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9)SNSをキャリアの分身として活用する
SNSの活用は、これからのキャリア形成に大きな影響を与える。
著者は、SNS(X(旧Twitter)、Facebook、YouTube、LinkedIn、note、NewsPicks)のアカウントを実名で登録し、キャリア論に関する情報を発信する場として活用している。
SNSのプロフィールは、あなた自身の「分身」となる。この「分身」が、あなたの「市場価値」を伝える重要な役割を果たすのである。
SNSのプロフィールを活用するには、以下のようなポイントがある。
①「ウソ」は書かない
「市場価値」を高めたいからといって、実績や経験を偽ってはいけない。プロフィールに記載するのは、あくまでも事実に基づいた情報であることが基本である。
②「これまでのキャリア資本」を見える化
これまで培ってきたキャリア資本を、誰が見ても分かる言葉で表現する。
ここで重要なのは、「あなたのことを知らない人」に向けてプロフィールを書いているという自覚である。身近な人には分かる表現でも、初めてプロフィールを見る人には伝わらないことがある。専門性、経験、実績、保有資格などを、具体的かつ分かりやすく記載することが大切である。
③「活躍できるフィールド」や「実績」を書く
自分がこれまで何を成し遂げてきたのか、そして、どのような領域で力を発揮できるのかを明確にする。
限られた文字数の中で、「自分は何ができるのか」「どのような分野で貢献できるのか」が伝わるプロフィールを作成する。
④ SNSの有機的な連動を構築する
それぞれのSNSを単独で活用するのではなく、有機的につなげておく。
たとえば、noteの記事を読んだ人が、XやFacebook、YouTube、さらに著書の紹介ページなどへアクセスできるように、各メディアを「つながらせて」おくのである。
<プロフィールには何を書くのか>
プロフィールとは、これまでの「過去の実績」を示すものでもある。しかし、そのプロフィールを継続的にバージョンアップしていくためには、「これからの行動」が欠かせない。
ビジネス資本とは、「あなたの強み」である。さまざまな資格や経験を土台にしながら、さらにビジネス資本を構築していく。
まず、自分が持っているビジネス資本を書き出してみる。そして、「これからどうなりたいのか」を具体的に思い描いたうえで、現在の自分に何が足りないのかを明確にする。その不足しているものを逆算し、具体的な行動につなげていくのである。
<発信しながら社会関係資本を構築していく>
プロフィールは、一度作成して終わりではない。自分の経験や実績、現在取り組んでいること、これから目指していることに合わせて、継続的に「上書き」していくのである。
Xなどで「今、取り組んでいること」や「これから目指していること」を発信し続けることで、あなたの考えや活動に共感する「ファン」を獲得していく。
あなたが蓄積してきたビジネス資本に関心を持ち、そこから学びたいと考える人が、新しい仕事や機会を運んできてくれることもある。
同じ会社や同じ職場の同僚だけで形成されたネットワークでは、社会関係資本を十分に蓄積することは難しい。異なる業界、異なる職種、異なる価値観を持つ人々とのネットワークを積極的につくっていくことが重要である。
個人が収入を得る方法は、以前に比べて格段に増えている。だからこそ、行動するか、行動しないかが大きな分かれ目になる。「組織にキャリアを預けている」だけでは、自らの力で稼ぐことは難しい。
そこで重要になるのが、「本業×副業・複業」という考え方である。
たとえ複業ですぐに収入を得られなくても、そこで得られる経験や人脈、知識は、新たな「キャリア資本」として蓄積されていく。
プロフィールを上書きしながら、自分自身の価値を高めていく。「ビジネス資本」を見える化し、SNSで発信することで「社会関係資本」を築き、新たな世界へと踏み出していく。
こうした行動を継続することで、キャリア資本は蓄積され、自分自身の市場価値も徐々に高まっていくのである。
10)キャリア力を高めながら、アウトプット型キャリア形成へ
これからのキャリア形成において、自ら発信していくことは、欠かせない行動の一つになる。
その中でも重要なのが、「書く力」である。書く力とは、自分が考えていることや伝えたいことを、相手に分かりやすく届けるコミュニケーション能力の一つといえる。
しかし、書くことに苦手意識を持っている人も少なくない。
書くことが苦手なのは、「能力」の問題ではなく、「経験」の問題であるともいえる。話したり、聞いたりすることに比べると、文章を書くには、「よし、書こう」と意識して取り組まなければならない。つまり、書いていないから「苦手」なのである。
まずは、毎日15分だけでも書いてみよう。
その手順は、次のとおりである。
① 誰に、何を伝えたいのかを明確にする
まず、「誰に、何を伝えたいのか」を明確にする。
単なる日記を書くのではなく、誰かに読んでもらうことを意識して文章を書く。日頃から「書きたいこと」のリストをつくり、テーマを蓄えておくことも有効である。
また、「いずれ書く」ということを前提にして、人の話を聞いたり、本や記事を読んだりする。そうすることで、日常のさまざまな出来事が、文章を書くための材料になっていく。
② まず書き、後から磨いていく
SNSなどに投稿する文章は、公開した後でも何度も見直し、修正することができる。ここに「書く力」を磨くポイントがある。
まずは書いてみる。ある程度まとまったら公開する。そして、後から読み返し、気づいたことがあれば修正する。
たとえば、noteであれば、公開した後でも文章を加筆・修正することができる。
最初から「完成度」を求める必要はない。まず書く。そして、書き続けながら改善していく。その積み重ねこそが、「書く力」を磨く最善の方法なのである。
では、なぜ書くのか。
それは、「書く力」を磨くことによって、自分の可能性を広げ、人生の豊かさや「幸せ」を増やすことができるからである。
「書く」という行為を雑にしていると、自分の考えや気持ちを整理する機会も失われてしまう。
一方、「書く」ことで自分自身と向き合い、文章を届ける相手の顔を思い浮かべながら、言葉を選ぶことができる。
だからこそ、「書くこと」は、文章を読む人への思いやりでもある。
自分の考えを言葉にし、それを誰かに届ける。そこから新たな出会いや共感、仕事の機会が生まれる。
「書く力」を磨くことは、単なる文章力の向上ではない。自分自身のキャリアを切り拓き、社会との新たな接点をつくるための重要なキャリア力なのである。
11)やりたくないリストをつくる
大切なことは、不要なストレスをできるだけ排除していくことである。
人間の「やる気」は、長く続くものではない。最初は強い意欲があっても、3日もするとフェードアウトしてしまうことがある。
「やりたいことリスト」をつくり、それを着実に実践できる人であれば、何も問題はない。しかし、やりたいことが見つからないからといって、無理に見つけ出す必要もない。
その前に、「やりたくないことをやめてみる」ことから始めてみる。
そこで効果的なのが、「やりたくないリスト」をつくることである。
著者のやりたくない事リスト
| 1 | 渋滞や行列にならぶこと |
| 2 | お付き合いのゴルフ |
| 3 | 翻訳の仕事 |
| 4 | やる気のない学生への授業 |
| 5 | 自分が参加しなくてよい会議への参加 |
(出典:本書P208)
やりたくないことをリストにまとめ、日頃から意識しておくことで、無用なストレスを避けることができる。これは、ビジネスパーソンにとって大切なことである。
ストレスが軽減された状態で働くことができれば、仕事への集中力が高まり、生産性の向上にもつながるからである。
自分が思い描く理想のキャリアに近づいていくためには、主体的に行動する必要がある。誰かに変えてもらうのではなく、自ら変化を起こしていくのである。
そのためには、「何をするか」だけではなく、「何をしないか」を決めることも重要である。
やりたくないことを一つずつ手放し、ストレスを軽減することができれば、毎日の生活はより楽になる。精神的にも豊かな気持ちで過ごせるようになる。
そして、その余裕が巡り巡って、仕事にも人間関係にも良い影響を与え、人生に好循環を生み出していくのである。
12)生き方デザインで、ストレスと向き合う
ストレスを感じたときの向き合い方は、人それぞれである。
何となく元気が出ない、気持ちが晴れないというときには、次の二つを実践してみるとよい。
① 没入時間をつくる
「没入時間」とは、「フロー」や「ゾーン」と呼ばれる状態に入る時間を指す。
自分が持っているスキルに対して、適度に高いチャレンジに取り組むことで、人は「没入」の状態に入りやすくなる。
「没入時間」を意識的につくることで、少なくともその時間は、「不安」や「退屈」から離れることができる。そして、活動を終えた後には、晴れやかな気持ちを取り戻すことができる。
自分が好きなことや得意なことに集中する「没入時間」には、心をリフレッシュさせる効果がある。
② 生き方をデッサンする
著者は、手帳の余白ページに「これからの生き方のデザイン」を書き込むようにしている。
「どこに向かって歩いていきたいのか」「何を大切にして生きていきたいのか」を、自分自身に問いかける。
人と比べる必要はない。自分が生きている限り、「これから何を成し遂げたいのか」「どのような人生を送りたいのか」を、自分自身の言葉でデッサンしていくのである。
生き方のデザインは、一度描いて完成するものではない。人生の変化や自分自身の成長に合わせて、常にバージョンアップしていくものである。
著者は、おおむね2週間に一度、このための時間を設けている。
忙しい日々の中でも立ち止まり、自分はどこに向かっているのかを確認する。その時間が、自分らしい生き方をデザインし、ストレスと上手に向き合っていくための大切な時間になるのである。
生き方デッサンシート
| 生き方デッサンシート | ||
|---|---|---|
| 1 | これからのキャリアの方向性 (どこに向かって歩きたいか) |
|
| 2 | これからのキャリアビジョン (何を成し遂げたいのか) |
|
| 3 | これからのキャリアパーパス (何を大切にしたいか) |
|
(出典:本書P219)
5.自分らしいキャリアを築くために、最大限に組織を活かす
筆者がキャリア研修を行う中で、大きな違和感を覚えることがある。それは、現場社員から聞かれる「会社は何もしてくれない」という声と、経営層や人事担当者から聞かれる「ミドルは使えない」といった発言である。お互いが不信感を抱いている関係は、いかなる業種であっても、望ましい状態とはいえない。
自分らしい働き方を大切にしていくうえで、重要なカギを握るのが、所属する組織との関係である。
働き方が多様になったとはいえ、組織とのかかわりなしにキャリアを形成することは難しい。重要なのは、組織にキャリアを委ねる「組織内キャリア」から、自らの意思でキャリアを形成していく「自律型キャリア」へと、キャリアをトランスフォームしていくことである。
1)組織内キャリアから自律型キャリアへ
社会人として働き始めると、多くの人は「組織の中の自分」を生きるようになる。組織に帰属すること自体は、決して悪いことではない。しかし、何のために働くのかという目的を見失い、ただ毎日を働き続けているビジネスパーソンも少なくない。
その背景には、世代によって異なるキャリアに対する捉え方がある。ここでは、その特徴を3つに整理してみたい。
①「キャリアは転職することで形成される」という考え
30代のビジネスパーソンは、キャリア形成に敏感な世代である。自分の望む働き方ができない、あるいは現在の会社にこれからの可能性を感じられない場合には、新しい職場を求めて転職するという選択をする人も多い。
しかし、キャリア形成は転職だけで実現するものではない。現在所属している組織の中で、どのような仕事に挑戦し、どのような経験や能力を蓄積していくのかという視点も重要である。
②「キャリアとは、自分の思いや哲学である」という考え
40代のビジネスパーソンは、「キャリア」という言葉そのものに対する拒否反応は比較的少ないだろう。「これからどうなりたいのか」「どのような働き方をしたいのか」といった問いに向き合うものの、具体的に何から始めればよいのか迷っている人も少なくない。
キャリアを「自分の思い」や「哲学」として考えるだけでは、具体的な行動にはつながりにくい。自分のありたい姿を描くだけでなく、現在の組織をどのように活用し、どのような経験やキャリア資本を蓄積していくのかまで考える必要がある。
③「仕事で問われるのは、結果がすべてだ」という考え
50代のビジネスパーソンが働き始めた頃、社内で「キャリア」という言葉が使われることは、今ほど多くなかった。企業の中で行われる研修も、「人材研修」と呼ばれることが一般的であった。
「人材」とは、基本的に組織の中で働く人を前提とした考え方である。そのため、仕事において求められるのは成果であり、「キャリアについて考えること」と「仕事で成果を上げること」は別のものとして捉えられがちであった。
その後、個人の働き方や生き方が重視されるようになり、企業内の研修も「人材研修」から「キャリア研修」へと、その名称や内容が変化してきた。
しかし、50代のビジネスパーソンの中には、「そもそもキャリアとは何なのか」「働くうえでキャリアなんて関係ない」と感じる人も少なくない。長年にわたり、組織の一員として成果を上げることを第一に考えてきたからである。
こうした世代にとっては、キャリアを「仕事とは別に考えるもの」と捉えるのではなく、これまで積み重ねてきた経験や能力を、これからの人生や仕事にどのようにつなげていくかという視点から捉え直すことが重要である。
出典:
田中研之輔(著)(2022) 「今すぐ転職を考えていない人のための キャリア戦略」 ディスカヴァー・トゥエンティワン
(以上)
(つづく)吉末直樹
