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私とマネジメントシステムそしてISO(その18)

第18回

「私とマネジメントシステムそしてISO」の第18回目です。第5回で述べたTQC特徴6項目についてセイコーエプソンでの体験を入れながら話を進めています。
 TQC特徴6項目とは、第5回目でお話しした次の6項目です

5.1 全員参加の品質管理
5.2 品質管理の教育・訓練
5.3 QCサークル活動
5.4 QC診断
5.5 統計的方法の活用
5.6 国家的品質管理推進活動

今回は5.4「QC診断」についてです。

5.4 QC診断
QC診断というと「社長診断」を思い起こします。私の在籍していたセイコーエプソンでも工場長診断を行っていました。セイコーエプソンには工場が10か所以上、長野県諏訪市、松本市周辺にありましたので、忙しい社長(当時の社長は服部一郎氏)が工場を診断するということはありませんでした。ただ一度、1984、5年頃だと思いますが、松本にある信州精器村井工場を視察に来られました。
その後、服部一郎氏は日本を代表する若手経営者として、セイコーエプソングープを世界のエプソンへと羽ばたかせますが、1987年、日本での世界ロータリークラブ大会の期間中(日本大会議長として活躍中)に亡くなりました。享年55歳という若さでした。当時私はイギリスの工場長をしていましたが、青山葬儀場には都合で行けませんでした。服部一郎氏はイギリス工場設立のきっかけとなった創立者ですので、幾つかのエピソード、思い出がありますが、それらの話は後日にしたいと思います。

(1) 社内の人によるQC診断
 診断者により次の4つに分類されます。
  ①社長QC診断
  ②部長QC診断
  ③QCスタッフQC診断
  ④社内者によるQC相互診断(現在の内部監査)

 これらの中で一番重要なものが、①社長QC診断です。文字通り社長自身が工場、事務所、営業所等へ出向き自分の目で診断します。社長QC診断の目的は次の通りです。
 1) 品質方針の達成状況
  社長が自分で決めた方針の実施状況を自分で確認する。現場をみることで場合によっては、方針が適切ではない、ということが理解できることもある。
 2) 品質管理機能の達成
  例えば、工程内不良の再発防止、市場クレームの減少等の企業組織全体の機能の達成状況を診断する。
 3) 社長の勉強の場
  トップはとかく忙しい。普段現場を訪問する時間もなかなか取れない。この機会に組織全体の現場を知ることは、何にも変えられない大きな価値をもたらす。

(2) 社外の人によるQC診断
社外の診断者によって次の4つに分類されます。

 ①買手による売手のQC診断(二者監査)
 例えば大手メーカーは外注会社に対してQC診断を行います。また、自分達が製造部門を持たないメーカーは、自分達の製品品質に極めて強い影響を及ぼす部品、ユニットを中心にチェックを行います。大手メーカーは自分達の組織内で品質管理を実践しているので、診断者は知識と技能の両方をもっており、地に足のついた診断をすることができます。しかし、自分達が品質管理を実践していない役所などから来る診断者は、「規定や標準はあるか」「書式やデータはそろっているか」などといった、形式的な診断になりがちです。
 ②資格を与えるためのQC診断
JISマーク審査がこれに当たります。審査に合格することが目的化すると、担当者は形式的な書類を用意して「書類作りの品質管理」になってしまい、あまりメリットない診断になりがちです。ISOが導入された現在、ISO認証審査はこの範疇に入ります。
 ③デミング賞
石川馨氏は「デミング賞をとるために受審してはならない。受審は手段にすぎない。全社的品質管理、統計的品質管理を推進するために受審するのである。社長がリーダーシップをとって、これに挑戦すれば、全重役、全部課長、全従業員の考え方が変わって、経営の体質改善ができますよ」と形式主義の蔓延を戒めています。これは、現在のISO認証審査の状況を示唆しているようであり、しかも30年前に発せられた警告として含蓄のある言葉です。 TQCを効果的に実施していくには、PDCAをきちんと回す、すなわち「TQCの管理」を行っていかなければなりません。TQCの管理は、企業のトップマネジメントの仕事ですから、QC診断もトップの仕事でした。 水野滋氏は、QC診断について次のような問題点を指摘しています。
「QC診断に関しては、一般に次のような問題があるので考慮が必要である。

  1) 診断の目的が正しく理解されているか。
  2) 診断の方法に誤りはないか。形式のみに惑わされたり、部分的な見方をしたりしていないか。
  3) 診断の結果が品質管理推進計画にフィードバックされているか。
  4)個々の問題より、重要品質問題を確認しているか。
  5) 診断のために用意されたことを診るのでなく、日常の状態を診ているか。
  6) 先入観をもって診ていないか。」

以上