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3)思い通りにいかないことで、レジリエンスを鍛える
毎日の生活では、思い通りにいかないことがたくさんある。
商談に向かう途中で電車が長時間運転を見合わせたり、オンライン会議でネット環境に不具合が生じたりすることは、枚挙にいとまがない。こうした予期せぬ事態に直面したとき、いかに落ち着いて対処できるかが重要となる。
ここで念頭に置きたいのが、「レジリエンス」である。レジリエンスとは、思い通りにいかない出来事に対して、しなやかに対応する「状況適応力」であり、心が折れそうになったときに、目の前の逆境を乗り越えていく力である。
まず行うべきことは、目の前で起きている出来事と、自分が置かれている状況を的確に把握することである。
例えば、電車が長時間運転を見合わせている場合、「運転再開はいつになるのか」「他の移動手段はないのか」「予定を変更する必要があるのか」などを冷静に判断する。
やってはいけないのは、その状況に対して何も行動せず、ただ待ち続けることである。重要なのは、状況を受け入れたうえで、次に取るべき行動を考えることである。
誰もが経験する「思い通りにいかない出来事」を、レジリエンスを磨く機会として捉えてみよう。レジリエンスを高める方法は、大きく2つある。
一つは、思い通りにいかない出来事を実際に経験し、その経験を通じてレジリエンスを高めていく方法である。さまざまな困難や失敗を乗り越える人生経験の積み重ねによって、レジリエンスは少しずつ身についていく。
もう一つは、レジリエンスが求められる状況をあらかじめ想定し、複数の対処方法を選択肢として用意しておくことである。
「もし電車が止まったらどうするか」「オンライン会議で通信トラブルが起きたらどうするか」など、起こり得る事態を事前に想定しておく。あらかじめ複数の選択肢を持っていれば、実際に問題が起きたときにも、慌てずに対応することができる。
思い通りにいかない出来事は、避けることができない。しかし、その出来事を「困ったこと」で終わらせるのではなく、「レジリエンスを鍛える機会」と捉えることはできる。
日々の小さな想定外を一つひとつ乗り越えていくことが、変化の激しい時代を生き抜くためのしなやかな強さにつながっていく。

4)ネガティブ癖を直し、ポジティブを習慣化する
不安を感じたり、孤独を感じたり、むなしさを感じたりすることがある。これからの人生を生き抜いていくことに希望を見いだせず、落ち込んでしまうこともあるだろう。
しかし、ネガティブ思考は「癖」のようなものであり、意識することで少しずつ改善していくことができる。
これまでの人生を振り返ると、私たちは試験の結果などによって評価される文化の中で過ごしてきた。そこでは、「なんでこんな結果なの」「ちゃんとやりなさい」といった、ネガティブな感情を助長する言葉を浴びせられることも少なくなかったのではないだろうか。
しかし、これからは自分自身への声かけを変えてみよう。
「失敗は、次の成功につながる財産である」
「結果に一喜一憂するのではなく、そこに至る過程を大切にしよう」このような言葉を自分自身にかけることが大切である。
人生は、すべてが思い通りにいくものではない。むしろ、思い通りにいかないことがあるからこそ、物事がうまくいったときに大きな喜びを感じることができる。
そして、ポジティブな人生をつくるために大切なのは、自分自身の過去や経験を認めることである。
つらい時期を乗り越えてきた自分を認め、よく頑張ってきたと自分自身を褒めてみよう。過去の自分を肯定的に受け入れることで、現在の出来事に対する見方も少しずつ変わってくる。
過去に起きた出来事そのものを変えることはできない。しかし、その出来事をどのように捉えるかは、これから変えることができる。
過去の痛みや苦しみを否定するのではなく、「あの経験があったからこそ、今の自分がある」と捉え直すことができたとき、私たちは現在の生活に前向きに向き合えるようになる。
ネガティブは「癖」、ポジティブは「習慣」。
自分を否定する癖を少しずつ手放し、自分を認め、励ます言葉を習慣にしていこう。
より良いキャリアを築くためには、知識やスキルだけでなく、自分自身との向き合い方を変えていくことも大切である。日々の小さな意識と行動の積み重ねが、やがてより良いキャリア習慣をつくっていく。

5)セルフアウェアネス(自己認識)を磨く
これまで、自分のことよりも仕事を、家族よりも会社を優先してきた方は多いのではないでしょうか。
これからは、「働くこと」や「自分自身の生き方」について、もう一度考えてみましょう。毎日を自分の手でデザインし、自分らしい働き方や生き方を選択することができます。働きがいを感じながら働き、生きていく。その人生の主人公は、他でもない自分自身です。
ここで意識したいのが、「セルフアウェアネス(自己認識)」です。
セルフアウェアネスとは、「自分はどのような人としてありたいのか」「自分は何を大切にして生きたいのか」を理解することです。同時に、自分が周囲からどのように見られているのかという「他者からの認識」との違いにも目を向ける必要があります。
自分自身が認識している「自分」と、周囲から見えている「自分」は、必ずしも一致するとは限りません。その違いを理解することで、自分の強みや課題をより客観的に捉えることができます。
ただし、他者からの外的認識を正確に理解することは容易ではありません。だからこそ、まずは「自分はどうありたいのか」という内側からの問いを軸にすることが大切です。
「自分は何を大切にしたいのか」
「どのような人として生きていきたいのか」
「どのような働き方をしたいのか」
こうした問いを繰り返し、自分自身と対話していく。その積み重ねによって、セルフアウェアネスは少しずつ磨かれていきます。
人生の主人公は、自分自身です。これまで会社や周囲の期待を優先してきた人こそ、これからは自分自身の価値観やありたい姿を大切にし、自分らしい人生をデザインしていきましょう。

6)今日の達成に感謝し、自己肯定感を育てる
今日のあなたは、どんな一日でしたか。
そして、今日をどんな一日にしたいですか。
何らかの悩みを抱えていると、その悩みの大きさに応じて、自己肯定感が低くなることがあります。
「仕事で思うような結果を出せないし、プライベートもうまくいかない」と感じることもあるでしょう。ここで大切なのは、できないことを責めるのではなく、できていることを認めていくことです。
普段の生活において、私たちはさまざまな評価にさらされています。しかし、他人からの評価だけを基準にする必要はありません。自分自身を認めるためにも、自分なりの評価軸を確立し、自分の中で一日の達成を評価することが大切です。
所要時間:毎晩、5分間
やりかた:自己達成シートに、今トライしている事を書き込む

そのために、一日の終わりに5分間、「自己達成シート」を記入します。
私たちの脳は、うまくいかなかった出来事や失敗を鮮明に記憶しやすい傾向があります。だからこそ、「自己達成シート」には、今日一日でできたこと、達成したこと、努力したことを肯定的に記入します。
自己肯定感とは、誰かから与えられるものでも、お金で買えるものでもありません。
毎日の水やりによって植物が育つように、一日の終わりに「自己達成シート」を記入することで、自己肯定感を少しずつ維持し、高めていくことができます。

自己達成シート

今日の自己達成シート
1 ビジネス
2 ライフ
3 チャレンジ

(出典:本書P178)

7)セルフメンテナンスをする
キャリア相談をしていると、次のような相談が多く寄せられる。
「明日からまた1週間、仕事が始まると思うと、体調が悪くなるのです」
こうした状況を繰り返さないためにも、週末の休みに入る前にセルフメンテナンスを行うことが重要である。
<セルフメンテナンスの方法>
所要時間: 金曜日の夜、10分間
やり方:
① 1人になれる空間を確保する。
② 1分間目を閉じ、気持ちを落ち着かせる。
③ 手元に紙や手帳を用意し、1週間を振り返る。うまくいったこと、うまくいかなかったことを、それぞれ3つずつ書き出す。
④ セルフメンテナンスチェックシートを使い、自分の状態を可視化する。
頭の中だけで1週間を振り返っても、なかなか整理されない。1週間の出来事を言語化することで、自分のマインドの状態を客観的に捉えることができる。
マインドメンテナンスの狙いは、仕事上のストレスを週末に持ち込まないようにすることである。
セルフメンテナンスチェックシート

項目 評価(1~5)
1.仕事のアウトプット 1  2  3  4  5
2.人間関係 1  2  3  4  5
3.適切な食事 1  2  3  4  5
4.身体の状態 1  2  3  4  5
5.運動の継続 1  2  3  4  5
6.睡眠の質と時間 1  2  3  4  5

(出典:本書P183)

セルフメンテナンスのコツは、自分の状態をどれだけ客観的に見ることができるかにある。
まず確認したいのが、「仕事のアウトプット」である。仕事のアウトプットは、日々の働き方に直結する。重要なのは、うまくいかないときに落ち込むことではなく、どれだけ的確にリカバリーできるかである。
次に、「人間関係」である。著者は、関わるすべての人を応援することを肝に銘じているという。自分が大切にする人間関係の軸を決めておくと、周囲の状況に振り回されにくくなる。
家族、友人、仕事関係者、知人などとのコミュニケーションが発生した際には、より良いコミュニケーションを心掛ける。常に「自分にできる最善のことを一つ一つ実践する」という姿勢が大切である。
そして、健康状態を維持することも非常に重要である。
働き方改革によって長時間労働の是正が進む一方で、同時に生産性の向上も求められている。そこで注目されているのが「ウェルビーイング」である。ウェルビーイングとは、精神的・身体的・社会的に良好な状態を示す概念である。
適切な食事、身体の状態、運動の継続、良質な睡眠などは、キャリア形成においても重要な要素といえる。これらをセルフメンテナンスの必須項目として、日頃から意識していくことが大切である。
身体のコンディションが不安定な人には、ビジネスチャンスが訪れにくい。自分自身をメンテナンスできない人には、仕事やプロジェクトを適切にマネジメントすることも難しいと思われるからである。
だからこそ、週末を迎える前に自分自身の状態を振り返り、心と身体を整える時間を持つことが重要である。セルフメンテナンスは、単なる休息ではなく、持続的に働き、キャリアを形成していくための重要な習慣なのである。

8)ビジョンワーク
日曜日の夜は、大切な時間である。
マインドメンテナンスとボディメンテナンスを行い、充実した週末を締めくくるとともに、月曜日から始まる新しい一週間への準備をする。
キャリア形成において、明確なセルフビジョンを描けているかどうかは、大きな違いとなる。
セルフビジョンとは、「数年後、どのような自分でありたいのか」という、自らが描く理想の自己イメージである。大切なのは、セルフビジョンを遠い将来の姿として描くだけではなく、具体的なイメージとして思い描き、日々確認しながらキャリアを形成していくことである。
そこで、日曜日の夜には、月曜日から金曜日までの一週間について、セルフビジョンワークを行うことを勧めたい。15分程度の時間でも十分である。

以下は、著者の2021年4月18日のビジョンワークシートの例

ビジョンワークシート(どうありたいのか)
ビジネス キャリア自律型の社内研修に登壇する。ZOOMでの実施となるが、参加者一人ひとりが抱える問題や悩みに的確なフィードバックができるよう、最善の準備をして臨む。
形式的に社内研修を実施するのではなく、参加者にとって人生を変えるきっかけとなるような研修を実施できるビジネスパーソンでありたい。
ライフ 長女は高校に進学し、次女は中学校に進学する。それぞれが新しい環境での生活をスタートさせることで、友人関係や学習への適応など、さまざまな変化に直面することになる。
娘たちが学校生活について自然に話してくれるような関係を築くことを心がける。そのためにも、自分が考えていることや大切にしていることを、日頃から伝えていく。
父親として一方的に指導するのではなく、メンターのような立場で彼女たちの成長をサポートしていきたい。

キャリア戦略とは、「どうなりたいか」という理想を語ることではない。これまでの自分自身、現在置かれている状況、そして、それらを取り巻く社会のトレンドとの関係性を分析したうえで定める、中長期的な「働き方と生き方の行動指針・計画」である。
キャリア形成において大切なのは、自らのキャリアについて当事者意識を持つことである。上司や会社から指示され、仕事のアウトプットだけを求め続ける働き方は、一時的な成果を生み出すことはできても、長期的にはむなしいものになりかねない。
自らのキャリア戦略を考え、自分自身の存在と、自らを取り巻く環境を把握し、そのうえで社会に貢献していく。これこそが、「働く」ということの本質なのではないだろうか。
自らのキャリアにオーナーシップを持ち、より豊かな人生に向けて、主体的かつ戦略的に舵を取っていく。そのために、ビジョンワークは重要な役割を果たすのである。

出典:
田中研之輔(著)(2022) 「今すぐ転職を考えていない人のための キャリア戦略」 ディスカヴァー・トゥエンティワン

(以上)

(つづく)吉末直樹