ナラティブ内部監査31 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.327■□■
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** ナラティブ内部監査31***
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前回は管理監督者の仕事は、計画/実行/チェック/フォローと
いうマネジメント・サイクル(PDCA)を回すことであり、この
プロセスは、管理監督者が一人で行なうのではなく、部下と共同
で行うことが要諦であるという話をしました。
個人と組織の共生の話の中で、このプロセスを遂行するには次の
原則があるともお話ししました。管理することの原則は3つある
として、
 (1) 仕事はできるだけ移譲すること
 (2) 指示系統を明確にすること
 (3) 管理することには限界があること
を取り上げました。

■ 仕事の委譲(Delegation of Authority) ■
管理監督者が部下に仕事を割り当てる状況を考えてみましょう。
管理監督者が部下に割り当てた仕事は、割り当てられた人が責任
をもって遂行することが原則ですが、責任だけでなく権限も委譲
しなければなりません。ここでいう権限の大きさは、仕事を達成
する上で必要となる責任までの大きさを意味します。
加えて、委譲する部下の能力は、移譲した(割り当てた)仕事の
責任の大きさと同じ大きさでなければならないと思います。
大切なことは、管理監督者の責任(結果責任を含む)は、当然の
ことですが、部下に委譲することはできません。

■ 指示系統の統一(Unity of Command) ■
管理監督者の部下、そして横の管理監督者の部下、すなわち組織
内のすべての人は自分が誰に仕事の報告をし、誰が自分に仕事の
指示をするのかを知っていなければなりません。そして、基本的
には各人が報告する上司はただ一人であるということも重要です
(On man One boss)。
組織が特別な事情より、ある人に2つの仕事を兼務するようにし
たため、その人には上司が2人いるという場合もありますが、そ
れは例外的な処置であり、できるだけ避けなければなりません。
重要なことは、一人ひとりは自分の職務(使命)をはっきり理解
していることと、その職務を遂行する能力をいつも向上させる努
力をしていることです。

■ 管理の限界(Span of Control) ■
管理監督者は、管理することには限界があることを知っているべ
きです、まず量的限界があります。スタッフの場合、一人の管理
監督者が効果的に指揮できる部下の数は、6~7人であると云われ
ています。勿論この数は多くの管理監督者の経験値からの話です
ので、実際はもっと大きな数でも管理できるという場合はあると
思いますが、重要なことは「限界がある」ということを常に意識
していることです。

逆に部下の数が少なすぎる(1~2人)と、監督過剰となり管理の
弊害が出てきますし、過保護になって部下が育たないという組織
全体の人的資源にダメージを与えることになります。さらに、管
理監督者と被管理監督者の間の物理的距離は管理の効果に影響す
ることも知っているべきでしょう。
例えば、同じ部屋にいる場合と別棟にいる場合を想定すると理解
できます。極端な場合、海外支店にいる部下の管理を考えると、
管理の有効性は相当減少すると考えなくてはなりません。
管理の限界には量的限界のほか、質的限界もあります。管理監督
者がどの程度専門能力を持っているべきかというと、これまた経
験的に言わざるを得ませんが、少なくとも上位管理監督者になる
ほど専門能力の保有必要性は薄まっていきます。管理監督者の能
力については次号でお話ししたいと思っています。

■ なぜ仕事は委譲されないのか ■
管理の3つの原則がどの程度日常の組織活動の中で適用されてい
るかというと、私の経験からは(私を含め)お寒い限りだと思い
ます。 
なぜ上司は部下に仕事を委譲しないのかを分析すると、以下のよ
うなことが言えそうです。
 (1) 意思決定権を保持することがポジションパワーを強くすると
  おもっている。
 (2) 部下が権限を下手に運用するかも知れないリスクに耐えたく
  ない。
 (3) 部下の能力に疑問を抱いている。自分でやった方が効率的に
  そして効果的に仕事を遂行できると思っている。

もしかすると、部下は面倒な仕事に巻き込まれたくないものだと
信じているかもしれません。また、部下が要領よく仕事を遂行し
てしまったら自分のポジションが危ないと考える上司が居るかも
しれません。
部下の立場からも仕事の委譲がされない要因が浮かんできます。
 (1) 仕事を委譲されるということは責任負担が増大するという
  ことだから。
 (2) せっかく委譲された権限を上手に使えなかったら、という
  心配がある。
 (3) 自信がない。プレッシャーが負担になる。
 (4) 仕事の知識、経験、及びその進め方の技能が欠けている。
 (5) 忙がしくて受けられない。

そうであるならば、管理監督者は仕事の委譲をする前に次のこと
を検討、配慮、実施すべきです。
 (1) 委譲する仕事の権限の範囲を可視化(明記)したものがある。
 (2) 権限を決める時部下を参加させる。
 (3) 与えた権限は責任の大きさと釣合っている。
 (4) 権限に伴って発生する責任をしっかり全うする気構えが部下
  にあるのかコミュニケーションする。
 (5) 与える権限について当該部下のみならず、その同僚にも周知
  する。