JIS Q 45100労働安全衛生MS規格3 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.167 ■□■    
*** JIS Q 45100労働安全衛生MS規格3 ***
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前回から、2018年9月28日に公示されたJIS Q 45100(JISα)について
お話ししていますが、今回はその3回目です。

■□■ JISQ45100の箇条5の概要 ■□■

【5リーダーシップ及び働く人の参加】
【5.1リーダーシップ及びコミットメント】
JISQ45001:2018の5.1を適用する。

≪解説≫
ここにはトップに対する多くの要求がありますが、中でもc)にある
「組織の事業プロセスへの労働安全衛生マネジメントシステム要求事項の
統合を確実にする。」は重要ですので、それについて解説します。

企業トップは労働安全衛生について、経営上の重要事項として予算を付けて、
事故の起こらない会社にするように努力をしています。
しかし、そのことを労働安全衛生マネジメントシステム(OH&SMS)に
しているかというと、多くの企業はそうではありません。

現状が容認できるレベルであるからといって、来年も今の状態を維持
できるかどうか判りません。今のレベルを維持する、さらに向上させる
ことを目的に構築するのがマネジメントシステム(MS)です。

MSを構築する目的、意義が理解でき、MSをトップ方針のもと構築する
ことになりますが、この段階で最も気を付けなければならないことが、
ここでいう「組織の事業プロセスへの労働安全衛生マネジメントシステム
要求事項の統合を確実にする」ということです。
事業プロセスとは、企業で日常行われている活動の事を意味しています。
したがって、ここで意図していることは、OH&SMSは日常活動の中に統合されて
初めて活きてきます、ということです。

日本では、MSの構築の動きは1990年ころから、品質、環境などの領域で
始まりましたが、従来のISO9001(品質)、ISO14001(環境)で問題にされた
2重の仕組み、あるいは形骸化した仕組みを作らないことを意図しています。

【5.2労働安全衛生方針】
JISQ45001:2018の5.2を適用する。

≪解説≫
 なし

【5.3組織の役割、責任及び権限】
JISQ45001:2018の5.3を適用する。

トップマネジメントは,労働安全衛生マネジメントシステムの中の関連する
役割に対する責任及び権限の割り当てにおいては,システム各級管理者を
指名することを確実にしなければならない。

注記2  システム各級管理者とは,事業場においてその事業を統括管理する者
及び生産・製造部門等の事業部門,安全衛生部門等における部長,課長,係長,
職長、作業指揮者等の管理者又は監督者であって,労働安全衛生マネジメント
システムを担当する者をいう。

≪解説≫
JISQ45001には、OHSAS18001にあった管理責任者を任命するという要求事項は
ありません。それに対してJISαでは、ライン管理を具体的に進めるための
要求事項として「システム各級管理者」の指名が追加されています。システム
各級管理者とは、注記2に説明があります。その力量について、箇条7.2 f) に
要求事項が追加されています。なお「システム各級管理者」は、厚労省指針の
第7条(体制の整備)に規定されているものと同じです。

【5.4 働く人の協議及び参加】
JISQ45001:2018の5.4を適用する。

組織は,働く人及び働く人の代表(いる場合)との協議について,次の場を活用
しなければならない。
f) 安全委員会,衛生委員会又は安全衛生委員会が設置されている場合は,これらの委員会
g) f)以外の場合には,安全衛生の会議,職場懇談会等働く人の意見を聴くための場
組織は,協議を行うプロセスに関する手順を定め,この手順により協議を行わなければ
ならない

≪解説≫
JISαでは協議の場を要求事項としてf),g)の2項目を追加しています。
f)では組織に安全衛生委員会等が設置されている場合は、それらの委員会を活用することを
求めています。
g)では安全衛生委員会等が設置されていない組織については、働く人の意見を
聴くための場を設けるよう要求しています。職場単位で開催されている会議や
朝礼など、既存の活動は働く人の意見を聴くための場と見なされます。