと思います。

4段はこの制度の要になるレベルで「プロ」です。名実ともにその分野では自他共にお金を稼げるプロとして認められるレベルとして位置づけています。

5段~7段は上級プロです。指導したり、改善を達成したり、ひゅ評価したり、検証したりいろいろな業務を想定しています。

トッププロとよばれる7段になれば、国内だけでなく国際的にも活躍する人材に位置づけようとしています。

■□■ 環境関係が活発 ■□■
私は環境関係のカーボンマネジメント人材WGにいますが、他の2つ(介護、農業)に比べて、より活発に活動がされているといってよいと思います。

WGメンバーには、経営側から経団連、日本商工会議所、労働界から連合、産業界から東京電力などがはいっており、大学の有識者、TVでお目にかかるコメンテーターなど誠に多士済々のメンバーで議論していると、日本の環境分野は誠に成長産業であると感じます。

先日はNHKのTVクルーも取材に来ました。NHKでも4月にはクローズアップ現代で、「環境問題とはなにか」を取り上げるようです。

■□■ カーボンマネジメントに代表される環境問題 ■□■
そもそも「カーボンマネジメント」とは何でしょうか。ある先生は「CO2というべきでカーボンというのは誤りである」といっているように、現在の課題は炭素にあるのではなく二酸化炭素にある、二酸化炭素の増大が問題になっているのです。

炭素は人間の体は言うに及ばず(人体の乾燥重量の2/3は炭素)、およそ地球上の有機物すべての構成原子ですから、その先生のおっしゃるとおりでしょう。

さて、その二酸化炭素の大気中の量が人為的な理由で産業革命以来急速に増加し、地球温暖化の原因になっているとして、1990年頃から国際社会で問題視されてきました。

二酸化炭素の増大と地球温暖化の因果関係はこれまた議論の真っ最中でいろいろな説が発表されていますが、一つ真実なのは「大気中のCO2が増大している」ということです。

これは明らかに地中にあった化石燃料を大量に消費した結果であり、その地球環境に対する影響はいろいろなところに現われてきているといってよいでしょう。

■□■ LCA的見方の重要性 ■□■
LCAとはLife Cycle Assessmentの略語で、日本語では適切な役が無いため「ライフサイクルアセスメント」と呼ばれています。

化石燃料を大量に消費しないようにするために、いろいろな活動が提唱されています。

これまで提案されてきている、省エネルギー、リサイクル、リユース、あるいはリジュースなどは、いずれも化石燃料を削減する結果につながります。

しかし、本質的に社会に貢献するためには、個々の活動だけではなくシステムとして組織に埋め込まれた活動が必要となってきていると考えます。

ここでいう「本質的」ということは、組織の諸活動の最上流、例えば企画部、開発部、設計部などで組織の製品を企画したり、開発したり、設計したりする際に「LCAを実施」し、製品の地球環境に影響を与えない最適価を求めるような活動が望まれるのではないかと思う次第です。

実践キャリア・アップ制度 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.39 ■□■

*** 実践キャリア・アップ制度***

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テクノファ代表取締役の平林です。

今回は内閣府の専門タスク・フォースについて発信させていただきます。

昨年の12月に内閣府の

「実践キャリア・アップ制度カーボンマネジメント人材WG」の

委員に委嘱されました。

国は「21世紀の日本の復活に向けた21の国家戦略プロジェクト」を

立ち上げていますが、

「成長分野における新たな職業能力育成・評価制度」もその一つです。

■□■ 新たな成長分野とは ■□■

国が掲げる成長分野は
「介護・ライフケア」、
「環境・エネルギー(含む林業)」、
「食・観光」です。

国民の就業機会を今後成長する分野に移行させたい、

そのためには当該分野の人材を育成・確保することから始めようという

プロジェクトです。

私のはいっているカーボンマネジメント人材」は、

 「環境・エネルギー(含む林業)」分野の一つです。

  「食・観光」に入る農業に関しては

   「6次産業化」という言葉をはじめて聞きました。

農業は一次産業ですが、そこに2次、3次を足して
                       6次だという意味だそうです。

つまり、農地から加工工場、そして流通までを含めた

 農業の多角化を意味する言葉で、

  今後日本の農業はそうした方向にいくべきであるという

   意思の入った言葉だそうです。

このように今までに無い新しい試みを積極的に

               チャレンジしようというタスクフォースです。

■□■ 実践キャリアアップ制度とは ■□■ 

「実践キャリアアップ制度」という言葉もはじめて聞きました。

 実践的な職業能力評価基準、育成プログラムを策定し、

  各種学校の教育システムと連携して、

   実践的な知識(わかる)と技術(できる)を標準化しようとする

    プロジェクトです。

そのプロジェクトの中に「キャリア段位」という制度がでてきます。

職業ごとに見習いクラス~達人クラスまでを

「わかる」「できる」の2点から標準化し、

段位に沿った能力開発プログラムを開発したいとして活動しています。

その基本的な概念は「肩書社会」から
  
「キャリア社会」へというものです。

イギリスにはNVQ(National Vocational Qualification
:職業能力評価制度)がありますが、

その制度を参考にしながら日本版NVQを創設したいという

目標を掲げています。

■□■ 第一次プラン対象業種 ■□■

実践キャリアアップ制度の対象業種の第一次として

 選定された業種は、介護人材、カーボンマネジメント人材、

  6次産業化人材です。

■介護人材とは、在宅介護や施設介護を通じた汎用性のある

 人材を意味しています。

  既存の介護福祉士・ホームヘルパーなどの資格との連動を

   検討するとしています。

■カーボンマネジメント人材とは、省エネや温室効果ガス排出削減、

 森林吸収に係る診断(審査・検証等を含む)を実施する人材を

  意味しています。

   中小企業や農林業、オフィス・店舗、家庭などにおいて
  
    エネルギーの削減可能性をアドバイスする人材も

     包含しています。

■6次産業化人材とは、専門的かつ総合的に農業に取り組む人材で、

 食品の品質管理、マーケッテイング、農産物生産から商品開発、

  事業化までを一貫して指導する人材を意味しています。

■□■ 現状と課題 ■□■

タスクフォースが認識している現状と課題は次のとりです。

◆介護人材は、成長分野であるといわれているのもかかわらず、

 人材確保が困難である状況が続いています。

  人材確保ができない原因は処遇(賃金)の低さと

   キャリアアップの困難さにあります。

 今後、介護人材の質を向上させ、プロフェッショナルとして

  認知されるようにするためには、介護報酬のアップと、

   資格や能力に応じてキャリアパスが描けるようにする

    施策が課題です。

◆カーボンマネジメント人材は、各分野(国連CDM制度、

 環境省JVER,経済産業省国内クレジット、

  東京都排出量抑制制度など)で急速にその活用が

   図られようとしていますが、省エネ、温室効果ガス排出削減、

    森林吸収などにおいて部分的にしか専門家の活用が

     図られていません。

 企業OBや組織内人材に向けてプロとして各種業務を行う人材の

  能力評価基準を作成し、それらに見合った育成プログラムを

   立ち上げていきます。

◆6次産業化は、現在の農業を活性化するために

  農山漁村の雇用確保と所得の増大に必須なアプローチです。

 農林漁業者による加工・販売分野の取組み、

  農林漁業と2次・3次産業の連携、融合による地域ビジネスの

   展開、新たな産業の創出等に取り組んでいくという

    課題を掲げています。

■□■ 段位とは ■□■

イギリスでは1986年に創設したNVQ制度があります。

この制度は職業訓練とその評価・資格付与が

  ワンパッケージになった制度で、試験方式ではなく、

    職業訓練のプロセス・成果の評価により

      資格付与を決定しています。

NVQは約700職種に及び、

 それぞれのレベルは1~5までの5段階になっています。

エンジニアリング、ヘルスケア、建設、製造現場などを中心に

年間延べ40~50万人が取得しています。

制度発足以来、2007年6月末までに、

約625万人がNVQを取得しています。