ISO 9004:2018持続的成功を達成するための指針-19 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.239 ■□■
**ISO9004:2018持続的成功を達成するための指針-19**
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前回に続きISO9004:2018の革新、ISO 56002:2019「イノベーション
・マネジメントシステム」における要点と、それを超えた他の知見からの
要点をお話しします。

■□■ イノベーションプロセスの要点 ■□■

ISO 56002:2019 では、イノベーションのプロセスの要点を以下のように
説明しています。

a)特定のプロセスの優先的扱い
b)非線型的な順序
c)反復的
d)組織内の他のプロセスと独立
e)組織内の他のプロセスとの繋がり

■□■ 特定のプロセスの優先的扱い ■□■

ISO 56002:2019はマネジメントシステム規格なので、各箇条に必要と
思われるすべての要素を平面的に羅列しています。
しかし、実際のイノベーションの活動においては、あれもこれもという
平面的な取り上げ方では効果的な活動ができません。
特に力を入れなければならないプロセス、項目、要素を優先的に取り上げ、
そこにだけ重点的なエネルギーを注ぎ込んで、シャープに深く突っ込んだ
活動をする必要があると説明しています。

ここでいう特定なプロセスに何を取り上げるのかは、イノベーション
プロジェクトの責任者が深く洞察しなければならないと思います。
対象としている製品開発に必要となるネック技術などは優先的に
取り上げることになるでしょう。

先に話したハイホン、ファーウエイ、サムソンなどの新興企業と異なり
日本の企業には今までの技術蓄積があります。
場合のよってはこの技術の蓄積が邪魔になることがあります。
スタートアップ企業だと必要技術に向かってまっしぐらに研究していける
ところが、歴史のある企業はどうしても過去の蓄積との比較をして時間を
費やすという、結果からみると優柔不断な開発決定になってしまうことが
よくあります。

■□■ 非線型的な順序 ■□■

非線型の英語は non-linear です。リニア新幹線ではないですが、
真っすぐにはいかないということを強調しています。
イノベーションが創造的なものになればなるほど曲がりくねった道に
なることは必至です。

組織に内在する技術の活用と新しく開発しなければならない技術との
比率が道の曲がり具合を決めることになります。
ここで再度ポイントとなることを繰り返しますが、ボトルネック技術の
開発については、十分な洞察と経営戦略の観点からの検討が絶対に
必要になります。

■□■ 反複的 ■□■

これも重要な要点です。頂点を見ればノーベル賞を取ったイノベーションは、
繰り返し、繰り返し、根気よく実験を繰り返している研究ばかりです。
研究者本人をそうですが、周りのチームメイト、組織のトップなどすべての
人々がイノベーションには失敗してもそれに懲りず、またチャレンジする
というiterative(repeated)な精神が必要です。

■□■ 組織内の他のプロセスと独立 ■□■

イノベーションは既存の組織の中にいては効果的な活動が出来ません。
組織の中における人のつながりは見えませんが、場合によっては非常に
強いものがあります。上司との関係、同期入社者との繋がり、今まで
パートナーとして働いてきたチームメイトなどとの人間関係は
イノベーション活動のパフォーマンスに目の見えない影響を与えます。
イノベーションプロジェクトを立ち上げる時には、組織内の人と人の
繋がりから独立したチーム編成が望まれるところです。

■□■ 組織内の他のプロセスとの繋がり ■□■

しかし、イノベーションプロセスは、マーケティング、販売、知的財産、
法務、人、経理、ITなどとは同じ組織内活動であることから有機的な
つながりを持っていなければならないことは言うまでもありません。