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私とマネジメントシステムそしてISO(その9)

第9回

「私とマネジメントシステムそしてISO」の第9回目です。第5回に述べたTQC特徴6項目について話が進んでいます。

 TQC特徴6項目とは、第5回目でお話しした次の6項目です

 5.1 全員参加の品質管理
 5.2 品質管理の教育・訓練
 5.3 QCサークル活動
 5.4 QC診断
 5.5 統計的方法の活用
 5.6 国家的品質管理推進活動

 5.1については、

 (1)PDCAサークル
 (2)班別研究会
 (3)方針管理
 (4)機能別管理

まで、お話は済みましたので、今回は(5)「品質保証」から始めたいと思います。

(5) 品質保証

私は2006年からJSQC(日本品質管理学会)の標準委員会で「品質管理用語85」の編集委員を務めました。2009年には、日本規格協会から「日本の品質を論じるための品質管理用語85」が出版されています。 本書には、品質保証の定義が次のようにあります。 「顧客・社会のニーズを満たすことを確実にし、確認し、実証するために、組織が行う体系的活動。

注記1 “確実にする”は、顧客・社会のニーズを把握し、それに合った製品・サービスを企画・設計し、これを提供できる  プロセスを確立する活動を指す。
注記2 “確認する”は、顧客・社会のニーズを満たされているかどうかを継続的に評価・把握し、満たされていない場合には、迅速な応急対策・再発防止対策をとる活動を指す。
注記3 “実証する”とは、どのようなニーズを満たすのかを顧客・社会との約束として明文化し、それが守られていることを 証拠で 示し、信頼感・安心感を与える活動を指す。

ここで定義されている、日本流の品質保証は、ISO9000でいう品質保証より広い意味を持っています。欧米流の“quality assurance”の和訳は、「品質実証」または「品質確約」とするのがよいでしょう。日本流の品質保証は、“activity for needs fulfillment”となると思います。効果的な品質保証には、顧客のニーズを満たす製品・サービスを提供できるプロセスを確立することが大切です。このようなプロセスを確立する活動をプロセス保証といっています。

「安全第一: Safety First」という言葉がありますが、TQCの世界では「品質第一: Quality First」といわれました。これは、売上増大、収益拡大よりも品質を優先的に扱うべきである、との考え方です。品質と売上・収益は、相反するものではなく、同じ土俵の上にあるものである、と考えなくてはなりません。同じ土俵の上にあるのだから、どちらから手をつけても同じだ、と考えるかもしれませんが、品質の方から手をつけた方が得策である、という考え方です。

品質向上を目的に活動すれば、必ず売上・収益も上がります。しかし、売上・収益を目的に活動すれば、品質が向上する場合もあるが、必ずというわけではありません。品質向上は売上・収益向上に対して十分条件であるのに対して、売上・収益向上はそうではないのです。これが品質第一とTQCでいわれてきた理由です。
多くの企業で、口では品質第一といいながら実際は売上・収益向上しか実行していない、ということがよくあります。それはその企業が本当に品質第一に徹していないからです。ちょうど、安全第一といいながら重大事故を起こしてしまう企業と同じです。品質第一に徹するとは、顧客の製品に対する要求を調査・分析して、その品質を製品規格の品質特性に変換し、製造において実現することです。

この品質管理の中心に位置するのが「品質保証」です。品質保証を簡単にいえば、「消費者が安心して、満足して買うことができ、それを使用して安心感、満足感をもち、しかも長く使用できるという品質を保証する」ことです。品質管理学会では「顧客・社会のニーズを満たすことを確実にし,確認し,実証するために組織が行う体系的活動」と定義をしています。すなわち、顧客へ注文通りの製品、工事、サービスを提供する活動です。

品質保証の責任はメーカーにあります。メーカーには、自分の製造した製品を消費者に満足して使用してもらう責任があります。この品質保証の責任を企業内の組織に当てはめると、設計部門、技術部門、製造部門にあって、検査部門にはありません。検査部門には、消費者の立場にたっての品質チェックの責任があるのであって、品質保証の責任があるのではないのです。

確実に品質保証をするためには、顧客・社会のニーズの把握、企画、開発から顧客への提供、そしてリサイクル、廃棄に至る一連のプロセスを結び付けることが必要です。この品質保証の全体像を一目で理解するためには「品質保証体系図」が有効です。「品質保証体系図」は、企画から販売、アフターサービスを経て、廃棄に至るまでのステップを縦軸に取り、品質保証に関連する設計、製造、販売、品質管理などの部門を横軸にとって、製品・サービスが企画されてから顧客に使用され廃棄に至るまでの段階でどの部門が品質保証に関するどのような活動を行うのかを明確にした図です。

以上