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組織の能力の実証 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.112 ■□■   
*** 組織の能力の実証 ***
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■□■ お詫びと訂正 ■□■

先の平林良人『つなげるツボ』Vol.111に箇条番号の誤りがありました。箇条4.4
と記述するところを箇条4.1と記述してしまいました。プロセスアプローチの要求
はISO9001:2015箇条4.4に規定されています。

ここに、箇条4.1→箇条4.4に、訂正させていただくと同時にお詫びを申し上げま
す。下記が該当箇所の正しい記載です。

■□■ ISO9001:2015箇条.4.4 ■□■

ISO9001:2015箇条.4.4では、QMSに必要なプロセスのそれぞれに対して、イン
プット、アウトプット、パフォーマンス指標、責任/権限、判断基準、方法などを
決めること、明確にすることを求めています。

■□■ さて、新しい話題です ■□■

ISO9001:2015は、箇条1適用範囲でa)、b)の2つのことを述べています。私はこ
のa)、b)の2つは組織がISO9001を採用する目的だと思っています。以下、箇
条1の文面です。

1 適用範囲

この規格は,次の場合の品質マネジメントシステムに関する要求事項につい
て規定する。

a) 組織が,顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品
及びサービスを一貫して提供する能力をもつことを実証する必要がある場合。

b) 組織が,品質マネジメントシステムの改善のプロセスを含むシステムの効
果的な適用,並びに顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項への
適合の保証を通して,顧客満足の向上を目指す場合。

この規格の要求事項は,汎用性があり,業種・形態,規模,又は提供する製品
及びサービスを問わず,あらゆる組織に適用できることを意図している。

■□■ a)能力をもつことを実証するとは ■□■

a) 組織が,顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品
及びサービスを一貫して提供する能力をもつことを実証する必要がある場合。

ここでいう実証の原文はdemonstrateです。実証とは、組織は顧客をはじめと
する利害関係者に自分の能力を示威することを意味しています。

「私は顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品及び
サービスを一貫して提供する能力を持っています」と、利害関係者に宣言する
ことを意味しています。

■□■ 第三者は簡単には信じない ■□■

ISO9001:2015は組織委が実証する際に具備すべき要件を規定しています。利
害関係者は、組織が口頭で宣言したり、訴えたりしても簡単には信じてくれま
せん。

多くの人は口頭では信じないのです。QMSを形になったもの(documented
information)で示さないと信用度が低いのです。

■□■ b)顧客満足の向上とは ■□■

b) 組織が,品質マネジメントシステムの改善のプロセスを含むシステムの効
果的な適用,並びに顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項への
適合の保証を通して,顧客満足の向上を目指す場合。

a)に比べこちらの理解はやさしいと思います。QMSを構築することで顧客の満
足を向上させる目的でISO9001:2015を使ってください、と言っています。

■□■ QMSが形になったものとは何か ■□■

今回の改正で品質マニュアル作成の要求は無くなりました。筆者は
無くなった理由は、世界的に品質マニュアルが形骸化したからだと思っていま
すが、品質マニュアルこそがQMSを形にしたものの一つであると考えます。も
ちろん、適切に記述され、組織のQMSを概括して説明している品質マニュアル
であることが前提での話です。

ところで、箇条7.5.1には次のように要求されています。
組織の品質マネジメントシステムは,次の事項を含まなければならない。

a) この規格が要求する文書化した情報

b) 品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した,
文書化した情報

■□■ 組織が決定した文書化した情報 ■□■

品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した,文
書化した情報にはどのようなものがあるか考えてみたいと思います。以下はそ
の事例です。

設計:設計を行うための手順書、CAD/CAM取扱い手順書(メーカーからの外
部文書)、設計標準、設計参考図書、ノウハウ集、問題事例集、強度計算書、
構造設計ソフトウエア、制定済設計図書、標準部品図、設計プロトタイプ、完
成予想図(建築パース)、実験計画書FMEA文書など購買:購買業務手順書、
取引業者一覧表、業者評価表、プライス表、注文票、発注表、受入検査表、見
積表など製造:製造手順書、指示書、点検票、QC工程表、工程レイアウト、品
質保証体系図、クレーム表、設計フィードバック表、引継表、現物見本、オペレ
ーション表、検査指示書、特性要因図、検査結果表、是正処置要求書、是正
処置表、修理表、修理結果表、点検報告書、妥当性確認票、精度チェック表、
識別表、トレーサビリティ表、保管条件表、メンテナンス指示書、プロセス表、
判断基準、校正表など

上の例はほんの一例にすぎません。
組織は従来からいろいろな部署で多くの文書(記録)を活用してきています。そ
れらを適切に管理することは、組織の能力を実証するうえで極めて重要なこと
です。ISO9001の要求している文書類は、組織で必要とする文書のわずかな
部分にすぎません。

プロセスアプローチが基本 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.111 ■□■   
*** プロセスアプローチが基本 ***
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■□■ ISO9001:20153つの概念 ■□■

ISO9001:2015には3つの概念があります。プロセスアプローチ、PDCA、リ
スクに基づく概念です。その中でもプロセスアプローチが基本の概念であると
説明されています。

■□■ 事業プロセス ■□■

ISO9001:2015には初めて「事業プロセス」という用語が出てきます。私は組
織の現状の業務を事業プロセスと呼んでいると思っていますが、これは組織
の全員が毎日行っている活動です。

例えば、営業プロセス、設計プロセス、製造プロセス、サービス提供プロセ
ス、人事管理プロセス、経理プロセス、経営管理プロセスなどです。このプロ
セスの名称は組織によって異なるでしょうが、どんな組織でも事業計画推進
のためにいろいろな活動を全員が毎日行っています。

■□■ QMSに必要なプロセス ■□■

ISO9001:2015は、その事業プロセスの中からQMSに必要なプロセスを明
確にすることを求めています。例えば、上の例でいうと、経理プロセスは組織
によってはQMSに必要でないプロセスと考えるかもしれません。組織によって
はQMSに関係あるプロセスとして経理プロセスを考えるかも知れません。

■□■ ISO9001:2015箇条.4.1 ■□■

ISO9001:2015箇条.4.1では、QMSに必要なプロセスのそれぞれに対して、
インプット、アウトプット、パフォーマンス指標、責任/権限、判断基準、方法
などを決めること、明確にすることを求めています。
(編集注記: 正しくは「ISO9001:2015箇条.4.4」の箇条となります)

■□■ QMS要求事項の統合■□■

ISO9001:2015箇条.5.1では、トップマネジメントに対して、「事業プロセスへの
QMS要求事項を統合すること」を要求しています。私は規格の要求事項など
を日常の業務に入れ込むことでQMSの形骸化を防ぐことを求めていると考え
ています。
このことで組織のQMSパフォーマンスが向上することに繋がることを期待しま
す。

■□■ 認証審査への準備 ■□■

ISO9001:2015への移行に当たっては、このプロセスアプローチが今まで以
上に強化され、適切に構築、運用されているかが認証審査のポイントの一つ
になると思います。

移行審査への準備に当たっては、ISO9001:2015箇条.4.1に沿って各種要
求事項が適切に計画され、実施に移されているかを組織自身が確認すること
が必要でしょう。
(編集注記: 正しくは「ISO9001:2015箇条.4.4」の箇条となります)

■□■ プロセスオーナー ■□■

プロセスオーナーという言葉があります。これはプロセスの主管部門を意
味している用語です。例えば、設計プロセスならば設計課、製造プロセスなら
製造課ということになります。

QMSに必要なプロセスへのインプット、アウトプット、パフォーマンス指標、
責任/権限、判断基準、方法などの決定は、事務局だけでは難しい場合があ
ります。

そのような場合には、プロセスの主管部門(プロセスオーナー)に決定をお
願いすることがよいでしょう。

■□■ 規格要求事項を事業プロセスに関連つける■□■

事業プロセスに規格要求事項を統合するという要求に対しては、すべての
規格要求事項を組織が決めたプロセスと結び付けてみるとよいでしょう。

箇条8.3設計・開発は設計課、8.5製造及びサービス提供は製造課あるい
はサービス提供課という具合です。

■□■箇条7は全ての事業プロセスに関連する■□■

しかし、箇条7の要求は特定のプロセスオーナーに関連しません。すべて
の事業プロセスに関連します。

7.1 資源
7.2 力量
7.3 認識11
7.4 コミュニケーション
7.5 文書化した情報

■□■ 適用可能性の検討 ■□■

ISO9001:2015箇条4.3では適用可能性についての要求があります。組織が
決めたプロセスと規格要求事項を関連付ける際に、関連しない規格要求事項
は適用不可能の可能性があります。

その場合、さらによく検討して本当にその要求事項を採用できないのであ
れば、適用不可能を正当化する文書を作成しなければなりません。

再び設計開発について | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.110 ■□■   
*** 再び設計開発について ***
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■□■ 設計は図面というイメージが強い ■□■

設計というと「図面を書くというイメージ」が強いが、ISO9001でいう設計・開
発はそれだけではありません。

サービス業における活動においては、図面は書かなくても計画を立てるこ
とはよくあります。それらの計画の内容が新商品、新製品に関するもので
あれば、その計画行為はISO9001が定義する設計開発にあたります。

ISO9000:2015には設計・開発に関して次のようにあります。

「対象に対する要求事項を、その対象に対するより詳細な要求事項に変換
する一連のプロセス」

■□■ くい打ち工事には設計がある ■□■

先日、超ISO起業研究会で飯塚東大名誉教授との懇談会が開かれました
。そこでは設計・開発について「くい打ち工事」を例にしてざっくばらんな議
論がなされました。
専門家も加わり自由闊達に意見交換が行われましたが、いろいろな切り
口が出ました。

設計プロセスは無いという意見。

A.くい打ち工事は国交省の認定工法であり、施工のやり方は決まってい
るので施工者には設計をする余地はない。

設計プロセスは有るという意見。

B.くち打ち工事の実施の仕方については、詳細なことになると決めておか
なければならないことが多くあり、それを決めることは設計にあたる。

なお、ここで議論をくい打ち工事を対象にしている意図は、たまたま社会的
な問題になったことで、事例として取り上げることで多くに人に理解しても
らえると思ったからです。

■□■ A(設計は不要)の意見 ■□■

今回のくい打ち工事は、大臣認定を取得した「ダイナウィング工法」で施工
していたと聞くが、大臣認定工法はやり方が決められているので、やり方
を守らなかったという問題はあるかもしれないが、施工者が工事のやり方
を設計するという余地はない。

ちなみに、大臣認定されたダイナウィング工法の作業フローは次のとおり
である。

 1.掘削作業
   -掘削ロッドの鉛直度を確認・調整
   -掘削液をビットの先端から吐出
   -地盤に適した速度に調整

 2.支持層の確認
   -ボーリング調査結果の確認
   -試験杭時、試掘削にて土砂を採取し土質標本と照合
   -オーガ※モータ電流値の変化傾向による支持層の推定

※建設機械の1つでスクリュー等を回転させて地中に穴を掘っていく機械

 3.根固め部の築造
   -セメントミル注入
   -流量計で注入量を計測・記録

 4.オーガ引上げ
   -拡大掘削径による引上げ

 5.杭埋設
   -杭の建込及び埋設
   -杭の定着

■□■ B(設計は必要)の意見 ■□■

一般論として、施工をする場合には、今回のくい打ち工事に代表されるよう
に手順が決められていたとしても、さらに詳細な要求事項への変換が必要
ではないか。施工仕事が達成しなければならない品質を確保する上で、「
対象に対する要求事項を,その対象に対するより詳細な要求事項に変換
する一連のプロセス」(ISO9000:2015箇条3.4.8)が必要である。

今回のくい打ち工事の事例を見ても、大臣が指定した作業フローだけでは
品質確保されないと思う。

たとえば、2.支持層の確認には「オーガモータ電流値の変化傾向による
支持層の推定」とあるが、より詳細な要求事項に変換が必要であろう。

同様なことは1~5の各要求事項でも言えるのではないか。
   
■□■ 一般に施工にも設計・開発プロセスはある ■□■

AとBのグループに分かれて自由な議論を交わした結果、飯塚先生を含め
て次のような結論になりました。

何事もそうであるが、従事する人にはそれなりの力量が必要とされます。
したがって、施工者の技能が重要になりますが、同時に従事する人が多
数いても、同じ工事品質が得られる工夫も必要であり、大臣認定の要求事
項はさらに詳細化する必要があります。

たとえば、くい打ち工事では次のような詳細化された要求事項が必要では
ないでしょうか。

1.掘削ロッドの鉛直度はどのように調整するのか。
2.地盤に適した速度はどのように調整するのか。
3.ボーリング調査結果を確認して何を行うのか。
4. 試掘削で土砂を採取し土質標本と照合する場合の基準は何か。   
5.オーガモータ電流値による支持層の推定にはどんなやり方が必要か。
  例えば、雨に濡れないようにするとかの注意事項が必要。
6.セメントミル注入時の注意事項は何か。
7.オーガ引上げ時の注意事項は何か。
8.杭の長さが足りなかった場合、どのような対応をしなければならないの
か、など

次回の懇談テーマを検討した結果、「リスクの特定と品質目標」
となりました(箇条6.1.2と6.2.2の関係)。

■□■ 箇条6.1.2 リスクへの取組み ■□■

リスク及び機会は次のような取組み計画を作る必要があります。

a) 決定したリスク及び機会への取組み
b) 次の事項を行う方法

1) その取組みの品質マネジメントシステムプロセスへの統合及び実施
(4.4 参照)
2) その取組みの有効性の評価

リスク及び機会への取組みは,製品及びサービスの適合への潜在的な影
響と見合ったものでなければならない。

■□■ 箇条6.2.2 品質目標の達成計画 ■□■

品質目標にはa)からe)に実行計画の規定があります。

a)  実施事項を決定する。
b)  必要な資源を決定する。
c)  責任者を決定する。
d)  実施事項の完了時期を決定する。
e)  結果の評価方法を決定する。

ISO9001における設計・開発 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.109 ■□■   
*** ISO9001における設計・開発 ***
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■□■ 再び設計・開発 ■□■
横浜のマンションに関連して、杭打ち工事の報道が止みません。毎日の報道に接し
「杭を打つという仕事の設計、あるいは手順はどうあるべきか」考えさせられます。

■□■ ISO9001における設計・開発の定義 ■□■
ISO9001:2015改正においては、設計・開発の定義が以下のように変更になりました。

「対象に対する要求事項を,その対象に対するより詳細な要求事項に変換する一連の
プロセス」(ISO9000:2015箇条3.4.8)

ここでいう対象は杭打ち工事になります。そうすると、要求事項をより詳細な要求事
項に変換するとは何を意味するのでしょうか?

※ ちなみに、2008年版では「要求事項を,製品,プロセス又はシステムの,規定さ
れた特性又は仕様書に変換する一連のプロセス」(ISO9000:20108箇条3.4.4)となっ
ていた。

ISOの定義はとかく難解で評判がよくないのですが、設計・開発については、2015年
版の定義は2008年版より理解しやすい定義になったのではないでしょうか。

■□■ より詳細な要求事項? ■□■
上記設計・開発の定義の中に出てくる要求事項は、「明示されている,通常暗黙のう
ちに了解されている又は義務として要求されている,ニーズ又は期待」
(ISO9000:2015箇条3.6.4)です。

今回の事件でいえば、「杭を打つという仕事のニーズと期待」が要求事項になりま
す。その要求事項は明示されている場合もありますが、通常暗黙のうちに了解されて
いる又は義務として要求されているものを含みます、というのがISOの定義です。

設計・開発は「要求事項をより詳細にする活動(プロセス)」だとISOでは言ってい
る(定義している)のですが、より詳細のレベルは組織の持つ固有技術、技能などに
よってさまざまであろうと思います。

■□■ 設計・開発の注記 ■□■
今回のISO9001:2015の定義は、附属書SL※の規定により、注記は定義の一部を成す
(NOTE ○○ to entry)とされましたので、注記の3つを調べてみたいと思いま
す。

注記1
「設計・開発へのインプットとなる要求事項は,調査・研究の結果であることが多
く,また,設計・開発からのアウトプットとなる要求事項よりも広範で,一般的な意
味で表現されることがある。要求事項は,通常,特性を用いて定義される。プロジェ
クトには,複数の設計・開発段階が存在することがある。」

ここでのポイントは「要求事項は,通常,特性を用いて定義される。」でしょう。
杭打ち工事においては、どんな特性が要求されていたのでしょうか。

■□■ 注記の2 ■□■
注記1につづいて注記の2には、設計という用語と開発という用語について触れてい
ます。通常、開発というと「研究開発」を思い浮かべ、設計より前の段階であると思
う人もいるかもしれませんが、開発は設計と同じ段階であるとして、ISOでは以下の
ように定義しています。

注記2
「注記2 “設計”,“開発”及び“設計・開発”という言葉は,あるときは同じ意味
で使われ,あるときには設計・開発全体の異なる段階を定義するために使われる。」

■□■ 注記の3 ■□■
設計・開発の注記3には、いろいろな設計・開発があるとして次のように定義されて
います。

注記3
「設計・開発されるものの性格を示すために,修飾語が用いられることがある[例 
製品の設計・開発,サービスの設計・開発又はプロセスの設計・開発]」

杭打ち工事を考えると、注記3でいう「プロセスの設計・開発」が該当するものと思
われます。

今回の事件は、施工における設計・開発を考えるよい機会になると思います。

建設施工における設計・開発 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.108 ■□■   
*** 建設施工における設計・開発 ***
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■□■ くい打ち工事の品質管理 ■□■

連日、横浜のマンションの報道が各種メディアでなされています。
起きたこと、経過はまだすべてが明らかではありませんが、なぜそのようなことに
なったのか考えさせられます。今後、事実が明らかになっていくものと思います。

■□■ 外注の品質管理 ■□■

今回の事件でクローズアップしているのが外部委託の品質管理です。先週の日経新聞
でも大きく取り上げられていました。建設業界の重層構造に切り込む記事でした。

ISO9001:2015改正においては、箇条8.4「外部から提供されるプロセス、製品及び
サービスの管理」において、アウトソースの管理を要求されています。

このこと、すなわち外注の品質管理が今回そのままずばりの事象として社会問題化し
ました。

■□■ ISO9001:2015を見てみよう ■□■

改めてISO9001:2015を見てみましょう。8.4.1には次のようにあります。

「組織は,外部から提供されるプロセス,製品及びサービスが,要求事項に適合して
いることを確実にしなければならない。
組織は,次の事項に該当する場合には,外部から提供されるプロセス,製品及びサー
ビスに適用する管理を決定しなければならない。

a)外部提供者からの製品及びサービスが,組織自身の製品及びサービスに組み込む
ことを意図したものである場合

b)製品及びサービスが,組織に代わって,外部提供者から直接顧客に提供される場合

c)プロセス又はプロセスの一部が,組織の決定の結果として,外部提供者から提供さ
れる場合

組織は,要求事項に従ってプロセス又は製品・サービスを提供する外部提供者の能力
に基づいて,外部提供者の評価,選択,パフォーマンスの監視,及び再評価を行うた
めの基準を決定し,適用しなければならない。

組織は,これらの活動及びその評価によって生じる必要な処置について,文書化した
情報を保持しなければならない。」

■□■ 組織とは誰か ■□■

8.4.1の一番最後には次のようにあります。

「組織は・・・外部提供者の評価,選択,パフォーマンスの監視,及び再評価を行う
ための基準を決定し,適用しなければならない。組織は,これらの活動及びその評価
によって生じる必要な処置について,文書化した情報を保持しなければならない。」

ここでいう組織は、いうまでもないことですが、外注にプロセスを発注する組織のこ
とです。

■□■ 管理の方式及び程度 ■□■

8.4.2においては「管理の方式及び程度」を決めなければならないとされています。

「管理の方式及び程度」を決めるのは組織です。
例えば、施工業者にはISO9001でいう「設計・開発」はシステムとしてないという説
がありますが、発注する側から見るとそれで大丈夫なのでしょうか。

「設計・開発」を考えるときには、施工における製品とは何であるかを考える必要が
あると思います。