シンポジウム「つくる」より | 平林良人の『つなげるツボ』

———————————————————-
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.4 ■□■
  *** シンポジウム「つくる」より ***
———————————————————-

テクノファ代表取締役の平林です。

今回はISO国際会議から離れて、先週(1月19日)、日本経済新聞社本社ビル
で開催されたシンポジウム「つくる」のパネリストとしての経験を話させて
いただきます。

■□■ 「本物」とは ■□■

日経産業新聞からのお誘いで、シンポジウム(公開討論会)「つくる」のパ
ネリストを務める経験をしました。パネリストというのは、公開の席で自分
の意見をいう者のことをいいますが、ある程度の準備を必要とします。

そのシンポジウムに与えられたテーマは「本物をつくる」というものでした。

モデレータ(moderator:司会をすると共に発言者の調整をする)は、東京大
学のY先生が務められました。

まず、本物とは何かが問題となりましたが、 Y先生は「本物」を次のように
定義されました。

本物とは、顧客の“真のニーズ・潜在ニーズを満たす”ものである。

■□■ 真のニーズとは何か ■□■

シンポジウムに与えられたテーマは「本物をつくる」ですから、本物とは何
かがパネラーの間に共有できないと「つくる」ところにまで議論が進みませ
ん。

本物の定義でいわれた「真のニーズ」とは何でしょうか?

そもそも顧客はなぜ製品を買うのでしょうか。製品を買った顧客は、当然そ
の製品から提供される「サービス」を期待しているのではないか、と議論は
進んでいきました。

コンピュータを買う人は、コンピュータがデータを蓄積してくれる、メール
を発信してくれるなどのいろいろなサービスを期待しています。

コンピュータという箱が欲しくて買うわけではない、コンピュータというハ
ードではなくそこからもたらされるサービスを買うのだと議論ははずんでい
きました。

■□■ サービスとは奴隷である ■□■

同じくパネリストとして参加された一橋大学のK先生によると、サービス
(service)という言葉はスレーバリー(slavery:奴隷であること)の派生
なのだそうです。

すなわち、製品は顧客に何らかのサービスをしなければならないが、そのサ
ービスは奴隷であるがごとく主人のために徹底して尽くさなければならない、
顧客がいままで「ありそうでないと感じていたサービス」を、現実に提供す
ることが真のニーズに応えることであろうというお話でした。

テクノファのように、「ISOマネジメントシステム研修」を製品としているの
であれば、その製品であるサービスは徹底して顧客の欲しいもので
なければならないということです。

テクノファの本物の研修をご紹介します。

HOME


最新情報09/01/ 27 「ISO9001新旧規格対比解説コース」 参照
このセミナーは、大好評の「ISO9001 2008年版規格はこう変わった!」を
全面リニューアルした本物の解説コースです。

でも、顧客の要望にもいろいろあります。顧客の要望はどのようにバラつい
ているのでしょうか、要望をいろいろなジャンルに分類して、それぞれの顧
客の要望に合ったサービスとは何なのかを分析することも大変重要になって
きます。

それらのことを徹底して追及してはじめて真の顧客ニーズ・潜在ニーズが把
握でき、それらを「つくる」ことが次の議論となっていきました。

■□■ 本物をつくるとは ■□■

さて、真のニーズを把握することができたとして、それら「本物をつくる」
にはどうしたらよいのかと議論は進みました。

真のニーズを把握できても、つくるプロセスを正しく行わなければ、本物は
つくれないことになってしまいます。

ここで、Y先生から、「本物をつくる」ことの定義が提案されました。

本物をつくるためには真の顧客ニーズを把握して、それをデザイン(設計)
しなければならない。デザインとは「要求達成手段の指定」である。そして、
デザインされたものを心を込めて実現することが、「本物をつくる」ことで
あるというものでした。

真の顧客ニーズを掴んだ最近の例で言うと、ユニクロのヒートテック(下着)
がそうではないか、「ありそうでないもの(1000円位と安価にもかかわらず
汗をかいても寒くならない)」が製品化されたとしてパネリストである
シーメンスのMさんから紹介がありました。

「そういえば」とパネリストのオムロンAさんがいうには、「ホンダのカブ
とか、グリコのポッキーも本物ではないでしょうか、なんといっても
何十年も顧客から愛されていますから」

私は今回のシンポジウムを終えたとき、何となくデジャヴ「deja vu:既視体
験」感に襲われました。

家に帰ってはじめて一連のストーリーは、ISO9001規格に書かれていることだ
と気が付きました。本物をつくることはISO9001マネジメントシステムにつな
がっていたのです。