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内部監査の実践(その45)

前回から、A社【計測器類管理標準 KQM117】に基づいた「二八(にっぱち)監査」※を採用した内部監査実践例を説明していきます。

※ 二八(にっぱち)監査:ナラティブ内部監査の一方式で、内部監査員は2割の時間を使って聞く、被監査者は8割の時間を使って答える監査方式。正式には「被監査者による適合証明監査」と呼び、被監査者が「自分の仕事がルールに適合していることをエビデンスによって証明する」監査方式をいう。二八とは、内部監査員は2割くらいの時間しか質問に使わず、残り8割の時間は被監査者が適合性証明のために使うことからこう呼んでいる。

≪前回まで≫

今回のナラティブ内部監査は「品質保証部」における内部監査です。まずA社の規定である【計測器類管理標準 KQM117】を紹介します。
(略)

≪今回≫

  • (内部監査員)
  • 内部監査員のAです。早速ですが、今回は事前にご相談したように「被監査者による適合証明監査」(二八監査)を適用しての内部監査になりますので宜しくお願いします。
    対象となる業務は品質保証部における「計測器管理」についてであり、監査基準は【計測器類管理標準 KQM117】になります。
  • (被監査者)
  • 品質保証部のBです。全社の計測器の管理を担当しています。二八監査は初めてですのでおかし なところがあったら教えてください。【計測器類管理標準 KQM117】に沿ってできるだけ記録を見ていただきながら業務の適合性を説明させていただきます。
    まず、管理対象となる計測器を説明します。これが「測定器管理台帳」です。見ていただくと分かりますが、この台帳は20年前に作成したものをもとに年々計測器使用職場からの申請で最新化を図っています。
    当社では計測器は購買部(倉庫)、製造部、品質保証部(検査室)で使用されています。倉庫(購買部)では外注から請入れする際の「はかり」が対象で3台あります。製造部には、多くの種類があり、ノギス、マイクロメータ、自動形状認識装置、圧力計、ブロックゲージ、栓ゲージおよび現物見本があります。管理対象となる各計測器の員数は台帳を見てください。
    検査室(品質保証部)には、基本的に製造部と同様な計測器がありますが、自動形状認識装置の代わりに三次元測定器があります。員数はそれぞれ一台です。
    私は毎年原則第一四半期(4月~6月)に購買部(倉庫)、製造部、品質保証部(検査室)の担当者と一緒に台帳に登録されている計測器の現物確認を行います。
    ここで時々員数の違いが発見されます。例えば先々月に行った製造部の員数チェックにおいてノギスが7台あったはずが6台しかありませんでした。逆にマイクロメータはやはり7台だったはずが、8台と多くありました。
  • (内部監査員)
  • ありがとうございます。計測器の員数が台帳と合わないことがあるということですね。
    いろいろ理由があるとは思いますが、原因追及は後にして、まずは「員数が合わない」ことは指摘事項にしましょう。
    他のことについてはどうでしょうか。
  • (被監査者)
  • はい、いままでに検出した問題について続けさせていただきます。検出した次の問題は、計測器の管理状態が悪いという問題です。使用職場の管理者から注意、周知をしていただきたいと思いますが、使用したら元の場所に戻すという事が徹底されていません。また油で汚れています。計測器に貼られている校正期限を示すラベルも剥がれています。

(つづく)