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4)興味を持ったら一度やってみる
キャリア開拓を持続的に進める原動力となるのは、「興味を持ったら、一度はやってみる」という姿勢である。まずは何事にも挑戦してみることが大切である。
そのうえで、「次もやりたいか」「継続したいか」は、自分の心の声に耳を傾けて判断すればよい。もし違和感があるなら、一度でやめても構わないのである。
後半50年のキャリア形成において重要なのは、目の前のことに熱中する「虫の目」と、中長期的にキャリア資本を蓄積していく「鳥の目」の両方を持つことである。
さらに大切なのは、「業務をこなす」という発想から、「キャリア資本をためる」という意識へ転換することである。
キャリアは組織から与えられるものではなく、自ら設計していくものである。目の前の仕事を通じて、どのような経験や能力、人脈を蓄積していくのかを考える必要がある。
そのためには、「目の前の状況を少しでも改善するためには、どうすればよいか」という問いを持ちながら、日々の仕事に向き合うことが重要となる。いわば、「キャリア資本獲得ゲーム」を実践していくのである。
一見、単なる日常業務に見える仕事の中にも、将来のキャリアにつながる“宝”が眠っている。仕事を深く掘り下げることで、自分のキャリアプランとの接点を見出すことができる。
また、仕事の本質は、どの業界・業種においても大きくは変わらない。仕事を通じて「何を成し遂げたいのか」「どのような社会や未来をつくりたいのか」を考えることが重要である。
目の前の業務と、これから築いていくキャリアプランは、互いに相乗効果を生み出す関係にある。そのつながりが直線的である場合もあれば、螺旋状に広がっていく場合もある。
5)3分間キャリア・トレッチ
キャリア・ストレッチは、すぐに結果を出さなくてよいものである。「キャリア息抜き」と考えてもよい。今日から誰でも
スタートでき、部署予算も上長の許可も必要ないのである。自身で何をしていくかにつきる。
キャリア開発は、年に一度の行事として行うものではなく、2週間に一度の定例的な取り組みとして、日常的に捉えることが重要となる。
これまでのキャリア経験の中で蓄積されてきたビジネス資本や社会関係資本といった個々の特性を理解したうえで、その硬直性や固定化をほぐし、新たなキャリア資本を築いていくための主体的かつ柔軟な行動が求められる。
その際のヒントとなるのは、「業務」ではなく、自分の「好き」や「関心」を出発点にすることである。さらに、近年普及しているコンビニジムの「簡単」「便利」「楽しい」というコンセプトも参考になる。すきま時間を活用し、気軽に取り組める形にすることで、継続しやすくなるのである。
このような視点から実践するのが「キャリア・ストレッチ」である。まずは3分間から始めればよい。時間帯はいつでもよく、テーマも自由で構わない。ただし、これからのキャリアにつながる行動を選ぶことを意識することが大切である。
例えば、「チームメンバーとのコミュニケーションをより円滑にするために、1on1の手法を習得したい」といった具体的な目標を設定すると、「何をすればよいかわからない」という状態から抜け出しやすくなる。目標は一つに限定する必要はなく、途中で変化しても問題ない。キャリア資本とは、自ら主体的に獲得していくものだからである。
また、キャリア・ストレッチは、すぐに成果を求めるものではない。「キャリアの息抜き」と捉えてもよいだろう。今日から誰でも始めることができ、部署の予算や上司の許可も必要ない。大切なのは、自分自身が何を実践していくかである。
6)中期キャリアシート計画の作成
キャリア開拓の道標となるのが、「中期キャリア計画シート」である。
これは、3〜5年後の「ありたい姿」を、できるだけ具体的にイメージし、言語化したものである。
その際に効果的なのが、「キャリア資本の蓄積」を軸にして、中期キャリア計画シートを作成することである。
「キャリア資産」は、自己投資や経験の蓄積によって形成され、やがて「キャリア資本」となっていく。
キャリア開拓の道標となるのが、「中期キャリア計画シート」である。
これは、3〜5年後の「ありたい姿」を、できるだけ具体的にイメージし、言語化したものである。
その際に効果的なのが、「キャリア資本の蓄積」を軸にして、中期キャリア計画シートを作成することである。
「キャリア資産」は、自己投資や経験の蓄積によって形成され、やがて「キャリア資本」となっていく。
そして、キャリア資本は、主に以下の3つによって構成される。
• ビジネス資本
• 社会関係資本
• 経済資本
この作業は、いわば「キャリアの棚卸し」である。
入社以来、どのような業務に向き合い、どのようなビジネススキルや人的ネットワークを築いてきたのかを整理し、端的に表現することで、自己理解が深まる。
また、他者へ自分自身を伝える際のセルフPRとしても有効である。
キャリア資本は、以下の3つから構成される。
① ビジネス資本:スキル、語学、プログラミング、資格、学歴、職歴など
② 社会関係資本:職場、友人、地域活動などを通じて形成される持続的なネットワーク
③ 経済資本:金銭、資産、株式、不動産などの経済的基盤
これらを、下記の「中期キャリア計画シート」に落とし込んでいく。
| キャリア資本戦略 | 初期キャリア形成期 (入社~30歳) |
中期キャリア形成期 (30歳~45歳) |
後期キャリア形成期 (45歳~70歳) |
|---|---|---|---|
| ビジネス資本 | |||
| 社会関係資本 | |||
| 経済資本 |
ここでのポイントは、次の3つである。
① 中期キャリア計画シートは、常に暫定的なものである
月に一度はシートを見直し、これからのキャリア資本の蓄積についてアップデートしていく。
さらに、「後期キャリア形成期」の先にある「ポストキャリア形成期(70歳〜100歳)」についても、未来志向で考え始めてみることが重要である。
② 抽象的ではなく、具体的かつ簡潔に表現する
このシートは自分自身のためのものである。他人と比較する必要はなく、誰に遠慮することもない。
これからのキャリア形成について、自分なりの「ありたい姿」を具体的に表現していくことが大切である。
③ 中期キャリア計画シートは、共有・公開を前提に作成する
誰に、いつ見られても困らない内容として整理しておく。その意識を持つことで、自分自身のキャリアの方向性がより明確になっていく。
中期キャリア計画シートの作成は、「何から始めたらよいのでしょうか」という問いに対する、一つの答えとなる。
自分なりのキャリアを思い描き、それを言語化することは、それ自体が非常に創造的な作業である。
そして、その作業を楽しいと感じられるようになったとき、キャリアは好循環へと入り始めるのである。
7)キャリア開拓を進める「戦略」と「没頭」
① 戦略の視点を構築する
ここでいう「戦略」とは、「キャリア戦略」を意味する。キャリアを戦略的に捉えることには、主に次の2つのメリットがある。
A)未来軸で主体的に生きるための設計視点を持てること
B)社会と自己との関わりの中で、問題解決の視点を獲得できること
一般にキャリアとは、これまで積み重ねてきた経験や実績、歩んできた軌跡を指し、「何をしてきたか」「何を成し遂げてきたか」といった過去に焦点が当たりやすい。もちろん、過去の経験を振り返ることは重要である。しかし、それ以上に大きな効果を生み出すのが未来を設計することである。
大切なのは、
「これから、どのようになりたいのか」、「どのように生きていきたいのか」を言語化することである。
できるだけ具体的に、自分自身のキャリア戦略を描いていくことが望ましい。
前章で紹介した「中期キャリア計画シート」も、キャリアを戦略的に捉え、自らデザインしていくためのワークの一つである。
もう一つのメリットは、社会と自己との関わりの中で問題解決の視点を獲得できることである。
キャリアを考える際には、自分自身の内面だけに目を向けるのではなく、社会との接点についても考える必要がある。
その視点を持つことで、より開かれたキャリア観が育まれる。働く意味は明確である。
それは、働くことを通じて、より良い社会や未来を創っていくことにある。働くとは、単に目の前の作業をこなすことではない。目の前の仕事が、より良い社会の仕組みや人々の暮らしにつながっているからこそ、私たちは働いているのである。未来軸でキャリアを捉えたうえで、社会のどのような課題を解決したいのかを考えることで、自分自身のキャリア戦略がより明確になっていく。
例えば、
• 地域のごみ問題
• 高齢者の一人暮らし
• 子どもの居場所づくり
• 若者の就労支援
• 地域コミュニティの活性化
など、身近な社会課題でも構わない。
「自分なら何ができるだろうか」
という問いを持ち続けることが、キャリア戦略を磨くためのトレーニングとなるのである。
②没頭を繰り返す
戦略的な視点を持つことで、「これからどうなりたいのか」「そのために何をすべきか」を言語化できるようになる。その実現において重要な鍵を握るのが「没頭」である。
没頭とは、目の前のことに夢中になって取り組む状態を指す。心理学では「フロー体験」とも呼ばれ、「気がつけば時間があっという間に過ぎていた」「深く集中して取り組めた」といった経験である。
一方で、挑戦する課題のレベルが現在の能力に対して高すぎると不安を感じる。逆に、課題のレベルが低すぎると退屈になってしまう。どちらもフロー状態には至らない。
そこで、自分が取り組んでいることについて、「時間を忘れるほど没頭できているか」を定期的に振り返ってみよう。退屈を感じる場合は挑戦のレベルを上げる。不安を感じる場合は、焦らずに必要なスキルを身につけながら取り組むことが大切である。
フロー体験の積み重ねは、キャリア経験の蓄積につながる。言い換えれば、没頭できる時間が増えるほど、キャリア資本も蓄積されていくのである。そのため、「戦略」と「没頭」の両方を意識しながら日々を過ごすことが重要となる。
人は環境や仕事に慣れると、いつしか惰性で過ごすようになる。その先に待っているのはキャリアの停滞である。だからこそ、毎日の中に意識的に没頭できる機会をつくり出していくことが求められる。
「戦略」と「没頭」は、キャリア開発を実現するための両輪である。特に人生後半のキャリアにおいては、強みの領域を複数伸ばしていくことが、キャリア資本の蓄積に効果的である。なぜなら、苦手を克服することに多くの時間を費やすよりも、強みを活かして没頭するほうが成果も出やすく、幸福度も高まるからである。
また、「人生を通じてどうありたいか」という問いに対する答えは、一度決めたら終わりではない。環境や状況の変化に応じて、柔軟に見直しながらアップデートしていけばよい。大切なのは、自分のありたい姿を意識しながら、日々の行動を微調整し続けることである。
8)持続的キャリア開拓行動
キャリア開拓を実現するためには、日々の行動や姿勢が重要となる。具体的には、次の視点を意識することが求められる。
① 「ライフキャリア」の視点を持つ
ライフキャリアとは、仕事だけでなく人生全体を通じて充実感や満足感を追求するキャリアの考え方である。自分の価値観や興味・関心を仕事や活動に反映させることで、働くことと生きることが結びつき、人生全体の満足度を高めることができる。
② 「生涯学習」の姿勢を持つ
ミドルシニア期においても、新しい知識やスキルを学び続ける「生涯学習」の姿勢が重要である。学び続けることで、自らのキャリアの可能性を広げ、組織内外で通用する能力を磨くことができる。
また、生涯学習はキャリアを柔軟に再設計する力を養い、環境変化に適応するための基盤となる。組織に依存しない自律的なキャリア形成を実現するうえでも欠かせない考え方である。
③ 「ワーク・ライフ・インテグレーション」を目指す
仕事と生活を対立するものとして捉えるのではなく、両者を統合しながら充実させる「ワーク・ライフ・インテグレーション」の考え方を取り入れることも重要である。
この視点を持つことで、キャリアの枠組みに縛られることなく、自分らしいライフスタイルに合わせた働き方を実現できる。また、組織外での活動やキャリア開拓にも無理なく取り組めるようになり、組織内キャリアへの過度な依存から脱却することにもつながる。
④ リスキリングと外部ネットワークの構築
組織外でのキャリアの可能性を広げるためには、リスキリングと外部ネットワークの構築が重要となる。
リスキリングとは、新たな知識やスキルを習得し、自身のキャリアの選択肢を広げる取り組みである。特に、デジタルスキル、コミュニケーションスキル、マネジメントスキルは、業界や職種を超えて活用できる汎用性の高い能力であり、キャリアの可能性を広げるうえで大きな武器となる。
また、外部ネットワークを構築することも欠かせない。同業者や異業種の人々との交流を通じて、自分のスキルや経験がどのように評価されるのかを知ることができ、自己理解を深める機会にもなる。
セミナーや勉強会、ビジネス交流会などに積極的に参加し、組織外の人脈を広げることで、新たな知識や価値観に触れることができる。その結果、これまで気づかなかったキャリアの可能性を発見し、将来の選択肢を広げることにつながる。
⑤キャリアカウンセリングと自己理解の向上
キャリアカウンセリングを受けることにより、自分のスキルや価値観を見つめなおし、組織外でも通用する強みを把握することができる。ミドルシニア期のキャリア見直しは、自己理解を深め、自己肯定感を高める機会となる。キャリアカウンセリングを通じて、キャリア依存から脱却し、柔軟にキャリアを選択できる状態を目指すことが重要となる。
⑥プロボノ活動や副業での経験を積む
組織内だけでなく、プロボノ活動(専門的なスキルを活かした社会貢献活動)や副業を通じて、社外での経験を積むことも効果的である。
NPOやスタートアップ企業などで自身のスキルを発揮することで、新たな価値観や視点に触れ、自己成長につなげることができる。また、組織内での役職や立場にとらわれることなく、自分のスキルや経験が社外でどのように評価されるのかを知る貴重な機会にもなる。
⑦キャリアのポートフォリオ化
キャリアのポートフォリオ化とは、複数のスキルや経験を組み合わせて、多様なキャリアを築く考え方となる。組織外のスキルや活動を取り入れる事により、組織に依存しないキャリアを形成する。組織内のキャリアに加え、フリーランス、コンサル、教育分野など、多様な働き方が選択肢として広がる。
ミドルシニア期のキャリア依存は、多くのビジネスパーソンが直面する課題である。長年は働いてきた組織の役職や肩書が自己意識に強く結びつき、新しいキャリアへの挑戦が難しくなる傾向がある。
人生のステージは変わるので、キャリアもそれに伴い調整されるべきといえる。家族の事情、健康の変化、趣味への傾倒など、ミドルシニア期の生活の変化は続くのである。変化をどう取り入れるかが満足のいく人生を送るカギとなる。
ライフプレナーとしてのキャリアは、個々の成功だけでなく、社会との共存も重要である。ミドルシニア期以降は、社会貢献を通じて地域社会を通じて、自分の経験や知識を生み出すだけでなく、自己実現の新たな形といえる。
変化の担い手は、企業でも政府でもない、私たちなのです。まずは、自らが活力と生産性を維持しながら、持続的に成長していくライフプレナーとしてキャリアを開拓することにある。
8. おわりに
本書の冒頭で述べたように、経験を積んできたビジネスパーソンの多くは、「これからどうすべきかわからない」というキャリアの不透明感に悩んでいる。
例えば、退職後の生活や収入源への不安、趣味や社会活動を通じて新たな居場所を見つけられるのかといった将来への見通しが持てないとき、人は大きな不安を感じる。このような悩みが生まれる背景には、これまでのように一つの職業や職場だけでキャリアが完結する時代ではなくなり、多様な働き方や生き方への対応が求められていることがある。変化の激しい時代において、多くの人が同じような戸惑いや難しさを感じているのである。
しかし、悲観する必要はない。ミドルシニア期からでも、新たな自分に出会い、これまで気づかなかった可能性に挑戦する機会は数多く存在する。最初の一歩を踏み出し、行動を続けることで、見える景色は確実に変わっていく。
ライフプレナーとして歩み始めると、目の前の景色は大きく変わる。これまで業務上の必要性から受講していた社内研修も、自らの成長を目的としたアップスキリングの機会として捉えられるようになる。学びや経験の一つひとつが、将来の可能性を広げるための資産へと変わっていくのである。
「人生の途中で変身を遂げること」の第一歩は、職場や職種、肩書を変えることではない。主体的にキャリアを形成するために仕事との向き合い方を変え、心理的幸福感を高めながら働くために自らの内面を整え、ライフプレナーとして歩み出すことである。
今日から皆さんも、自らキャリアを切り拓き、社会や組織に新たな価値を創出し続けるライフプレナーなのです。
出典:
田中研之輔 (著), 山口裕二 (著), 野澤友宏 (著) (2025) 「これからのキャリア開拓」 中央経済社
吉末直樹
以上
