SDGインパクト基準21 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.368 ■□■
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*** SDGインパクト基準21 ***
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2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

今回は目標13についてです。

■■ 目標13 ■■
目標13. 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる※。
<13.1すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強
靱性(レジリエンス)及び適応力を強化する。>
※ 国連気候変動枠組条約(UNFCCC: United Nations Framework
Convention on Climate Change)が、気候変動への世界的対応について
交渉を行う基本的な国際的、政府間対話の場であると認識している。

気候変動枠組み条約は、この条約の現状を確認するために毎年開催され
るCOP(Conference Of the Parties:締約国会議)で有名です。また
IPCC(Inter- Governmental Panel on Climate Change:国連気候変動に
関する政府間パネル)が5年おきに発行する地球温暖化レポートもこの
目標13に関係して目を通しておきたい報告書です。

■■ 国連気候変動枠組条約(UNFCCC) ■■
気候変動枠組み条約は、1997年に京都でCOP3(第3回締約国会議)
が開催されたことで一躍有名になりました。UNFCCCの出発点は1992
年にまで遡ります。1992年6月の国連環境開発会議(地球サミット、
ブラジル・リオデジャネイロ)では、大気中の温室効果ガス(二酸化炭
素、メタンなど)の濃度を安定化させることを究極の目的として、議論
が交わされその結果署名がされました。日本を含め155カ国がこの会議
で条約に署名しましたが、その後197か国まで加盟国が増えました。本
条約に基づき、1995年から毎年、気候変動枠組条約締約国会議(COP)
が開催されています。

1993年5月 日本の批准
1994年3月 条約発効
1995年3月 第1回締約国会議 ベルリン
1997年12月 第3回締約国会議 京都

この条約は、枠組条約という名が示すとおり、地球温暖化防止について
の枠組を規定しています。

■■ 各国の義務 ■■
UNFCCCでは各国に具体的な削減義務までは課していませんが、計画を
作成すること、すなわち温室効果ガスの排出・吸収のリスト、温暖化対
策計画の策定等を締約国の義務としています。
もう少し詳しく言いますと、先進国と開発途上国の義務は分かれています。

<全締約国の義務>
・温室効果ガスの排出及び吸収のリスト作成と定期的更新
・具体的対策を含んだ計画の作成・実施
・リスト及び実施した又は実施しようとしている措置に関する情報を締  
 約国会議へ送付
 
<先進国の義務>
温室効果ガスの排出量を2000年までに1990年の水準に戻す(努力目標)
ことを目的に、
・温暖化防止のための政策措置を講ずる。
・排出量などに関する情報を締約国会議に報告する。
・途上国への資金供与、技術移転を行う。

京都COP3では先進国の義務を明確にした議定書が激しい議論の末成立
しました。それは、先進国は 6種類の温室効果ガス総排出量を20年
(2008年)~24年(2012年)の5年間に、1990年基準で、先進国全
体で5%以上の削減を目指すこととされました。

■■ 京都議定書の後 ■■
京都議定書の約束はその後の日本政府の発表ですと、日本は達成したと
されています。しかし、京都議定書での温室効果ガス排出量削減目標は、
2008~2012年の第1約束期間と呼ばれる期間を対象にしたもので、
2013年以降の取り組みについては、何も決まっていないことが大きな
問題でした。

「2013年以降」についてどうするかは、京都議定書に2005年時点で締
約国は話し合いを開始しなければならないと書かれていました。
しかし、世界の情勢は大きく変わっていきました。世界の排出量は、も
はや先進国だけの問題ではなくなっており、中国やインドといった途上
国の排出量が大きくなっていったのです。そのため、2013年以降は途上
国にもなんらかの取り組みを求める声が高まっていきました。
途上国に対して先進国が取り組みを要求するという「2013年以降」へ向
けた交渉は、テーブルにつく段階から問題が山積みの状態でした。
しかし、2015年のCOP21において、「パリ協定」が成立し、新しい国際
的枠組みが誕生しました。

■■ パリ協定(Paris Agreement) ■■
パリで開催された第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)に
おいては、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠
組みとして、パリ協定が採択されました。
この合意により、京都議定書の成立以降長らく日本が主張してきた「全て
の国による取組」が実現し、世界の全ての国が取組に参加する公平な合意
ができました。
しかし、世界第一の排出国であるアメリカが議定書から抜け出てしまいま
した。2017年、トランプ米国大統領は、「パリ協定」から離脱することを
表明しました。人類社会が過去1世紀余の時間をかけて、CO2などの温室
効果ガスによる気候変動問題に取り組み、IPCCの設立、気候変動枠組み
条約の締結、京都議定書の実施など、一歩一歩取り組みを続け、ついに辿
りついた歴史的な「パリ協定」を、「アメリカ第一」すなわち国内の雇用や
経済的損失などを優先したのです。

■■ パリ協定へアメリカ復帰 ■■
しかし、2021年にバイデン大統領はパリ協定への復帰を決定し、オンライ
ンでの「気候変動サミット(2021年4月22~23日)」を開催するなど、
現在、アメリカは気候変動対策に積極的な姿勢を示しています。

日本も2021年に英国・グラスゴーで開催されたCOP26において、「我が
国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すな
わち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを
宣言しました。