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ASEAN地域の取組方針 | ISO情報テクノファ

ISO審査員及びISO内部監査員に経済産業省の白書を参考に各種有用な情報をお届けします。

■ASEAN地域の取組方針

(総論)
ASEAN地域は、日系企業が多く進出しており、特に製造業におけるASEAN地域へのこれまでの投資額は、日本は世界の中で最もトップクラスである。加えて、近年はデジタル技術の活用などにより大きく成長しており、我が国にとって重要な地域である。こうしたASEAN地域に対して、同じアジアの中国、韓国だけでなく、米国や欧州などの民間企業による積極な進出や、これらの国々によるASEAN地域を含むインド太平洋地域に冠する戦略の策定が進むなど、国際競争も激しくなっている。

こうした中、日ASEANの経済関係を更なる強化を目指すには、ASEAN地域が直面している社会課題へ共に対応し、ASEAN地域と一体となって成長していくことが重要。このため、経済産業省は2022年1月、アジア未来投資イニシアティブを発表し、日ASEANともに目指すべき未来像を明らかにした。今後、政務や事務方といったレベルを問わず、二国間、多国間の枠組を活用しながら、日本としてこれまで実施してきた産業協力の充実や強化を図るだけでなく、アジア未来投資イニシアティブで示したように、将来に向けて持続可能な経済社会の構築を目指していく。

(日ASEAN関係)
(1)「日ASEANイノベーティブ&サステナブル成長プライオリティ」の発出について
2021年9月15日、ASEAN事務局長及びASEAN加盟国との間で第27回日ASEAN経済大臣会合が、テレビ会議方式で開催され、日本からは梶山前経済産業大臣が出席した。会合において、「日ASEANイノベーティブ&サステナブル成長プライオリティ」(以下、プライオリティ)を発出し、①日ASEAN経済強靭化アクションプランの着実な実行、②「産業」、「都市部」、「地方部」の3分野のイノベーション&サステナビリティに焦点を当てる重点分野の特定、③3分野を踏まえた日ASEAN経済強靭化アクションプランの拡充、④昨年の同会合で立ち上げたイノベーティブ&サステナブル成長対話(以下、DISG)を起点とした日ASEANの更なる官民連携の促進、について、日ASEAN双方が連携して取り組む優先課題として世界に発信した。

(2)日ASEAN経済強靭化アクションプランの実行状況について
①ADX実証事業について
昨年に引き続き、日本企業が有する技術・ノウハウ等の強みを活かしながら、ASEAN各国やインドの企業との協働を通じ、現地の社会課題解決に貢献する実証事業を支援。2021年度はASEAN地域を対象に17件採択した。

②DISGについて
昨年に設立した、「イノベーティブ&サステナブル成長対話(Dialogue for Innovative and Sustainable Growth(DISG))」を引き続き実施。日ASEAN双方の産業界、アカデミアなど幅広い関係者の参画を得ながら、ウェビナーを計4回開催。グリーンやスマートシティ、人材、AJIF等の分野で新たな日ASEAN協力に関する議論を実施した。

③日ASEANビジネスウィーク
「イノベーション」と「サステナビリティ」をキーワードに、ASEANビジネスの現状と可能性を考察する機会として、「日ASEANビジネスウィーク~toward Innovative and Sustainable Growth~」を開催した。日本及びASEANの企業や有識者等が登壇するウェビナーを集中的に開催。オープニングセッションにおいては、梶山前経済産業大臣よりアジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ(AETI)を表明。①エネルギートランジションのロードマップ策定支援、②アジア版トランジションファイナンスの考え方の提示・普及、③再エネ・省エネ・LNG等のプロジェクトへの100億ドルファイナンス支援、④2兆円基金の成果を活用した技術開発・実証支援、⑤脱炭素技術に関する人材育成やアジアCCUSネットワークによる知見共有、の5つの柱に基づく具体的な支援策をパッケージ化し、ASEAN諸国に提示するとして発信した。

(3)アジア未来投資イニシアティブについて
2022年1月に行われた萩生田大臣の東南アジア訪問中、インドネシア外交政策コミュニティ、東アジア・ASEAN経済研究センター、日ASEAN経済産業協力委員会及び経済産業省の共催によるオンラインイベントが開催され、萩生田大臣から、ポストコロナを見据えたアジアでの経済協力の方向性を示す新たなイニシアティブとして「アジア未来投資イニシアティブ(AJIF)」を発表した。①ASEAN各国の実状と向き合い、実効的な解決策を提供する、②民間のイノベーションを最大限活用し、持続可能な経済社会の基盤を創る、③現地企業との協業などを通じ、日本と各国がパートナーとして地域の未来を共創していく、という3つの理念に基づき、未来志向の新たな投資を積極的に推進する。具体的には、①グローバル・サプライチェーンのハブとしての地域の魅力向上、②持続可能性を高め、社会課題の解決に資するイノベーションの創出、といった未来像の実現に向け、サプライチェーン、連結性、デジタル・イノベーション、そして人材への投資を強化する。

(ASEAN各国との関係)
(1)マレーシア
マレーシア2021年4月5日、マレーシアのアズミン国際貿易産業大臣が訪日し、梶山前経済産業大臣と会談を行った。会談では、日本企業のマレーシアへの投資促進に向けた課題について意見交換を行い、同国が重視する高付加価値産業への投資をはじめ、両国の経済関係を一層深化させていくことを確認した。また、両大臣は、日本貿易振興機構とマレーシア貿易開発公社による、貿易促進及びDX分野における連携拡大に向け取り組む旨の協力覚書の署名式に出席した。

(2)フィリピン
2021年6月11日、江島前副大臣はフィリピン共和国の独立記念日オンラインイベントにお祝いのビデオメッセージを送付した。メッセージ内で江島前副大臣は、サプライチェーン強靭化や、デジタル分野、グリーン成長分野での協力を進めていくことを訴えた。

(3)シンガポール
2021年6月9日、梶山前経済産業大臣はシンガポールのガン・キムヨン貿易産業大臣とTV会談を行った。会談では、梶山前経済産業大臣はアジアの脱炭素化・グリーン成長の実現に向け支援していく方針を説明し、両大臣は「日星エネルギートランジション対話」の立上げに合意した。また、RCEPやPTPPを通じ、自由で公平でルールに基づく経済秩序の構築に向けて連携を深めることについて確認した。同年11月9日、萩生田経済産業大臣が同ガン貿易産業大臣とTV会談を行い、AETIの推進や、デジタル分野における両国の協力、CPTPPやRCEPを通じた自由で公平な経済秩序の構築に向け連携を深めることについて確認した。

(4)タイ
2021年5月20日、梶山前経済産業大臣はタイのスパッタナポン副首相兼エネルギー大臣とバイ会談を行い、カーボンニュートラルの実現に向けたアジアでのエネルギートランジションに関する取組等について議論を行った。2021年8月11日、第5回日タイ・ハイレベル合同委員会に長坂前副大臣が参加しました。委員会では、長坂前副大臣立会いの下、経済産業省とタイ工業省及びデジタル経済・社会省との間で、Thailand4.0実現に貢献する「LIPE」の推進に向けて必要な協力を確認する覚書を、NEDOとNSTDAの間でBCG分野における技術研究開発の協力に関する覚書を締結した。

(5)ベトナム
2021年11月25日、日越投資カンファレンスが日本で開催され、これに合わせベトナムのチン首相及びジエン商工大臣が訪日した。日越投資カンファレンスには萩生田経済産業大臣が出席し、サプライチェーン強靱化やカーボンニュートラルに向けた協力を表明した。また、同日萩生田大臣はチン首相及びジエン商工大臣と個別に会談を行い、両国間の経済関係を深化させることを確認した。更に、ジエン商工大臣との会談後に「カーボンニュートラルに向けたエネルギートランジション協力のための共同声明」を発出し、2050年までにカーボンニュートラルに移行することを再確認した。

(つづく)Y.H

(出典)経済産業省 通商白書2022
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2022/index.html