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平林良人の『つなげるツボ』Vol.116

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.116 ■□■
*** 規格の読み方 ***
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■□■ 規格の要求事項の読み方 ■□■

英語でshallと表記される要求事項の読み方は、いままでと変え
なければなりません。ISO9001:2015の0.1一般でもshallの説明
がされております。

今までは、shallに直接続く動詞に掛かる部分を要求事項と考え
る人が多かったようです。例えば、箇条4.1「組織及びその状況
の理解」の要求事項は、文の最後にある「・・・外部及び内部の
課題を明確にしなければならない。」であると理解されてい
ました。

これは英語と日本語の構文の違いがあるからですが、文中にあ
る「意図する結果」、「組織の能力」は、組織として明確にしておく
べきものであり、そうでなければ、「外部及び内部の課題の明確
化」は、結果として組織の現状に合わない形式的なものになっ
てしまいます。

■□■ 従来の読み方 ■□■

従来までの読み方だと「意図する結果」、「組織の能力」はあま
り重要視されてこなかったようです。認証審査でも、従来の審査
の仕方では「外部及び内部の課題の明確化」に焦点が当てら
れ、「意図する結果」、「組織の能力」は審査の対象にはなって
いなかったようです。

しかしそれだと目的を見失った手段のみを追い求めていると言
わざるを得ません。その成果は目的から遠く離れた結果を得る
こととなり、2015年版が強調しているパフォーマンスの向上を望
むべくもないことになるでしょう。

■□■ これからの読み方 ■□■

箇条4.1の読み方は、「組織は,組織の目的及び戦略的な方向
性に関連し,かつ,その品質マネジメントシステムの意図した結
果を達成する組織の能力に影響を与える,・・・」の全部が規格
要求事項であるとすべきです。

従来もそのような考え方で規格を読んでいたはずですが、2015
改正を経てそのことが一層明確になりました。「意図する結果」、
「組織の能力」は、箇条4.1「組織及びその状況の理解」に初出
しますが、以降、それぞれ次の2か所、4か所の箇条にキーワー
ドとして出てきます。

これら2か所、4か所のいずれにおいても「意図する結果」、「組
織の能力」という用語は組織に固有なものとして考えてQMSを
構築しなければなりません。組織に固有な用語として明確にし
ておかないと、具体的な対応を取ることができないので、その結
果QMSは効果のないものになってしまうでしょう。

■□■ 「意図する結果」の2か所 ■□■

1か所目:
箇条5.1.1 g) には「品質マネジメントシステムがその意図した結
果を達成することを確実にする」と要求されています。
ここはトップマネジメントへの要求であり、トップはこの要求にこ
たえるためには、「意図した結果」を明確にしてそれを達成する
ためにリーダーシップを発揮しなければなりません。

2か所目:
箇条6.1.1a)には「品質マネジメントシステムが,その意図した結
果を達成できるという確信を与える」という一文があります。ここ
にも「意図した結果」がでてきますが、意図した結果を達成する
ために取り組むべきリスクと機会を決定する、という要求になっ
ています。

■□■ 「組織の能力」の4か所 ■□■

1か所目:
「4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解」に次のような文章
の中にでてきます。「次の事項は,顧客要求事項及び適用され
る法令・規制要求事項を満たした製品及びサービスを一貫して
提供する組織の能力に影響又は潜在的影響を与えるため,組
織は,これらを明確にしなければならない。」

2か所目:
「4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定」に次のよう
な文脈にでてきます。

「組織は,品質マネジメントシステムの適用範囲を定めるために,
その境界及び適用可能性を決定しなければならない。」

(中略)

適用不可能なことを決定した要求事項が,組織の製品及びサ
ービスの適合並びに顧客満足の向上を確実にする組織の能力
又は責任に影響を及ぼさない場合に限り,この規格への適合を
表明してもよい。」

3か所目、4か所目:
「8.4.2 管理の方式及び程度」に次の規定の中にでてきます。
「組織は,外部から提供されるプロセス,製品及びサービスが,
顧客に一貫して適合製品及び適合サービスを引き渡す組織の
能力に悪影響を及ぼさないことを確実にしなければならない。
組織は次の事項を行わなければならない。

(中略)

c) 次の事項を考慮に入れる。
1)外部から提供されるプロセス,製品及びサービスが,顧客要
求事項及び適用される法令・規制要求事項を一貫して満たす組
織の能力に与える潜在的な影響

2)外部提供者によって適用される管理の有効性」

これら4か所の「組織の能力」は、いずれも組織に固有な能力と
読まなければなりません。組織の能力を一般的な言葉として読
み飛ばしてしまうと、上述の4か所の要求事項は意味のないも
のになってしまうでしょう。

組織にはいろいろなその組織に固有な能力があるわけですから、
それらの多くの能力のどの能力と関係してくるのかを理解して、
QMSの構築を計画する必要があります。
そうでないと、ISO9001;2015が意図している組織のパフォーマン
スは上がらないと思います。