SDGインパクト基準24 | 平林良人の『つなげるツボ』

—————————————————————
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.371 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** SDGインパクト基準24 ***
—————————————————————
2015年に発表された国連「SDGsアジェンダ」についてお話をして
います。
SDGsとは、
“Sustainable Development Goals”の略で、「持続可能な開発」
と日本語訳されています。

今回は目標15です。

■■ 目標15 森林、砂漠、陸地 ■■
目標15.陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可
能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・
回復及び生物多様性の損失を阻止する。
<15.1 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、
湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態
系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保
する。>

■■ 森林破壊 ■■
国連の報告によると、2015年以降、毎年東京都と同じくらいの大
きさの天然林/森が、50個くらい面積にして約10万平方キロメー
トルが消滅しているそうです。この森林破壊は、特に熱帯を中心
とした開発途上国という限られた地域で起きています。
ここではWWF(World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)
の資料から報告させていただきます。
2010年から2030年までに起こる森林破壊が急速に進む原因は、
さまざまな開発行為です。開発途上国で生産される農作物や木材、
紙、また採掘される石炭や金属などは、日本をはじめとする世界
中の国々で利用されています。WWFでは、このままの勢いで森
林破壊が続けば、今残されている天然林も遠からず地球上から消
失してしまうと危惧しています。
今危惧されていることをもう少し詳細にお伝えします。
・世界の陸地の31%は森林が占めている(約40億ヘクタール)。
・しかし、既に約半分の森林が消失しており、約20%が消失の危
 機にあり、天然林はわずか15%しか残らない。
・このまま森林破壊が続けば100年以内に熱帯雨林がなくなる。
・世界森林面積65%を有する118ヵ国では森林が火災によって
 毎年1,980万ヘクタールが消失している。
・パーム油のプランテーション開発が原因でボルネオ島の森林
 は既に約半分消滅している。
・森林破壊により世界の温室効果ガス排出量が約15%増加して
 いる。

森は、木材や薬の原料、農作物の原種の供給など、世界中の人た
ちの暮らしに恵みをもたらしてくれます。また、林業、森林管理
などに携わっている人は、現在世界中で約2億5,000万人いると
推定されています。森林破壊はこうした人たちの生活も奪う深刻
な人権問題でもあります。世界で起きている森林破壊には、日本
も深く関係しています。日本人が暮らしの中で利用しているさま
ざまな産品や原料などは、時に世界の森を破壊する形でつくられ
ているためです。

■■ 野生生物への影響 ■■
森林の面積は上述のとおり地球の陸地の約3割を占めており、こ
こには、これまで発見されている野生生物種の半分以上が生息し
ています。森林の消失は、多くの野生生物を絶滅の危機に追いや
る大きな原因です。現在、森林をすみかとする世界の野生生物の
うち、絶滅の危機が高いとされる種の数は、1万4,000種以上に
のぼります。これらの生きものは、森以外の環境にすむ他の野生
生物とも共生の関係や食物連鎖でつながっているため、その絶滅
はさらに多くの命の危機にも繋がるのです。
森林破壊の結果、すみかであった森林を追われた野生生物が、人
里などに姿を現し、人との遭遇事故を引き起こす例も多発してい
ます。事故により、人の命が犠牲になることもあれば、希少な野
生生物が害獣として殺されてしまうことも珍しくありません。

■■ 気候変動への影響 ■■
近年、世界各地で深刻な被害をもたらしている、大雨や干ばつな
どといった異常気象にも、森林破壊は深く関わっています。森林
を形成している樹木が、生長の過程で、空気中の二酸化炭素を取
り込み、大量に蓄えているためです。
2007~2016年にかけては、人が行うすべての活動を通して放出
された二酸化炭素量のうち、約29%に当たる量を、主に森林が吸
収してきたことが推測されています。火災や伐採によって、樹木
の中に蓄えられていた二酸化炭素が、大気中に放出されると、異
常気象の大きな原因とされる気候変動(地球温暖化)が助長され、
水害や森林火災の長期化といった被害をもたらすことに繋がりま
す。こうした脅威が引き起こされているにも関わらず、地球に残
された森林のうち、適切な保護区などに指定されている地域は17
%に過ぎず、森林を守るには、不十分と言わざるを得ません。

■■ 感染症への影響 ■■
新型コロナウイルス感染症などの動物由来感染症の拡大には、森
林破壊が深くかかわっています。森林が破壊されることで、さま
ざまな病原体を持っている野生生物が外界に出てきて人や家畜と
接触するためです。森に暮らす何百万という野生生物種は、その
体内に、未だ解明されていないウイルスや細菌などを持っていま
す。もともと、特定の生物種の中にだけに存在していたウイルス
は、森林破壊によって、宿主動物と共に森の外に顔を出すように
なり、人と接触するようになるからです。このような形で新たな
ウイルスが人に伝播するよう変異し、人の生活圏内での感染につ
ながることが危惧されています。
森が失われることをきっかけに、動物から動物へ、動物から人へ、
そして人から人へと、新たな感染症が拡大してしまえば、その影
響は国境を越えて世界中に広がり、人々の暮らしを危険にさらす
ことは容易に想像できます。