トヨタ物語12 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.398 ■□■
― ISOマネジメントシステムのテクノファ ―
― つなげるツボ動画版はじめました ―
*** トヨタ物語12 ***
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テクノファでは3月17日にWEBで「テクノファフォーラム29回」
を「改めて考える品質不正」と題して開催します。
慶應義塾大学理工学部 管理工学科 山田秀先生、山口利昭法先生
(弁護士)、安藤之裕氏、大久保友順氏を迎えて講演、及びパネル
ディスカッションを予定しています。品質不祥事と真逆な話がト
ヨタ創業期の話です。トヨタ創業時の話を聴くと近年の品質不祥
事の話と大きなギャップを感じます。竹がまっすぐ成長する青年
と葉が枯れだした老木との違いのごとくです。下記の記述は1970
年頃に私が聞いた大野耐一氏(当時副社長)の講演記録からです。

■■ フォード1世の後継者たち ■■
ヘンリー・フォード1世の後継者たちは、必ずしもフォードの意
図した生産の流れをつくらなかった。機械加工も、プレスも、流
れをせきとめてダムをつくるような、「ロットは大きければ大きい
ほどよい」という考えを定着させてしまった。トヨタ生産方式を
実現する過程で、生産現場の旧態依然たる「流し作業」を「流れ
作業」に変えるには、それこそ人間の頭脳を機械に移植する作業
の積み重ねであった。「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」
の2本柱はそれを実現させるための手段であり、かつ目的ともな
ったことを改めて思い知らされる。

■■ 貯めることの弊害 ■■
自然の災害に備えて人間が貯えをすることは農耕民族の長い間の
習慣からきていると思う。しかし、いつも外の世界と連動してい
る企業が、どうして自分だけの安全のために、品物をため込む必
要があるのか。そのため込む気持が、企業のムダのもとをなして
いる。新しい機械を買ったら、どうして能力いっぱいにいつも動
かしておかなければならないのか。機械の調子がよいときに、沢
山つくっておこう、機械の故障に備えて、つくれるときにはつく
れるだけつくっておこうというのが、いまなお広く深く定着した
考え方である。
トヨタ生産方式における「ジャスト・イン・タイム」の考え方、
つまり「必要な品物を、必要なときに、必要なだけ」手に入れる
ことができれば、確かに余分の原材料も、余分の製品も手持ちす
る必要はない。機械が止まってつくれなくなったらどうするか。
「かんばん」方式でいう後工程が前工程へ必要な品物を引き取り
にいったとき、機械が止まってつくれない場合はどうするか、確
かに困るにちがいない。

■■ 治療より予防 ■■
そこで、トヨタ生産方式は「予防」というニーズを生産現場の全
工程に浸透させることになった。機械の故障を前提として在庫を
もつとするなら、なぜそれ以前に、機械の故障を未然に防ぐこと
を考えないのか。私はトヨタ生産方式がしだいにトヨタ自工内、
さらに外部へと広がり浸透していく過程で、機械の故障、工程の
不具合をいかに防止するかをみんなに工夫してもらった。トヨタ
生産方式には予防医学がしっかりと組み込まれている。
ヘンリー・フォード1世は企業の社会的使命として、あの有名な
フォード財団をはじめ、病院や学校をつくった。病院をつくると
きには、フォード一流の健康、病気、治療、予防などに対する見
識が公表されることになる。
前にかかげたヘンリー・フォード1世の著作のなかに「治療と予
防」という文がある。完全な食物ができれば、健康が保たれる、
つまり病気が予防できるとフォードは真剣に論じている。

一流の医師たちは、たいていの軽い病気の治療法は薬ではなく食
物にある、ということに同意しているようである。それならば、
治療以前の問題としてなぜ病気を予防しようとしないのか。そし
てこの問題をつきつめていけば、次のような結論を導くことがで
きる。悪い食物が病気の原因であるとすれば、完全な食物は健康
のもとである。そしてもしこれが事実なら、われわれは完璧な食
物を追求し、それを見つけ出すべきである。この完璧な食物が見
つけ出されたとき、世界はその最も偉大な前進の第一歩を踏み出
すことであろう。

このような遠大な科学研究のテーマを企業経営のニーズとして取
り組んだほうが、独立した研究機関でやらせるより、実現の可能
性が強いだろうとフォードは指摘している。この予防の考え自体
が、フォード・システムの根幹をなす「流れ作業」に不可欠のも
のであるとは言及していないが、「流れ作業」を発明した男がこう
いうことも考えていたのかと、興味深く「治療と予防」を読んだ
のである。
トヨタ生産方式の2本柱である「ジャスト・イン・タイム」と
「自働化」相互の関係のところで、お互い補完し合いながら、体
質の強い生産ラインをつくり上げると私は述べた。体質の強い生
産ラインは、そのまま体質の強い企業に通じる。トヨタの強い体
質は治療によってではなく、むしろ「予防医学」によってつくり
出されたといってよい。